ボスに回復呪文は持たせるな

破壊神シトリー。


デーモンクエスト2~封印されし悪神~に出てくるラスボスだ。


デモクエシリーズのラスボスの中でも謎めいた存在であり、30年以上続く歴史の中でも「凶暴な破壊神」「召喚には生贄が必要」「自らの信者の命を好物として食べるほど強くなる」ぐらいしか情報が無かった。


しかし、近年別シリーズのデモクエでキャラが掘り下げられる事になった。


デモクエビルダーズシリーズだ。

いわゆるマイ○クラフト的要素をぶち込んだブロックメイクRPGと銘打たれたジャンルだ。


デモクエの世界を舞台に、プレイヤーは素材を集めて冒険に必要なアイテムや建物を自ら創り上げ、魔王によって荒廃した世界を救うと言う流れになる。


このデモクエビルダーズ2でストーリーの軸となるキャラとしてこのシトリーが出てくる。


何気に人間キャラとして公式で擬人化されたのはシトリーが初だったはずだ。


そんなシトリーだが、最初は破壊に仄暗い喜びを見出し、その他の事には興味がない無感情なキャラだったが、主人公達と過ごして行くうちに次第に様々な事に興味を持ち始め、喜びや悲しみ、そして破壊だけではなく創造する楽しさに目覚めていく。

そんなストーリーである。



見た所、このシトリーはある程度情緒が発達しており、優しさや創造すると言う事を学んでいるように見える。


この世界は各シリーズの主人公が不在の上にごった煮にした世界だ。本来シトリーと出会うはずのデモクエビルダーズの主人公はいなかったが、幸か不幸か、変態蛮族たるオルテガスと出会って情緒が発達したのだろう。



「おぉ!そうかそうか!確かにあの宿屋の老婆は足腰が弱っていた。椅子を作ってやれば喜ぶだろう!とても良い考えだ!どうだ?私もその素敵なアイデアを手伝わせてくれないか?」


「仕方ない。オルテも手伝わせてあげる。」


無表情ながらもどこか誇らしげにエッヘンと胸を張るシトリー。


か、可愛い·····!

この破壊力。流石は破壊神と言う訳か·····!


「取り敢えずこの木材を村に持って行く。シュウも手伝って。」


ヒョイと10本以上の大木を肩に担ぐシトリー。

まぁ村に案内して貰えるなら別に荷物運びくらいはさせて貰うが·····。


取り敢えずシトリーと同じ位の大木を肩に担ぐ。


これ、どう見ても丸太と言うか生木の原木だよな。

こんなのどうやって椅子にするだ?

乾燥とかさせるのか?



「シ、シュウ殿?貴殿、そんなに持って平気なのか!?」


数本の大木を持ったオルテガスが驚いた声でこちらを見てくる。覆面のせいで顔は分からないが、かなり驚いている様子だ。


「シュウは強い。多分私と同じくらい。だから平気。」


シトリーと俺の力が同じくらい?

って事はステカンスト!?

おいおい。マジか·····。



「ん?シュウにオルテ、怪我してる。『極大全体回復魔法べホエスト』」


柔らかな光が俺とオルテガスを包み込み、さっきの戦いで所々出来た擦り傷が完全に消えた。



こ、コイツ――。

やはりオリジナル版のシトリー·····!!



そう。デモクエ2自体は何回かリメイクやカバーされており、毎回シトリーのステータスは変化している。


そして、完全回復魔法が使えて攻撃力と守備力がカンストしているのは初代デモクエ2のみだ。


と言うかシリーズの全ボスの中で完全回復魔法を使えるのはこのシトリーだけだ。



ケーニッヒメタルと並ぶ圧倒的な守備力と最強の攻撃力を兼ね備えた最悪のボス。


当時は仲間が3人しかおらず、主人公達のレベルが低いと普通に1桁ダメージしか与えられない。

何とか削っている最中に完全回復してくると言う最悪の蛮行。もう絶望以外の何物でもない。


幸い、AIの判断力が0に設定されており、シトリーの行動は完全にランダムなので回復は毎回使う訳では無い。


しかし、運が悪いと普通に毎回回復してくる。


当時俺は小学生だったが、後にも先にもコントローラーをテレビに投げつけたのはあの時だけだった。



「うむうむ!シトリーは良い子だな!さぁシュウ殿!村には温泉もあるし、ひと頑張りしよう!」


温泉·····!?

って事はもしかして·····。


「マイアの村は良い所。シュウもきっと気に入る事間違いない。」


マイアの村だと!?

勇者の剣がある村じゃないか!!

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