第1120話 成熟体のフィールドボス討伐戦 その1


 全員、今セット出来るだけの刻印系スキルを用意はした。飛行鎧の方の移動操作制御も再発動は可能になってる。行動値も魔力値も、移動中のアルを除けば全快! 川のすぐ近くの上空までもう少し。さーて、それじゃ今度こそ討伐をするぞ!


「ケイ、頼むぞ!」

「ほいよっと!」


 移動中にそれなりに作戦は考えてきたけど、初手はワニの状況次第。川の中から出たままならそのまま強襲、川の中に戻っていたなら正確な位置を俺が獲物察知で把握する。そして、川の外にいる様子はない!


<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します>  行動値 109/114(上限値使用:1)


 さて、ワニは何処にいる? 多分、川の中に戻ってるんだと思うけど……よし、王冠マークのある黒い矢印を見つけた。あのワニは川の中を下って泳いでるっぽい! 地味に東の方に青の群集の2人組がいるけど、これは伝えておいた方がいいな。流石に俺らが先に戦闘になれば横殴りしてくる事はないだろうけど……。


「ワニはこのまま真っ直ぐより下流へ泳いでる! 懸念情報としては、真正面に青の群集の2人組がいるけど、こっちは無視していくぞ!」

「気にしてたら、フィールドボス戦なんかやってらねぇからな!」

「……先に潰す?」

「風音さん、それは無しで! ここ、競争クエストエリアじゃなくて、通常エリアだから! 俺らにPK判定が出るから!」

「……それなら仕方ない」


 サラッととんでもない事を言うね、風音さん!? いや、でも少し前まで成熟体の奪い合いでPKが効率が良いって状況が発生してたって話だし、そっちの感覚になってるのかも? いや、その分析は今はいらない!


「とにかく、青の群集の2人組よりも前に戦闘を開始してれば俺らの方が優先だから、それでいく! 風音さん、ブラックホールでの引っ張り出しをよろしく!」

「……作戦通り、任された」

「サヤもいいか!?」

「準備するかな! 『魔力集中』!」


 川の中いた場合は、まずその中から引っ張り出すのが攻撃の一手目。そこからサヤが魔法の耐性を下げる黒の刻印:低下を刻みつけ、まずはヨッシさんの応用魔法スキルの取得条件を達成させる! 今回はとことん、このワニとのLv差を利用させてもらうぞ!


「ケイ、この辺か!?」

「大体その辺! ハーレさん!」

「はーい! えいや!」


 ハーレさんが川へと投げたのは、鹿の肉。この手の肉系アイテムは肉食系の種族の誘き寄せに使えたりするんだけど、成熟体のフィールドボスに有効かどうか……。


「おし、食いついた!」

「……持ち上げる! 『ブラックホール』」

「あー、そんな気はしてたが、HPが減ったままな訳もないか」

「それじゃ行ってくるかな! 『略:突撃』!」


 流石に最初の戦闘の時のダメージは回復されてたっぽいな。まぁそこそこ間が空いてしまってたんだし、ここは仕方ないと割り切ろう。

 風音さんのブラックホールで川の中から引っ張り出されたワニに向けて、腕に巻き付けた竜の突撃を推進力にしてサヤが勢いよく飛び降りていく。よし、サヤが黒の刻印を刻む前に俺の予定の事もやっておこう!


<行動値を5消費して『白の刻印:増幅』を発動します>  行動値 105/114(上限値使用:1)

<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 98/114(上限値使用:1): 魔力値 269/290


 これでワニの水属性が強化になって、3ヶ所ほど強化した証の青い模様が浮かび上がった。ついでに俺の方には白い杖のマークが浮かび上がってるから、通常の水の付与魔法よりも効果は強烈! 白の刻印自体は俺に刻まれてるから、重ね掛け不可の制限にも引っかからないというか、そもそも白の刻印自体は敵には刻めないけど。


「ケイ、ナイス! 私はこれかな! 『略:黒の刻印:低下』!」

「ヨッシさん、盛大にぶっ放せ!」

「了解! 空中なら川に流れてはいかないからね! 『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』!」


 おし、ヨッシさんのエレクトロインパクトの3連発が見事に決まった! 俺の付与魔法での青い模様も、サヤの竜が刻んだ黒の刻印:低下の黒い折れた杖と割れた盾のマークは消えていったね。でも、ダメージとしては1割にも届かないのか。

 今のは敵の得意な属性を強化してるんだからリスクは早いうちに消す方向にしたけど、やっぱり硬いな。でも、1割も削れてはいなくても、目に見えるレベルでHPは減っている。これなら、かなりのLv差があっても削り切る事は出来そうだね。


「次、行くかな! 『白の刻印:剛力』『連爪刃・閃舞』!」

「私も次々いくよ! 『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』『エレクトロインパクト』!」


 サヤが白光と銀光の両方を放ちながらワニの腹部に回り込んで、竜を足場の斬り刻んでいく。それに合わせて、ヨッシさんが再びエレクトロインパクトの連発を次々と叩き込んでいる。

