堂山女装物語

叫奈緒美

第1話 「儀式」


春風にはためく白いドレス。

ここは某県の山頂。

雲の上の、飛べる観光スポット。


順番が回ってきて、安全ロープを結いつけられたヒジキさんと、

脇で見守る、ナオミさん。


————————————————————————


ナオミ「バンジー!!」


ヒジキ「バ・・、バンジ————!!」




(崖下から突き上げてくる強風。)




ナオミ「どうしたの、奥さん!それっ、飛ぶのよ!」


ヒジキ「高い 高い 高い~!(汗)」



ナオミ「三十路の決意をそこで、固めるのよ! それっ、ワンツー!」 (拍手)



ヒジキ「いいだしっぺはアタシだけど、奥さん、下見るとこれは凄いわ・・」



ナオミ「あっ! カツラ!風で動いてるわっ!(汗) 押さえて!」


ヒジキ「うっ。てかカツラって言わないで!カツラってばれるでしょ!?」




(他のお客さん、ポカーン。)



ナオミ「そこがロドスよ!そこで飛んで!」


ヒジキ「オ、オカマ30、崖っぷちー!!(汗」


ナオミ「そうよ、三十路という崖っぷちを、飛ぶのよー!」



ヒジキ「そ、そうよね! 飛べないオカマは、ただのオカマよっ!!」


ナオミ「そうよそうよ!あんたっ、ただのオカマになりたいの!?」


ヒジキ「いやーっ!!ただは嫌ーーっ!」



ヒジキ「ただのオカマって、どんなオカマ??」



ナオミ「四の五の言わずに飛びなさいっ!」


ヒジキ「だって奥さん下見てみなさいよっ、川があんなに小さいのよ!!」


ナオミ「あなたの立ってるその崖が、この世の一番下なのよ!そういうことなのよ!」


ヒジキ「ううう(涙) ちくしょー! 飛んでやるぅーー!!」


ナオミ「そうよっ!その為にここに居るのよっ!」



指導員「あの、はやく、飛んでください。後ろがつかえてますんで。」





ヒジキ「後ろは使えないのよっ!!」


ナオミ「奥さん、ちがうちがう(笑)」


ヒジキ「アンタも後から同じ目にあうのよ!分かってて?」



ナオミ「後ろは使えないですって言うわっ!」



ヒジキ「ちがうちがう!!(汗」



ヒジキ「ひぅいぃぃ、、あ、足がすくんで動かないのよーー!!」


ナオミ「生きるっていうのは、そういう事よ!!そこで、飛ぶのよ!」


ヒジキ「ちんこが消えてなくなりそうよーーー!(涙」


ナオミ「未練はないでしょうが!」


ヒジキ「そういう問題じゃないのよ!(涙」



ナオミ「迷いを断ち切るのよっ、奥さん、挫折する気!?」



ヒジキ「生まれた時から挫折してるわよー!!!」


ナオミ「ほらご覧!」


ヒジキ「ほらって何よ!」


ナオミ「マサイ族の成人式だと思いなさい!あなたの人生、そこから始まるの、さぁ飛んで!」



指導員「飛んで!いきますよ、 いち、にの、」




ヒジキ「さん、ぺい、です♪」 (手)



ナオミ「古いのよ!!!(怒) 古ガマは、去るのよ!」



ヒジキ「古ガマはしぶといから去らないのよ!!アンタ、アイスペールで一気させるわよ!?」


ナオミ「飛べない古ガマに限ってそんなこと言うのよ!」


ヒジキ「言ったわね!?堂山歩かれへんくしてやるわ!!」


ナオミ「あら奥さんとこヒマな店ね。あたし走るからいいわよ。」


ヒジキ「アンタんとこフケ専のくせに!」


ヒジキ「ちくしょー!飛びたくなってきたわー!!」



ナオミ「奥さん!今飛ばなかったら、ビデオに売られるわよ!?」



ヒジキ「・・な、なおさら飛ばなきゃ!!(汗」



ナオミ「まぁ、ビデオ売られても、売上ないやろけど。」



ヒジキ「あたしやっぱり、飛ばない!!」


ナオミ「ちょっとちょっと! いいから早く飛んで頂戴!」




指導員「あの・・、もうギブアップしますか?」


ヒジキ「バストアップしますわ!!」



ナオミ「ア・・・、アンタ、、なんなのよーー!!(涙)」





(終)



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