引きこもりもたまには外に出る
ローザタウンではゲーム同様に様々な種族が当たり前に生活していた。
ゲームではNPCのグラフィックスが使い回しだったりするのだが、その辺は流石リアル。
エルフにホビット、魔族に魔物、そして人間。
多種多様な種族が仲良く暮らしていた。
隠れ里とは言え、俺達のような人間の旅人も排斥される事はない。
ただ、外の人間にそれなり以上に興味があるのか、遠巻きに奇異の目で見られている。
取り敢えず、道具屋を訪れる。
薬草などはまだかなり数はあるが、念の為、聖水を買い占めておく。
「ローザ様はのぅ。心の優しい方なんじゃ。
儂のような老骨にも優しくしてくれる。」
立派な白い髭を蓄えた年老いた道具屋の店主がお金の受け渡しの時にボソリと呟く。
次は防具屋だ。
デーモン・プリーストは名前の通り魔法使い系なので、特に魔法耐性の高い武具は必須である。
こちらは特に念入りに吟味する必要がある。
「魔王様も偉くご執心でのぅ。
今じゃ3日と空けずにこの村にやってくる。」
ステラが防具の試着をしている時、立派な白い髭を蓄えた年老いた防具屋の店主が教えてくれた。
あ。ついでにこの氷炎のローブも包んでくれる?
武器屋も忘れない。
ここは物語でも終盤の村だ。
それなりの武器が揃っている。
まぁ使う事はないかもしれないが、廃人的に様々な武器を用意しておくのも悪くない。
これから仲間が増える可能性もあるしな。
「しかし。ここの守護を任されているあのデーモン・プリーストはどうも怪しい。何やら良からぬ事を企んでいそうじゃわい。」
受け渡しの時にボソリと立派な白い髭を蓄えた年老いた店主が呟いた。
最後に教会でお祈りを・・・。
「はぁはぁはぁ!お主、分かってやっておるじゃろ!」
当然である。
途中からつい楽しくなってしまった·····。
実はこの村の道具屋と防具屋、武器屋に教会は入口こそ別だが、中は繋がっていて全て1人の老人が掛け持ちをして運営している珍しい営業形態だ。
ゲームでも走って駆け寄ってくる姿は印象的だった。
魔王とローザは何よりも先ず、この老人の働き方改革を進めるべきではないだろうか?
他店舗経営爺さんの店を出て村の中を散策する。
あぁ、そうそう。
確かこの辺に・・・。あった!
街中にある井戸の傍を調べると、伝統的なステータスを上げるドーピングアイテム、『 生命の種』が落ちていた。
デモクエでは民家の中に勝手に入ってタンスやツボの中身を拝借すると言うのは基本である。
しかし、流石にリアルでそれをするのは気が引けるので、こうやって落ちているアイテムの回収だけに留めている。
衛兵のお世話にはなりたくないし·····。
「な、なぁ。何だこの種?メキメキHPが上がって何だか怖いんだが・・・?」
『 魔鳥の翼』バクで増殖させ、丼いっぱい分食べれば一気にHPはカンストだ。
この2日ほどでステータスが一気に変わってしまったステラは手に持った杖に寄り掛かり苦悩している。
よし。これで取り敢えず俺もステラもHPはカンストの999まで上がったな!
さて。粗方準備は整った。
ステラが何だか不審な目でこちらを見てくるが、
そこは気にしない。
後はこのまま街の北にある神殿へ・・・。
不意に街がざわめき出す。
どうも聞き耳を立てると、誰かが尋ねて来たらしい。
特に魔物達や魔族達が浮き足立っている様だ。
おい。これは不味くないか?
魔族や魔物がここまで反応する来訪者なんて2人しか思いつかない。
どちらも面倒臭いが、まだ隠れてやり過ごせる魔王ピエトロの方がマシな気も·····。
「東方守護者!デーモン・プリースト様のおなぁーりぃー!皆の者!頭が高いぞ!控え控え!」
あぁもう!引きこもってろよ!黒幕!!
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