 今のでHPは9割を切ったね。でも、戦闘開始の直後だから連発は出来てるけど、この辺のスキルや行動値を使い切ってからが重要になってくるんだよな。だから、無理な連発はそこまでさせない。


「サヤとヨッシさんはそこまでで、予定通り距離を取って回復をしてくれ! 次は、アルとハーレさんでいくぞ!」

「うん、了解! 『自己強化』!」

「分かったかな!」


 次の順番の指示を出したし、今はとにかくみんなの新しいスキルの取得条件を満たしながら次々と攻撃あるのみ! これからやる事はアルのクジラの上にいる方が大変な事になるから、アルの上にいた俺とヨッシさんは離脱だ。


<行動値上限を6使用して『移動操作制御1』を発動します>  行動値 98/114 → 98/108(上限値使用:7)


 という事で、飛行鎧を展開して飛行に移行。ワニが暴れて風音さんのブラックホールの吸い込みの力が弱くなってきているけど、そこは想定済みだから問題なし! 吸い込む力は徐々に強まっていくのに、逆に弱まってるんだから相当抵抗されてるな。

 それはともかく、今はアルが動き出す前に次の俺の一手をワニに叩き込む!


<行動値を5消費して『黒の刻印:脆弱』を発動します>  行動値 93/108(上限値使用:7)


 さっきまでサヤが斬り刻んでいたワニの腹部に回り込み、ロブスターのハサミを叩きつけて物理攻撃への耐性を下げる! これでしばらく俺はどっちの刻印も使えないけど、アルの1撃のダメージ量を増やす事は出来るからな!


「アル、ハーレさん!」

「おう! やるぞ、ハーレさん! 『魔力集中』『白の刻印:剛力』『並列制御』『旋転連突撃』『ルートスキューア』!」

「わわっ!? 了解なのさー! 『魔力集中』『連速投擲』!」

「風音さん、ブラックホール解除!」

「……うん!」


 ちょっと賭けではあったけど、川底から樹木魔法Lv6のルートスキューアでワニを串刺しにして持ち上げる事には成功。その状態でアルのクジラの白光と銀光を放つ突撃を繰り返していき、それと同時に動き回るアルのクジラの背の上から、ハーレさんも連速投擲を次々と当てている。

 ワニも決して大人しくしてる訳じゃないし、魔力集中は発動しているっぽい。ただ、ブラックホールで持ち上げてたから、俺らには攻撃は届いていない。当たれば危険だろうけど、当たらなければどうという事は――


「……危機察知に反応だけど、全員が対象? ……範囲が広い?」


 え? でも、広範囲に攻撃出来るような魔法の兆候は魔力視では……って違う! 広範囲攻撃はそれだけじゃないし、もしそうなら……やっぱりか! 川の表面の水が変な流れを作り始めて、それが空中へと上がってきてる。


「アル、川の水を使った水流の操作だ! 剥奪を頼む!」

「ちょっと待て! まだ最後までスキルの発動が済んでねぇよ!」

「あー! そういやそうだった! それじゃ俺の方で対処する!」

「悪いが任せるぞ!」

「ほいよっと!」


 出来れば黒の刻印:剥奪で操作自体を無力化して欲しかったけど、状況的に仕方ないか。それじゃ俺のやり方で妨害させてもらうまで! 魔法産の水だったらアブソーブ・アクアで吸収したけど、これは無理っぽいもんな。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 92/108(上限値使用:7): 魔力値 266/290

<行動値を19消費して『砂の操作Lv3』を発動します>  行動値 73/108(上限値使用:7)


 即座に砂を大量に生成して、ワニが操作する川の水を使った水流の操作に砂をぶち込んでやる! 不純物が混ざった操作だと上手く操作が出来ないからな! 俺とワニの操作精度の勝負といこうじゃないか!


「ハーレさん、今のうちに拡散投擲!」

「了解です! 『白の刻印:増加』『拡散投擲』!」


 おぉ! やっぱり睨んでた通り、拡散投擲の連撃での強化での銀光の放ち方が今までよりも強い! 拡散投擲は全弾当たるのを想定してないスキルっぽい感じだけど、だからこそ全弾当てた時の強化幅は通常よりも強いのかもね。

 それにしても……意外とこのワニの水流の操作は大したことないな? 確かに流れ自体はかなり強いけど、精度としてはあまり良くない感じがするし、これは俺の相手じゃない。


「アル、今のうちにもう一発叩き込んどけ! 風音さんはブラックホールで、そのフォローを頼む!」

「……任せて。『ブラックホール』」

「おし、ならいくぜ! 『砲弾重突撃』!」


 今の状態ならワニは他のスキルは使えない状態だから、アルのチャージ攻撃を叩き込むチャンス! とはいえ、時間が稼ぎ切れるか? お互いに操作の邪魔をし合ってる状態だから、操作時間は凄い勢いでで減っているもんな。精度が低いワニの方が減りはもっと早いはず。あー、でもLv差がどう出るかが問題か。

 うーん、とりあえずワニの動きは封じれているけど、暴れまくる事で風音さんのブラックホールの吸い込みの力がどんどん弱まってるから、それだけでは厳しいのは分かってる。よし、他の方法で邪魔してみるか。


「アルのチャージが終わる前に操作が切れたら、閃光で目潰しをする! 合図はするから、みんなそのつもりで!」

「おうよ!」

「はーい!」

「分かったかな!」

「了解!」

「……うん!」

「って言ってる間に限界が来たか! 閃光、いくぞ!」


 飛行鎧で普段はコケを隠している部分の岩を退けて、コケを剥き出しにする! 直前にはなってたけど、それでも予め言えてただけマシか。盛大に砂の操作でワニの水流の操作を掻き乱して……よし、水流の操作は切れたっぽい。砂の操作は解除して、これだ!


