第1411話 湖の特徴の確認
湖中の蛍林まで辿り着き、このエリアの名前の由来は堪能した! いやー、淡水のクラゲがいるって話は前々から聞いてたけど、それがこういう風に演出されているとは思わなかったなー。
今はハーレさんが俺の水から出てスクショを撮っていて、それ以外の俺らは空中に浮かんでいるアルのクジラの背に戻っている。あと20分くらいすれば23時だけど、どうしたもんかな?
「ねぇ、ケイ? ここって敵はどうなってるのかな?」
「ん? サヤでも見つけられないのか?」
「ちょっと水草が多過ぎて……死角が多いかな。所々に魚はいるみたいなんだけどね?」
「あー、なるほど。ちょっと全体的にどんなもんか、確認してみるわ」
「うん、お願いかな!」
別にここで本格的に戦う訳でもないけど、どの程度の数の敵がいるかは気になるよなー。という事で、これだ!
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 122/127
えーと、反応は……おー、あちこちの水草の中に向かっている黒い矢印が大量にあるなー。おっ、何気に離れた場所にも赤い矢印も青い矢印も灰色の矢印もあるね。
「湖全体で水草に隠れて敵は存在してるし、戦ってるっぽい人もそれなりにいるなー。ここ、Lv上げにいい場所なのかも?」
「あ、そういう感じなんだ」
「視認性が悪いだけかな?」
「まぁ水草が多いしなー。逆に言えば、過剰に敵が集まらなくていい気もするけど……」
ん? ちょっと待った。なんか少し先の方に、妙に黒い矢印が集まってる場所があるな。というか、矢印の数が増えて……あ、止まった?
「……なんか妙な場所があるな?」
「どういう風に妙なのかな?」
「なんというか……敵がその場にいたというより、出てきた感じ?」
「出てきた……って、どういう意味だ?」
「言葉通りとしか言いようがないなー。見に行ってみる?」
「……それもありかもしれんな」
どうにも不自然な感じだし……まぁまだ時間もあるから実際に出てきたっぽい場所を見に行ってみるのもありだろ。
「ハーレさん、そろそろスクショはいいか? ちょっと気になる部分があるから、そっちを見に行きたいんだけど……」
「あ、もう大丈夫なのさー! 気になる部分って、今話してたやつですか!?」
「そうそう、それ。獲物察知での反応だけじゃ詳しい事は分からないけど、実際に見れば分かるだろ」
「それはそうなのさー! どういう様子なのか、気になります!」
「百聞は一見に如かずかな!」
「同じような系統のエリアが、今後どこかで出てきて、そこで戦う事もあるかもしれないしね。参考までに見ておくのは賛成!」
ヨッシさんの言う事も一理あるし、見に行く事で全員の意見は一致だね。さーて、それじゃちょっとこの湖の探索といきますか。他のプレイヤーが戦闘中みたいだから、その邪魔にはならないように要注意で!
「ケイ、どの辺だ?」
「方向的にはもうちょい右で、結構先の方。ここからじゃまともに見えない位置だな」
「おし、ならその真上まで行ってみるか」
「頼んだ!」
「ワクワク!」
今も他の方向で同じような敵の増え方を確認したけど、そっちには他のプレイヤーがいるから避けていこう。どういう状況なのかはなんとなくの想像は出来るけど……実際に見る方が確実だしね。
◇ ◇ ◇
アルに乗って、敵の不思議な出現が起こっていた周辺へと移動してきた。なるほど、そういう事か。実際に出てきた状態を見ないと断言は出来ないけど、これがここにあるなら可能性は高そうな気がする。
「ケイ、ここか?」
「多分なー。敵は、そこの湧水から一気に溢れて出てきたとみた!」
「おぉ!? そうなの!?」
「まぁあくまで想像だけど、『グラナータ灼熱洞』のマグマの中とか、『砂時計の洞』での砂の中から出てくるのと同種かと思うぞ?」
「おー! 確かにそれはありそうなのです!」
「……色んな種族が、湧水から溢れてくるのかな!?」
「種族までは、どうなんだろ?」
「そこは分からん!」
普通に考えるなら魚なんだろうけど、水属性持ちなら他の種族でも活動は可能になるしなー。そればっかりは実際に敵を見ない事には分からないけど……水草で視認性が悪いんじゃ、確認も難しいか。
「はっ! サヤ、サヤ! あっち!」
「え、どうしたのかな? あっ!?」
「ん? 何か見つけた?」
ハーレさんが何かを見つけて、サヤへ教えたっぽいなー。でも指差している方向は湖の端で、鬱蒼とした木々があるだけ? 獲物察知に反応はないし……あれ? でも、なんか妙に色合いがおかしい部分があるような……。
「木の枝に、青いナナフシがいるのです!」
「属性で出てる体色が、擬態するのに悪影響が出てるかな!」
「え、ナナフシがいるのか!?」
ナナフシは、どこだ!? ナナフシと言えば、そもそもの姿が枝っぽい虫のやつ! 悪影響が出てると言われても……うん、見つからないんだけど!?
