ハメ技地獄
『 聖水』と言うアイテムがある。
マップ上で使うと魔物を寄せ付けなくなったり、戦闘中に使うと特定のダメージが入る聖なる水である。
大抵デモクエシリーズ問わず、どこの道具屋でも売っている。
俺はカーサブランカ等のデモクエ4の要素を聞いてから、すぐにこの『 聖水』に着目した。
初期版のデモクエ4ではこの聖水、バグと言うか変な仕様になっており、どんな敵でも耐性やレベルを無視し、50の一定ダメージを与える。
耐性無視の一定ダメという事で、ケーニッヒメタル狩りに多用活用されていた裏技なのだが、俺は気づいてしまった。
リアルなら一度に何個も投げられるんじゃないか?
ゲームなら1本ずつしか投げられないが、リアルならまとめて敵に投げつけても良いはずだ。
1本で50ダメージなら10本で500ダメージだ。
【ぎぃあああああああ!!】【熱い!!熱い!!】【ごァああああああああぁぁぁ!!】
【やめてくれ!!もう·····。がああああああああぁぁぁ!】
デーモン・プリーストの取り巻きである、レッサーデーモン達が文字通り溶けて行く·····。
·····あっれ~?思っていたのとなんか違うぞ?
コイツらはそもそもHPが150くらいしかない。
『 聖水』に1回当たれば、自身のHPの3分の1もの大ダメージを喰らう。
ゲームなら気にせず攻撃してくるが、リアルなら当然怯む。
さらに仲間がやられている所を見て、他の奴らも怯む。
つまり、投げれば投げるほど怯んで溶けて行く。
そしてデーモン・プリーストもドン引きしている。
俺もステラもドン引きだ。
想定通りではあるのだが、グロ過ぎない?·····。
「く、くぅ!小癪なぁ!我が魔導の極地をみせて·····!」
「ま、『 魔法封じ』!!」
すかさずステラが手に持った杖を天に掲げる。
杖の先端についた髑髏がチャームポイントの身の丈程ある大きな杖である。
先日倒した魔王の杖である。
この杖、戦闘中に道具として使うと『 魔法封じ』の効果がある。
デーモン・プリーストの主な攻撃方法は魔法の為、『 魔法封じ』に極端に弱い。
「ちぃ!!なら殴り殺してやる!」
そう。魔法を封じられると残り攻撃手段は殴るしかないのだが·····。
バシャッ!
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
デーモン・プリーストが1歩でも動くと、投げ過ぎて水溜まりとなった聖水を踏んでしまう。
完全な羽目技だ。
うん。我ながら酷いな·····。
そもそも、デーモン・プリーストは黒幕ではあるが、魔王ではない。つまり、『暗黒の衣 』がないのだ。
特に通常状態のコイツは少し強い魔物にしか過ぎない。レベルカンストの俺やそれに近いステラを相手にするのはどだい無理な話だ。
そう。あくまでも通常のコイツはちょっと強い魔物でしかない。
つまり、あるのだ。
コイツがシリーズのラスボスになりうる程の強さを手に入れる方法が。
「·····シュウ。騎士道精神とかに興味はないか?私で良ければみっちりと教えてやれるぞ?」
「·····世界が平和になったら頼もうか。」
絶叫がやみ、デーモン・プリーストが動かなくなる。
「·····やったか?」
と、しれっとフラグを立ててみる。
ギョロっとデーモン・プリーストの黒と赤の目が俺を睨みつけてくる。
「こ、ここまでの屈辱を味あわせられるとは·····。いいだろう。貴様達に私の真の力を見せてやる。」
こ、これは!
「まだ研究段階で不安定な力だが、負けるよりはいい!死ぬよりはいい!」
懐から注射器の様な物を取りだし、自分に刺す。
「見せてやろう!!大魔王の力を!!!」
既に出来ていたのか!?
闇進化の秘法!!
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