無限の力

俺が魔法を唱えた瞬間、デッドムーアが極大な真っ白な光に包まれた。



や、やべぇ·····。

気軽に放った極大放出魔法テラマダンがマジでやべぇ。


今回は空に浮かんでいた敵に向かって放ったから周りの被害はほぼないが、これを地上に放ったら本当に地図を書き換えないといけないレベルで被害が出るぞ!?


極大放出魔法テラマダンは仕様上、どれだけレベルやステータスを上げても最大MPの3倍である2997のダメージしか与えられないんだが·····。


デモクエ8でも5,008が上限だったはずだ。


·····バグ技の火炎斬と比べて演出過剰過ぎね?




徐々に光が収まり、ゆっくり目を開くとドサドサっと大きなムードエルとグラエルの魔石が落ちてきた。


うむ。流石、最強魔法。

魔王ですら一撃だ。



「こ、これが魔神を倒した報酬、という訳ですか·····。とんでもない魔法ですね。」


呆けた顔でフィルが呟く。



そう。これこそ魔神ブラックドレアムを倒した報酬の1つ隠し職業への転職アイテム『ケーニッヒメタルの悟りの書』の力だ。


この魔法、極大放出魔法テラマダンはケーニッヒメタルの熟練度を6まで上げれば覚えられる。


デモクエ6の漫画版ではヒロインの魔法使いの少女がデッドムーアを暗黒の衣ごと吹っ飛ばしていた最強魔法だ。


ブラックドレアムを20ターン以内に倒した時、幾つかの報酬を貰える。デッドムーアを倒すと言う特典は貰えなかったが、その代わりにこの本を手に入れたという訳だ。



「はっはっは!流石、旦那だ!」


「魔王と大魔王を一撃か·····。なんと言うか、相変わらずだな·····。」


「やっぱりシュウさんは凄いです!」


おぉ!ステラ!リリー!

相変わらず美人さんだな!結婚してくれ!


ロンフーもまぁ無事だな。

しかし――。



「すまんな。再会を祝いたい所だが、まだ終わっていない。」



そう。デモクエのラスボスは伝統的に2回変身するのだ。


言うが早いか、空中に黒い粒子が集まり、大きな人型を形成する。


先程の枯れ木のような老人ではなく、マッシブな人型の竜の様な姿に変化するデッドムーア。



【ぐはははははっ!よもやいきなり極大放出魔法テラマダンとはな!!しかし、攻め急いだな!あの魔法は威力は高いが、全魔法力を放出する!もう魔法は使えまい!!】



うん。そうだな。

確かにデッドムーアの言う通り、この魔法は自分のMP×3倍のダメージを与える代わりに1回で全てのMPを消費してしまう。



そう。普通なら。



キインキインキイン!


俺の右手に着けた指輪の1つが激しく光る。

これこそお楽しみダンジョンで手に入れたレア装備。山彦の指輪だ。


効果は単純。

名前の通り山彦の如く使った魔法を繰り返す。

自爆魔法であろうが最強魔法であろうが、だ。



「悪いが、まだ俺のターンは終わっちゃいない!」


【げぇっ!?】



再び世界が真っ白に染まる。





「シュウさん·····」

「シュウ·····」

「お父さん·····」

「シュウ様·····」

「旦那·····」



真っ白な光が収まった後には、再び消し飛んだデッドムーアと何やら呆れまくった顔をした仲間達がいた。


いや、ほら!

まだだから!まだ倒しきれてないから!

まだ変身1回残ってるから!



【ぐ、ぐぁ·····。がふっ!】


地の底から響く様な不快な呻き声が辺りに響く。



【ぐおおおおおおおおおおおおおおおっん!】



空間を歪め、そこから極大な左右の手と大きな顔だけが宙に出現した。


牙だらけの口は大きく裂け、左右の頭からは山羊の様な角が大きく生え、額にも三本の角が生えている。


青く染ったライオンの様なたてがみを振り乱し、

俺達を殺意の籠った目で見下ろしている。


デッドムーア第3形態。


間違いなく、奴の最強の姿である。



【こ、殺してやる!殺してやるぞ!!我が腹心の魔王達や軍団を消し飛ばし!我にここまで深手を負わせた罪!その命を持って償えぃ!!!】


ふう。やれやれ。


右手を魔王に三度向ける。



【は、はったりだ!もうお前にはMPはなくなったはずだ!何ならMPを使うスキルも使えないはずだ!そうだ!そうだと言え!!】


ビクッと震えた大魔王が叫び出す。


「違う。」


【そうだと言えっ!!!言ってくれっ!!!】


「言わないね!」


ふははははははっ!

何せ今の俺は無限の魔力が備わっているんだからなっ!!



デモクエ6のMP関係にはバグがある。

無職時のMP×職業補正+マスターボーナスが四捨五入して丁度1000となる時に戦闘時のMP表示が、本来999にならないと行けない所が1000になる。


そしてこの状態になると、いくら呪文・特技を使っても、MPが1000のまま減らなくなるのである。

 

こんな状況が生まれた理由は2つある。


職業の補正が入ってMPが1000を超えた場合、通常は999として処理されねばならないが、この際「補正後のMP≧1000ならば、最大MPは999」とプログラムすべきところを、「補正後のMP>1000ならば~」と間違えているためと思われる。


このため、補正後のMPが四捨五入して1000ちょうどになる場合に限り、MPがそのまま1000で処理されることになった。


さらに、一部のモンスターの仕様である「MP無限」を、プログラム上「MP1000」として処理しているため、必然的にプレイヤー側もMPが無限になるのである。

 




さぁ吹っ飛べ!!


極大放出魔法テラマダンっ!!!」



三度、世界が真っ白に染め上がった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る