第2話黒雪姫〜白雪姫と踊らされた人達〜

むかしむかし、肌は白いくて、髪は黒檀の様に艶やかな黒髪で、唇も頬も血のように赤い、透明感のある白雪姫という子がおりました。


そんな白雪姫にはとある秘密がありました──。

▼▼▼▼

高貴なワタクシ様のワタクシ様によるスレ12


1:高貴なワタクシ様

この世で一番美しいのは誰?


2:森の可愛い小人さん

キタ━(゚∀゚)━! 

ワタクシ様のいつもの質問今日も戴きました! 

やっぱり美しいと言えばお妃様だよね!


3:森の男らしい小人だ!

>>>2 確かに……性格はアレだけど顔は良い‪w‪w‪w


4:森の器用な小人

>>>3 禿げしく同意


5:森のグルメな小人君

>>>4 それな!


6:森のオシャレな小人ちゃん

>>>5 それそれ


7:森の賢い小人様

>>>6 いや、どれだよ……


8:森の陽気な小人っス

とりあえずお妃様って事で……


9:真っ黒子

とりあえずじゃなくてお妃様!


10:隣国のイケメン様

>>>2 なるほど、お妃様はそんなに綺麗なのか……

人妻……嫌いじゃない! 嫌いじゃ無いぜ!


11:真っ黒子

ザワッ……。お妃様が狙われている!?


12:臭い飯食った猟師

>>>10 お巡りさんコイツです


13:森の可愛い小人さん

逃げろイケメン(笑)


14:隣国のイケメン

>>>13 ほとぼり冷めたらまた来るぜ!!

▼▼▼▼

「ふぅ、イケメンさんには気を付けておかないと行けませんね。それにしても……ふふふっ、今日もお義母様は可愛かったですね。はふぅ」


ミラパッドから視線を上げ、今日も日課のチェックを終えた白雪姫は、要注意人物を警戒するよう心に留めると、二番目の母であるお妃様に思いを馳せて、子供とは思えない溜息をつきます。


そう、白雪姫がお妃様に懐いている事は城の皆が知っていました。

ですが白雪姫は城の皆が思っているよりもずっと、お妃様の事が好きだったのです。


しかし時が経ち、白雪姫が十六の誕生日を迎えた日の夜、お妃様が使っているスレッドで何時もとは違う事が起こったのです。


「ウソ……私の事?」


そう、いつもお妃様の言葉に一番に反応して答えていた森の可愛い小人さんが、今日に限ってお妃様よりも白雪姫の方が良いと言い出したのです。


「うぅ駄目。どれだけ反論しても、皆お義母様よりも私を褒める流れになってる」


流れ続ける自分への賛辞を止めさせようとする白雪姫ですが、一度出来てしまった流れはそうそう止められる物でも無く、止める術も分からず諦めるしかありませんでした。


「はぁ、私よりもお義母様の方が断然素敵ですのに。皆さんなんでそれが分からないんでしょう。しょうが無いですね、皆が目を覚ますのを待ちましょう」


自分の事など一時話題として出るだけ。白雪姫はそう思っていました。

ですが数日たっても白雪姫への賛辞は止まらず、白雪姫は困ってしまいました。


そんなある日、白雪姫はお妃様の頼みで猟師と共に森へと向かいました。

でも白雪姫は、それがお妃様が自分の事を猟師に殺させる為に仕組んだ事だという事を知っていました。


(どうしましょう。お義母様の為ならこの命を投げ出すくらいしますけど、こんな所で猟師さんに殺されるのは避けたいですね)


お義母様が直接手を下してくれるなら良かったのに……。

涼しい顔でそんな事を思いながら、この状況をどうするか考えている白雪姫の横で、猟師の顔はどんどんと強ばっていきます。


(そろそろ危なそうですね)


猟師が手に持つ猟銃をグッと握りったのを見てそう考えた白雪姫は、猟師がお妃様に雇われる切っ掛けになった事件を思い出し口にします。


あくまで世間話のように語られた言葉に、一度人狼狩りに失敗し、心を入れ替えようと決意していた猟師は、白雪姫に全てを話し森の中に隠れるよう白雪姫に言いました。


「お妃様にはイノシシの肝臓を持って行って、上手く誤魔化すから、上手い事逃げ延びておくれ」

「猟師さん。ありがとうございます」


(思った以上に上手くいったみたいですね。そう言えば前に調べたあそこはこの近くだったはず)


 猟師を上手く誘導して逃げる事に成功した白雪姫は、ある場所を目指し、山を越え森を歩き回り、一件の小屋を見付けました。


(ここですね)