<行動値を3消費して『閃光Lv3』を発動します>  行動値 70/108(上限値使用:7)


 よし、ワニに盲目が入ったし、みんなも直視しないようにしてくれてたから問題なし! これなら――


「って、青いモヤが2つ!?」


 ワニの口と前脚からって事は、魔法砲撃でのウォーターフォール!? ちっ、なんでこんなタイミングで……って、考えてる場合じゃない! まともに狙えてないけど魔法砲撃だと即座に対処しないと首を振られただけで向きが変わって当たる可能性がある!


<行動値上限を10使用して『アブソーブ・アクア』を発動します>  行動値 70/108 → 70/98(上限値使用:17)


 このまま受けたら、吸収し切れずに飛行鎧が強制解除になるけど……これならどうだ! 既に迫ってきてるけど、間に合えー!


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 70/98 → 70/104(上限値使用:11)


 解除した直後に落下しつつ、アブソーブ・アクアでなんとか吸収は出来ている。出来てはいるけど、落ちてるし吸収し切れるのか!?


<過剰魔力値を水魔法の強化に使用しますか?> 魔力値 556/290


「おわっ!?」


 くっ、やっぱり吸収し切れなかった! てか、落下とか関係なく、威力が落ちたとはいえ魔法砲撃のウォーターフォールに吹っ飛ばされてるんだけど!? HPの減りは大した事はないけど、すぐに飛行鎧の再展開を――


「『略:突撃』! ケイ、大丈夫かな!?」

「あー、サヤ、助かった」


 ふぅ、再展開をする前にサヤが受け止めてくれたっぽいね。あーもう、アブソーブ・アクアの効果自体は強力だけど、格上相手には確実じゃないな。それでも、使い方次第では強力な武器になるのは間違いない。


「見えてないかもしれねぇが、余所見してんじゃねぇよ! おら!」

「追撃なのさー! 『爆連投擲』!」


 おっ、チャージを終えたアルがワニを川の上から木々の方まで眩い銀光を放ちながら突っ込んで吹っ飛ばしていった。そこにハーレさんが次々と銀光を放つ爆発する弾を投げ、追撃となっていく。よし、良い感じの連携!


 それにしてもなんで急に昇華魔法を使ってきた? 前の時に昇華魔法を使ってきた時って……あっ! あの時は風音さんに闇の操作を使ってもらって視界を封じてたよな? このワニ、視界を封じたら昇華魔法を使ってくるって行動パターンか! その可能性は高そうだし、ワニの魔力値が多くない状態であれば誘発するのもありなのかも――


「くっ、先程の閃光は何事ですか!?」

「こっちの方でさっきから戦闘音が……あっ」


 ……ん? なんだか思いっきり聞き覚えのあるような声が聞こえてきた気がするんだけど……これはもしかして?


「またあなたですか、ケイさん!」

「そりゃこっちの台詞だからな、ジェイさん! てか、今それどころじゃないから!」

「これは……フィールドボス!?」

「なにかあると思ってこっちを探りにきたが、とんでもねぇのがいるじゃねぇか!」


 まだ8割以上も削らないといけないのに、ここでジェイさんと斬雨さんがやってくるとかやりにく過ぎるんだけど! いや、もう今はいないものとして扱おう! そっちに意識を割いてる余裕はない! 


「……ジェイ……邪魔!」

「ケイさん、魔力値の回復は済んだよ! 気持ちは分かるけど、こっちに集中して! 風音さんも!」

「ほいよっと!」

「……むぅ」


 ヨッシさんの魔力値の回復が済んだなら、過剰魔力値で強化したあれが使えるか。あー、でも手の内を見られるのは嫌だよなぁ……。


「ジェイ、引き上げるぞ。流石にここで見学はフェアじゃねぇよ」

「……それもそうですね。ケイさん、次は負けませんからね!」

「最後に盛大に横取りを仕掛けてきといて、それを言うか!? 今度こそ、完膚なきまで叩き潰す!」

「あれで戦意喪失を狙っていたのに、呆気なく立て直しておいて……その言葉、そっくりお返ししますよ!」


 サラッと戦意喪失を狙ってたとかは恐ろしい事を言ってきてるんだけど!? あれはサヤが叱責してくれたからどうにかなったから、実際危なかった……って、余裕がないのに考えてる場合かー! ともかくジェイさんと斬雨さんは撤退していったから、今はワニに集中! 

 

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