獲物察知の効果はまだ出てるから、擬態自体は有効な状態だよな。うーん、流石はサヤとハーレさんの観察力!
「……青い体色って事は、水属性持ちだよね」
「多分、そうなのさー! 魚以外の種族もいるっぽいのです!」
「あっ! ハーレ、今度はあっちかな!」
「おぉ!? 砂に紛れた魚がいるのさー! 平べったいし、ヒラメかカレイっぽいのです!」
「あー、なるほど。そういう傾向か」
どうも、サヤとハーレさんが見つけている感じでは、水草の中に隠れていない敵は擬態持ちが多そうですなー。ここの湖の底は砂地になってるし、隠れやすい場所ではあるのかもね。
「……そういえば淡水のヒラメやカレイは実在もしていたな」
「え、マジで!?」
「ここで嘘を言っても仕方ないだろ。とはいえ、ここの個体がどうなのかは分からんが……識別してみるか?」
「……識別で分かるのか?」
「知らん。名前に出てない限り、水属性を持っているかどうか程度しか分からんだろうしな」
「……ですよねー」
明確に『淡水ヒラメ』とかの名前がない限り、水属性を持ってるだけの普通の海のヒラメの可能性はあるし……そもそも、見極めたとしても意味はない気がする!
そもそも、この辺にいるのは未成体だろうし……こういう場所では擬態持ちが多いって傾向さえ分かれば、それ以上の情報は大して役に立たないだろうし――
「あ、湧水の中から……リスが出てきたね? 魚も一緒だったけど、青いリスが出てくるのは不思議だね」
「ふっふっふ! 水の中を駆ける、青いリスは撮ったのです!」
「……水草の中に隠れていったし、そういう意味でも林なのかな?」
「あー、それはありそうかも?」
「実際の森や林に比べると小規模とはいえ、役目的には似たようなものではあるしな」
こうして色々と観察してみれば、エリア名の由来っていうのも結構分かるもんだなー。まぁ今日通ってきた『モロ平野』みたいなネタには、明確な由来はなさそうな気もするけどさ。
「さてと、戦ってる人達の邪魔になってもいけないし、もっと空に上がってから、これからどうするか考えるか」
「それもそうだが……今日はもう、時間的に終わりじゃねぇか?」
「いやー、ここはハーレさんが何か言いそうな気がしてなー?」
「はっ!? 夕焼けが撮りたいのがバレてました!?」
「やっぱりか!」
今日は途中から盛大にスクショを撮ってたから、そんな予感はしてたけど……予想は大当たりだったな。まぁそれが悪いって訳ではないんだけど……。
「ハーレさん、寝坊は大丈夫か?」
「今日だけは、今朝、盛大に二度寝しかけて、寝坊の危機だったケイさんに言われたくないのさー!」
「うぐっ!?」
「え、そうだったのかな!?」
「……平日にケイさんがってのは、珍しいね?」
「ほう? ケイ、何かあったのか?」
「あー、いや、ちょっと中々寝付けなくてな……」
流石にそれがサヤと通話した後に、妙に落ち着かなくなったからとか、その理由は言えないけども! ……我ながら、なんであんなに落ち着かなくなったんだ?
「とりあえず空に上がっとくが……ハーレさん、昨日の夜に何かあったのか?」
「んー? 私の旅行中の緊急時の為に、ケイさんにヨッシとサヤの連絡先を教えただけだよ?」
「うん。ケイさんにメッセージを送って、ちゃんと届くかは確認したしね」
「私も、直接話して確認したかな」
「え、そうだったんだ?」
「私も今朝聞いた時には驚いたのさー!」
「……ほう?」
「え、何か変な事を言ったかな?」
今の反応、サヤが通話してきたのは、ヨッシさんは知らなかった? まぁわざわざ話すような事でもないけど……アルの、その妙に興味深そうな反応は何!? そっちの方が気になるわ!
「……なるほど、それが寝坊の原因か」
「アル、何言ってんの!?」
俺自身、寝付けなかった理由もよく分かってないんだけど……いや、少なくともサヤの通話が要因になってたのは間違いない? でも、決して嫌だった訳じゃないし、むしろ嬉しかったというか、気恥ずかしかったというか……あれ? 俺って、サヤから通話がきて嬉しかったのか?
いやいや、理由はどうあれサヤが原因でとか言わないで欲しいんだけど!? それ、サヤが気にしちゃうやつだから!