そこには、誰かが住んでいるのか家具があり、テーブルの上には美味しそうなスープまでありました。

一晩中森を歩き回った白雪姫はお腹を空かせ、テーブルの上に用意してあった、七つのスープを全て食べ、近くにあったベットで疲れを癒す様に寝てしまいます。


眠っていた白雪姫は周りの喧騒に目を覚まし、誰にも気が付かれないよう、そっと目を開けて周りを確認します。


(この人達があの……)


自分の周りで騒いでいる人物の達を確認した白雪姫は、さも今目を覚ましたように身体を起こし、七人の小人と目を合わせました。


その小人達はそれぞれ、青い帽子に青い洋服を着た、男らしいマッチョな男の小人。


赤い洋服を着た、可愛らしい顔の女の小人。


少し煤けた茶色い洋服を着て、ゴーグルとグローブを着けた科学者風の女の小人。


白いコック帽に白い洋服を着て、エプロンを着けた料理人風の男の小人。


桃色の洋服を着て、化粧をバッチリと決め、妙にクネクネしたオネェさんな小人。


緑の洋服を着て眼鏡を掛けた、知的な雰囲気の男の小人。


黒の洋服を着た、少年の様な雰囲気をした男の小人の七人でした。


「「「「「「「で、どうなの?」」」」」」」


そんな小人達全員にスープを飲んだ事を声を揃えて咎められた白雪姫は思わず──。


「とりあえず……、小人でマッチョとオネェはちょっと気持ち悪いです」


と、思わず本音を漏らしてしまいました。

▼▼▼▼▼

「──なるほど、事情は分かった」


白雪姫は自分が姫である事を隠して、母親に殺されそうになり、猟師に助けられた事、そして行く宛てが無いので、この家に置いて欲しいと言う事だけ話すと、マッチョの小人が代表してそう答えました。


(うーん。口には出さないけど、やっぱり皆私の事をちゃんと知っているみたいですね)


自分が姫である。


その事がバレていると思いつつも、白雪姫はあえて突っ込まれないのならこのままにしようと考えました。

しかし、オネエさんな小人に名前を聞かれて白雪姫は咄嗟に「し、シラーです?」と、答えてしまいました。


(あぁ、いきなり言われたから咄嗟に……。もう一回やり直すのは……駄目ですよね)


白雪姫から離れ円陣を組む小人を見詰める白雪姫は、平静を装っていますが頭の中ではやってしまったと言う気持ちで一杯でした。


自分でも怪しいな。と、思いながら警戒心タップリの小人達の返事を待っていると可愛らしい顔の小人が、一人輪の中から抜け出して白雪姫の前にやってきます。


そして──。


「あ、あの……、わ、わたし、その、えっと、アカって言います」

「えっ? あ、はい。私はシラーです。よろしくお願いいたします」


突然の自己紹介に、白雪姫も咄嗟に自己紹介を返します。

するとアカと名乗った小人は、ミラパッドを白雪姫に渡して、タタっと小人達の所へ戻って行きました。


(えーと……な、なんだったんでしょう?)


