020203【会話】

「お待たせ。外は相変わらず寒いわね。積もってきそうよ」

「僕がまだこのバーに入った時は降ってなかったんだけどな。それで、今日はどんな要件なの? まさか、よりを戻そうって訳じゃないよね」

「冗談やめてよ、もう数年も前の事でしょ。あ、わたしゴッドファーザーとチョコレートちょうだい」

「じゃあ、またあの依頼ってわけ?」

「そうよ、悪い?」

「悪いって訳じゃないよ。僕にとっては誰かを尾行したり、お金持ちの猫を探したりなんて面倒な作業よりはよっぽどマシだよ。それで? 今度はどんな状況なの?」

「ケッコンシキ」

「え?」

「だから、聞こえなかったの? 結婚式よ」

「まさか、君から結婚式なんて素敵な言葉が出てくるなんてびっくりしちゃう」

「うるさいわね、仕方ないでしょ。成り行きなんだから。え? ああ、ありがとう、オリジナルで良いわ」

「それにしても、なんでまたそんな状況に? この前は友達役だったはずでしょ。随分と飛躍したね」

「だから、仕方ないでしょ。勢いで言っちゃったんだから。今更嘘でしたとは言えないわよ」

「まあ、別に詮索する気は無いけどさ。僕としては楽な仕事さ」

「じゃあ、今週末だから。お願いね」

「お安い御用だよ。カクテルも来たし、乾杯しようか」

「何に乾杯する?」

「じゃあ、願わくば、降り積もる雪に」

「何よそれ。まあ、いいわ。乾杯」

「乾杯」

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