地獄めぐり

サンハテナ

一日目「であい」

僕の名前はキュルル。僕は一人ホテルに篭って絵を描いていた。最近はスランプ気味だった。深夜からずっと僕は起きていたから眠るために、朝日に照らされたホテルロビーのソファーで寝ていた。するとなんだか周りが騒がしい。なんだろうなと思って、目を開けると、目の前には青く綺麗な髪をしたかわいいフレンズがいた。フレンズは赤い目を丸くして、


「も、もしかして…あ、あなたは人?」

「え?え、ぼ、僕は…」


彼女は僕の答えを聞く前に消えてしまった。あの子はなんだったんだろう。すごく気になる。僕は部屋に戻って画題を探すために、絵本をみていた。小さい頃はいっぱい絵本を読んでいたものだ。僕が絵を描こうと思ったのも絵本をいっぱい読んでいたからだ。しかし何も思いつかない。


いつのまにか外は暗くなっていた。僕はまたロビーにいた。寝るためじゃないよ。ロビーは真っ暗で誰もいない。僕は博士に貰った懐中電灯を使って、何も描かれていないスケッチブックを照らした。いつもただ見つめるだけで時がすぎてしまう。

でも今夜は違った。白い光の中で、朝、出会った少女のことを思いだしていた。夢中で絵を描いていた。




「キュルル…キュルル…ん…キュルルさん!」

「ん…お母さん…うわっ!」ゴチン


僕は気が付くと寝ていたみたいだ。勢い良く起きると、目の前のフレンズに頭をぶつけた。


「いてて、すみません…キュルルさん起こしてしまって…」

「僕こそごめん……」


僕はそう言いながらソファーにあった懐中電灯を取って照らした。


「……」


オオミミギツネがいた。そこにはオオミミギツネがへたれ込んでいた。


「あの…大丈夫でしょうか?」

「う、うん…」


僕はフレンズと合うのは久しぶりすぎて緊張している。


「あ、そうだ、せっかくですからお話しませんか?」

「え?うん…」


お互いの自己紹介の後にオオミミギツネはキュルルに質問する。


「キュルルくんって何のフレンズなの?」

「フレンズ…いやひと…なんだけど…」

「ヒト?そうなんですね!ヒトってどんな動物なんですか?」


そうだった、フレンズたちは自分のルーツを知っているんだ。


「どんな動物なんだろう…ごめん…僕もよくわからないんだ…」

「そ、そうなんですね…」

「……」

「自分がどんな動物かがわからないフレンズさんっているんですね…」


なんだかすこしだけ、きまづい空気が流れる。僕はこの空気が得意じゃない。


「うん…あっえーとあの…オオミミギツネさん!」


だいたいフレンズにはルーツがあるが、僕はヒトであり、母親や父親も小さい頃からいなかった。

僕は空気を変えるために、別の話題を振ってみる。


「はいはい!なんでしょう?」

「オオミミギツネさんってどうしてこのホテルをやってるの?」

「私ですか?」

「うん!」


オオミミギツネはすこし考えてから、


「んー逆にキュルルさんはなんで絵を描いているの?」


と質問した。


「え、えーと僕?そうだね…僕が絵を描いた理由を話すと…」

「はい」

「僕は自分探しの旅をしてたんだけど…!」

「はい」

「その答えを絵にしたいなと思ってるんだよね」

「へー」


「でもさー最近これでいいのかなって思ってるんだ」

「なんでです?」

「だってさー、だってボクが絵を描いても誰も何もいってくれないしー」


「あはははは!」

「そんなに可笑しい?」

「いや、わかるわかるどうやったらいいだろーって思うわよね」

「う、うん、オオミミギツネさんもホテルでそういうことあるの?」

「だってホテルはお客様がいなきゃ成り立たないんですよ?」


オオミミギツネはその後からホテルをなぜつくったかについて話しだした。


「実をいうと…もともとこの近くに住んでたの」

「うん」

「広いし眺めいいのにもったいないなー何かに使えないかなーと思って」

「うん」

「ブタちゃんに相談したらー「そういうことは博士が知ってるかも」っていったから」

「それで博士に相談したら…」

「え、博士ってコノハズクの?」

「そうよー」


博士はある研究所に住むオオコノハズクのことだ。僕は前に研究所にいってあったことがある。


「それで博士に相談したら…お部屋を貸していろいろしたらホテルになるからやってみるのですって」

「それで図書館でいろいろ聞いたりした後にこのホテルを始めたのよね」

「へぇーそうなんだ、えーとブタさんは友達だけどハブさんはどうしてここにきたの?」

「ハブは博士がつれていけっていってきたの」

「ふーん」

「ジャパリまんの管理とかが得意なんだって」

「ねぇ…」


僕はオオミミギツネが話を聞いてくれたのが嬉しかった。と同時にいつも部屋の中でオオミミギツネをおかずに一人でエッチをすることしかしてないのが申し訳なくなった。


「あの…僕明日からお手伝いするよ…」

「え、なんで?」

「だってわざわざお話してくれたし」

「えーそんなのいいのにー」


オオミミギツネは笑いながらいう。


「でも本当にしてくれるの?」


でもしてくれるならそういう感じで聞いてきた。


「うん、僕やりたいんだ!」

「キュルル君、お客様だけどいいのかな?」

「ぜひやりたい」

「じゃあやってもらおうかなー」



外は静かに波の音が聞こえる。暗闇と部屋の中の扉を閉めて満月の夜、音のない静かな海だけ見える。体は熱をもっている。部屋の中は少女の息遣いだけがある。目を瞑ると頭の中は同じホテルのお客であるあのいまわしき人間が思い浮かぶ。リョコウバトはその苛立ちを発散していた。


「ああ…なんでヒトが…」

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