小人達の円陣に戻ったアカと名乗った小人は、挨拶だけで顔を真っ赤にして、涙目でプルブル震えながら、胸を張っいました。


そんな姿を見ほっこりした気持ちで見ていると、知的な雰囲気の小人が白雪姫を受け入れると言ってくれました。

こうして、白雪姫は無事、家事や手伝いをすると言う条件で、小人達の家に住まわせて貰える事になりました。


その日の夜、アカとのメールを終えた白雪姫は、ふぅと溜息をつくと顔を上げます。


「一応上手くは行ってるみたいですね。後は──」


これからの予定を立てた白雪姫は、明日からの仕事をする為、はやく眠りに着きました。

▼▼▼▼▼▼

七人の小人達と暮らす様になった白雪姫は、小人達が山に働きに行っている間、掃除や洗濯や針仕事をしたり、ごはんを作ったりして毎日を楽しく過ごしました。


生活に馴れた白雪姫は小人達ともすっかり仲良くなりました。


そんな小人達との生活にも慣れて来た白雪姫。

しかし、そんな小人達はいつも決まって全員で出掛ける時に必ず。


「シラー。わたしたちが仕事に行っている間、誰も家に入れちゃ駄目だよ。怖い母親に、ここが知られてしまうかもしれないから」


と、小人達はいつも言うのでした。

▼▼▼▼▼

「どうやって生きていることを伝えようかと思っていましたけど、これでお義母様と会えそうです」


家事の合間にミラパッドをチェックしていた白雪姫は、新たに上がった小人のスレッドを見ながら、思ってもみない出来事にこれでお義母様が来てくれる筈とよろこびました。


それから数日後、

「……あの猟師。どうも様子がおかしいと思ったらやっぱり裏切っていたね。もはや誰も信用出来ない。自分で動かないといけないようね」


ミラパッドの雑談スレで白雪姫の生存を知ったお妃様は、猟師を問い詰め白雪姫の居場所を聞き出しました。


 そして自分で白雪姫を殺そうと考えたお妃様は、リンゴを取ると魔法で毒リンゴへと作り替え、物売りのおばあさんに化けます。

そうして準備を整えたお妃様は毒リンゴを手に、ミラパッドで調べた小人の家へ七つの山を越えて行きました。


「ふふっ、ここね」


 山を超え、ようやく小人の家へ辿り着いたお妃様は窓を叩いて言いました。


「美しい娘さんに、おくり物だよ」


「まあ、何てきれいなリンゴ。おばあさん、ありがとう」


リンゴを受け取った白雪姫はリンゴを手に考えます。


(お、お義母様のおばあちゃん姿も可愛い。しかもバレてないと思って必死に演技してる……尊い。ああ、どうしましょうこれだけでお腹一杯です。それにこれ……毒リンゴとは言えお義母様から貰った初めての手作り!  食べないなんて選択肢は無いですよね。それにこれでお義母様の手に掛かれば、私の命は永遠にお義母様の物になったという事、そして猟師さんの話が本当なら、私が死ねば私の肝臓をお義母様が食すらしいです。そうすれば私はお義母様の血肉になりずっと一緒。あぁ、とても素敵です)


 全てを見透かした白雪姫は、ウットリとした表情でリンゴを眺め、思い切りリンゴを一口かじります。


(あぁ、これでお義母様といつまでも一緒に──)


白雪姫はバタリと倒れながらお妃様と一つになれる事を喜びます。そして、倒れた白雪姫は二度と目を開きませんでした。


「ふふっ、邪魔者は居なくなったわ。これでこの世で一番美しいのは妾よ!」


白雪姫が全て知っているとは思ってもみないお妃様はとても喜びました。

そしてお妃様は、白雪姫をベッドへ運ぶと、予定通り肝臓を奪おうとしましたが、小人達の声が聞こえた為に白雪姫の事を諦めてお妃様は逃げ去りました。

▼▼▼▼▼▼

 背中を思い切り叩かれた様な衝撃に目を開けた白雪姫は、何が起こったのか分からずにいつの間にか目の前に居た人物に


「私はどこにいるのかしら?」


と、尋ねました。

すると白雪姫に尋ねられた人物、王子は


「ずっと、わたしと一緒にいるのですよ。姫」


と、イケメン感満載で白雪姫の手を取り言いました。

 こうして王子と結婚した白雪姫は、ずっと幸せに暮らしました。


──とはならずに、白雪姫は


「いえ、結構です」


と、キッパリ断りました。


これには王子もビックリしてしまいました。

ですが王子もそんな言葉にめげずに白雪姫を口説き落とす為に言葉を尽くします。


ですが白雪姫は


「そういうの本当に大丈夫です。第一貴方は誰なんですか?」


と、言うばかりで王子の話に聞く耳持ちません。


「いや、だから俺は──」

「あーー! シラー!」

「姫様!」


そうして言い合う二人の元に、騒ぎを聞き付けて来た小人達と、お妃様の後をつけて来た騎士達がやって来て二人を見つけました。


(あー、これ、どうしましょう)

▼▼▼▼▼

王子を置き去りにして騎士達と話しあった白雪姫は、一旦小人達の家に帰り自分自身の事、そして先程の出来事を素直に話しました。


話を聞き終えた小人達は怒り、白雪姫や騎士達と共に城へと向かいました。


(うーん。こうなるとお義母様を庇うにも限度がありますし。ここはもう一つの案で行った方が良さそうですね)


城へと帰った白雪姫は大忙し、今回の件に関わった者、お妃様を裏から操ろうとした者を調べ上げ処罰すると、次にお妃様の刑罰の準備に取り掛かります。

本当ならこうならないように進めたかった白雪姫ですが、城への道すがら街の人間までお妃様の行った事を知っていては、庇いようがありませんでした。


それでも白雪姫は、見た目は派手で実際には怪我が少なくなるよう懸命に刑罰を考え。万が一がないよう入念に準備をおこないました。


こうして万全の体制で望んだ刑は見事成功し、お妃様の断罪は無事終わりました。

▼▼▼▼▼▼

お妃様のお見舞いが済んだ白雪姫は、扉の前でふぅ、と息を吐き肩の力を抜きます。


(さて、色々と綱渡りになりましたけどなんとか上手くいきました。オマケに私とお義母様を邪魔しようとしていた勢力を片付けられたのは大きかったですね)