「サヤ、ケイに通話するなとは言わんが、この時間帯でのログアウト後はやめといてやれ。時間も時間だし、ケイの身が保たないぞ?」
「あ、確かに時間帯の配慮は足りなかったかな……。それで眠れなくなってたなら……ケイ、ごめん」
「いやいや、サヤがそんなに気にする必要はないからな! 大丈夫、大丈夫!」
大丈夫とは言ってるけど、実際に大丈夫なんですかねー!? ……本当、このくらいの時間帯ならこうして会話してるのに、直接の通話になった途端に気恥ずかしくなったのはなんでだ!?
「……ねぇ、ハーレ? これって、思ってる以上に可能性あり?」
「そんな気はするけど、色々とハードルが高そうなのです……」
ん? なんかヨッシさんとハーレさんが小声で話してるけど、可能性とかハードルとか、何の話だ? 話の流れ的に俺かサヤの事なんだろうけど……。
「ヨッシ、ハーレ、何の話かな?」
「ううん、何でもないのさー! ケイさんがまた寝坊しそうになったら私も危ないから、今日はここまでにするのです!」
「うん、その方がいいかもね。ここの夕焼けなら、夏休みになってからでも見れるしさ」
「そうしとけ、ケイ。昨日まともに寝れてないから、今の集中力切れにも繋がってるんじゃねぇか?」
「あー、そう言われたらそうなのかも?」
サヤとの対戦で疲れたのは間違いないんだろうけど、それ以上に昨日の寝不足が今の戦う気力が尽きてる理由な気がしてきた。自分でも不思議なくらい、のんびりしたかったもんなー。
授業中こそ寝てはいなかったけど、昼間は眠かったし……目的はもう済ませたんだから、ここで終わらせて寝るのが無難かもね。
「それなら、今日はもう戻って解散かな? ケイ、大丈夫?」
「あー、大丈夫、大丈夫。それに、対戦の時に手抜きはしてないからな!」
「あはは、そこは心配してないかな!」
ふぅ、そこだけはハッキリと言っておかないとな! 適当に相手をしたと思われるのは心外だからね。
「はい! 明日はどうしますか!?」
「んー、特にこれだっていう明確な目的は、今はないかな?」
「夕方も夜も、集まってから決めるんでいいんじゃない?」
「特にこれと言って、何をするかとも決まってないしな。その時の状況に合わせて決めればいいだろ」
「だなー」
マツタケさんから油の入荷の話がきたらそっちに行くのでもいいし、何か検証案件でもあれば混ざるのでもいいし、どこかにLv上げをしに戦いに行くならその時にどこに行くかを決めればいい。目的自体が決まっていない今、無理に考えても仕方ない!
「おし、それじゃ森林深部まで帰って、解散って事で!」
「「「「おー!」」」」
夕焼けに変わり始める23時にはまだなってないけど、まぁ今日はここまで! 森林深部に戻ったら、忘れないように新しい帰還の実をもらっとかないとねー。
◇ ◇ ◇
森林深部に戻ってから、忘れずに新しい帰還の実を貰い、エンから少し離れた所でログアウト。アルはまだやるとのことだけど、他のみんなは俺に合わせてそのまま終了となった。
そして、今はいつものいったんのいるログイン場面である。えーと、今回の胴体の内容は……『今週末に、何かが起こる!』で変わらずか。まぁ予告がほいほいと気軽に消されても困るけど。あ、寝る前にこれは確認しておこう。
「いったん、スクショの承諾はきてる?」
「はいはい〜。こちらになりますので、ご確認をお願いします〜」
「ほいよっと」
さて、昨日の検証中のスクショの分は済ませてるけど、今はどうなって……うっわ!? 大量にあるんだけど!? あー、なるほど。灰の群集の人ばっかりだし、並木で色々やってた時のスクショが送られてきてるんだな。
それ以外には……あ、地味に『日向の牧地』を飛んでるところや、『モロ平野』の川で流れてた時の様子が撮られてるね。ふむふむ、こっちは灰の群集以外からも撮られてるけど……。
「いったん、灰の群集だけ許可で」
「はいはい〜。そのように処理しておくね〜」
「よろしくっと」
共闘中でないなら、基本方針としては同じ群集の人のみ承諾だからねー。いつも通りの処理ですな!
「あ、そういや少し質問なんだけど……」
「どういう内容の質問かな〜?」
「色んなとこに川ってあるじゃん? それぞれの川に名前ってある?」
「川の名前はまだないね〜!」
「……へぇ?」
川の名前は『まだ』ないのか。この一言があるかないかで色々と違ってくる気がするけど……こりゃ、本当に川を舞台にしたイベントがありそうな気がしてきたな。
「質問に答えはこれでいいかな〜?」
「十分な答えだな。さてと、それじゃ今日はもう終わりにするからログアウトで!」
「はいはい〜。今日もお疲れ様でした〜。またのお越しをお待ちしております〜」
「ほいよっと!」
いつものようにいったんに見送られながらログアウト。さて、手早く風呂に入って、さっさと寝てしまおう。なんか寝不足だった事を思い出したら、眠くなってきてるしさー。
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