今回の件を利用して王家の失墜を目論んでいた一派を処罰した事で、これからはお妃様と二人、楽しく暮らせると喜ぶ白雪姫は、一つ気合いを入れるとある場所へと向かって歩きだしました。

▼▼▼▼▼▼

白雪姫に与えられた城の一室、その中で小人達はゆったりと過ごしていました。


城に来てからの数日は、白雪姫の手伝いで方々を駆け回り過ごしていましたが、お妃様の刑の執行が終わりようやくゆっくりする時間が出来ました。


「いやー、それにしてもまさかシラーがあの白雪姫だったとはねー」


ソファーに寝そべりながらそんな言葉を言ったアカを、全員がマジかこいつと言いたげな目で見ます。


「お前、マジで気が付いてなかったのか?」


そんなアカに全員を代表してアオが問いましたが


「えっ? んふふ。やだなぁーアオ。ネタばらしの後に自分知ってましたとかカッコ悪いよ」


((((((こいつやっぱりマジでわかってなかったのか!?))))))


「皆さんそんなに残念なもの見る目をしてどうしたんですか?」


アカの答えに全員がなんとも言えない視線を向けていると、いつの間にか来ていた白雪姫が不思議そうにします。


「あっ、白雪姫。どうしたの?」


そんな空気を作り出した張本人のアカは、我関せずで白雪姫に小首を傾げて質問します。


それに苦笑しながら白雪姫は


「今日は皆さんに色々とお礼をしようと思って来ました」


「そんなのべつに良いのに。わたしと白雪姫の仲じゃん」


「いえいえ、そうはいきませんよ。こういったものはキッチリとしませんと。まずは今回、私を匿ってくれた事、そして私の為に本葬していただいた事、誠に感謝しています」


そんな白雪姫の言葉に全員が満更でもない顔をする。


「ついては……そのお礼に私もかなり頑張りましたよ」


「「「「「「「おぉ〜」」」」」」」


「……恩赦を」


「「「「「「「えっ?」」」」」」」


「えっ? えっ? 恩赦って何? どういう事」


「いやですねアカさん。恩赦は恩赦ですよ」


白雪姫の言葉にアカの頭はショート寸前になり、頭を抱えてしまう。そんなアカをみかねた


「白雪姫。自分で言うのもなんだけど、ボク達は白雪姫に協力してきた。それなのに恩赦とはどういう事だい?」


ミドリが眼鏡を弄りなが少しイラついたように白雪姫に問います。


しかし、それに対して白雪姫は


「それは……こういう事ですよ」


白雪姫がミラパッドを操作すると小人達のミラパッドから着信音がなりました。


そしてそこには──。

▼▼▼▼▼▼

真っ黒子

特定しますたm9(≧∇≦)

▼▼▼▼▼▼

「えっ? シラーじゃなくて白雪姫……真っ黒子?」


「はい。改めまして白雪姫こと真っ黒子です。皆さんには我が国の妃を侮辱した罪、そして度々この城に備蓄を盗みに入っていた罪、他国に城の情報を漏らしていた罪の三つがあります。まあ、皆さんが掴んで流していた情報は、私が厳選した偽のものなので構わないのですが、窃盗と特に……私のお義母様を侮辱した罪は重いですよ?」


ニコリと笑うその顔に全員がゾッとしながら青い顔で白雪姫の言葉を聞きます。


「本来ならそれこそ死罪になる所でしたが、そこは今回の件を出して他の方達を納得させました。と、言う訳で皆さんにはちょっとしたお仕事をお願いしますね。それが済んだら今後は私の直属として働いてもらいます。内容は道すがら聞いていただくとして、皆さん全員とまだ会える事を祈ってますね」


巻くし立てるように言葉を吐き切った白雪姫が、パチンと指を鳴らすと、兵士達が部屋の中に雪崩込み小人達を連れていきました。


そんな小人達を手を振って見送ると、白雪姫はうんっと背伸びをして


「さあ、明日からはお義母様とリンゴについて研究しなくちゃ」


と、明日からのお妃様との毎日に胸躍らせるのでした。


めでたしめでたし


「わたし達は全然めでたくなーい!!」


おわり?

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