第1018話 成熟体への進化の為に


 サヤとヨッシさんは成熟体への進化後も共生進化である事と、1stと2ndが共に転生進化という事ですぐには進化が実行出来そうにない。でもまぁ、その辺は今ならそこまで難しい話でもないか。


 ケイ    : よし、サヤとハーレさんは共生進化を解除してから、環境への不適合で死んでもらうか。今は流石に他の群集の人には頼みにくいしな。

 ヨッシ   : 進化の為の倒してもらうのはやりにくそうだし、それが良さそうだね。

 サヤ    : それなら私はどっちも海かな?

 ハーレ   : 私はリスが海で、クラゲは……荒野が早そうなのです!

 アルマース : 無所属になら頼める可能性もあるが、これは博打か。状況的にはそれが良いだろうな。

 ケイ    : あ、無所属に頼むって手もあるのか。……でも、どう転ぶか分からないしなー。


 競争クエストが開始になった以上は無所属の人に接触しておきたいタイミングではあるけど、流石にそこに成熟体への進化を組み込むのはリスクがある。って、ちょい待った。え、なんでこのタイミングで羅刹からフレンドコールがかかってくる?


 ケイ    : ちょっと悪いけど中断! 羅刹からフレンドコールが来た!

 サヤ    : え、このタイミングでかな!?

 アルマース : 羅刹なら警戒する必要性は薄そうだが、慎重にいけよ?

 ハーレ   : 競争クエストに関係してそうなのさー!

 ヨッシ   : 関係してそうではあるけど、なんでケイさんなんだろ?

 ケイ    : さぁ? とりあえず出てみる。


 ヨッシさんの疑問は俺も感じたとこだけど、羅刹なら何かしらの意図があってこそだろう。イブキならただの考えなしだと思うけどさ。

 実はジェイさんが後ろから操ってるなんて事は……流石にないか。無所属の人を利用してそういう真似はしないだろうはず。さて、それじゃフレンドコールが切れないうちに出ますか。


「おい、随分と出るのが遅いじゃねぇか」

「……1人でいた訳じゃないからその辺は勘弁してくれない?」

「あぁ、今のは言い方が悪かった。すぐに繋がりそうだと思ったからケイさんにしたもんでな」

「ん? 俺にフレンドコールをかけた理由ってそんな理由?」

「あぁ、本当はベスタかレナさん辺りにと思ったが、今は絶対に手が空いてないだろ、その辺の連中」


 こういう言い方をするって事は、明確に俺らの方に何か動きがあると察知して連絡してきたっぽい。これは間違いなく無所属にもメッセージが出るような何かがあったと考えて良さそうだ。そして、ベスタやレナさんが話をする対象になり、向こうから話を持ってきたという事は……。


「羅刹は増援クエストで灰の群集の味方をするって事か?」

「お、随分と話が早いな。灰の群集はついさっき始まったばっかなのに、もう情報が回ってんのか?」

「いや、ただの推測なだけだけど、正解だったっぽいな」

「なるほど、推測か。なら、無所属の増援クエストの概要は把握し切れてないな?」

「まぁそうなるけど、詳細は教えてもらえるか?」

「あぁ、それは当然だ」


 あ、俺の言葉を聞いてアルが共同体のチャットでこの場にはいないサヤとハーレさんに説明していってくれてるね。さーて、思わぬところからきた情報だし、ここは慎重にいこう。アル達に伝わりやすいように、俺の言葉だけで説明出来る様にも意識しとくか。


「それじゃ具体的に無所属の増援クエストについて教えてくれ。根本的に集団でのクエストなのか、個人でのクエストなのか……どっちだ?」

「お、良いところを気にしてくるな。その答えは後者の個人でのクエストだ。俺がやろうとしてるのは簡単に言えば傭兵だな」

「個人でのクエストで傭兵……? え、羅刹はやろうとしてるのは傭兵って事は、傭兵以外もあるのか!?」


 無所属の増援クエストが傭兵として他の群集に参戦するだけであれば、『俺がやろうとしてる』なんて言い方にはならない気がする。そういう言い方をするって事は他に選択肢がある可能性……。


「あぁ、正解だ。今回の競争クエスト、無所属からの乱入もありだぜ?」

「ちょ!? え、今回の競争クエストって無所属が乱入してくる!?」

「……驚く気持ちも分かるが、少し声を抑えてくれ。今のは流石にうるさかったぞ」

「……すまん」


 今の情報は流石の驚いたからつい大声で……って、なんか周囲が騒ついてる気がする? まぁ今みたいな大声を出したら当然な反応だよねー! はい、騒がしくしてすみませんでした。


「ラック、ここはしばらく任せるぞ」

「うん、任されました!」


 あ、ベスタが俺の方まで一気に駆けてきたし、当然といえば当然の反応だよな。でもまぁベスタには絶対に伝えておかないといけない情報な気がするし、これは丁度良かったのかも?


「ケイ、今の内容は事実か? というか、無所属の誰かとフレンドコール中か?」

「羅刹からフレンドコールが来たんだよ。あ、羅刹、ベスタが今隣に来たぞ」

「なに? フレンドコールの相手は羅刹か?」

「お、そりゃ丁度良いな。フレンドコールで説明するのも面倒だから、どこかで合流できねぇか? とりあえず話をするのは俺1人にはなるが……」

「ベスタ、羅刹がどっかで合流したいって言ってるぞ。来るのは羅刹1人だってさ」


 なんか俺が伝言役になってしまってるけど、まぁこの際それは別に良いや。無所属で発生したっぽい増援クエストの内容は把握しておいた方が良さそうだしね。というか、イブキとセットで来そうな気もするけど、来ないんだな? ふむ、いたら邪魔だから置いてくるのか?


「……ふむ、どっちにしても接触はするつもりでいたからその案は受けよう。だが、安全策としてミズキの森林に指定させてもらおうか。他の無所属のプレイヤーや、他の群集のプレイヤーの目は避けたいからな。……そうだな、ミズキの位置から少し西に行った辺りでだ」

「羅刹、ベスタはミズキの森林でなら良いってさ。具体的にはミズキの西側の方だけど、そっちはそれで良いか? てか、位置は分かる?」

「あぁ、灰の群集にいた頃に行った事はあるから位置については大丈夫だ。ま、全貌が分かってないうちは警戒されても仕方ねぇし、他の無所属勢の事を考えたら場所的には安全か。おし、俺はそれで問題ねぇぜ」

「ベスタ、羅刹は問題ないってさ」

「なら、俺はすぐに行くと伝えてくれ。ケイ達も一緒に来てもらえるか?」

「ベスタ、ちょっとそれはみんなと相談させてくれ。羅刹、ベスタは了承だってさ」

「おう、了解だ。ミズキの森林で襲われないようにだけは手配しといてくれよ」

「ほいよっと」

「肉食獣はいるか!?」

「ここにいるぜ、リーダー。ミズキの森林に入ってきた羅刹を排除しないように通達しておけば良いんだな?」

「あぁ、そうだ。頼めるか?」

「あそこは俺らの庭だから、任せておけ! モンスターズ・サバイバル、ここの整理が疎かにならない程度に何人か俺に着いてこい! ミズキの森林に戻るぞ!」

「「「「おう!」」」」


 ははっ、そういやモンスターズ・サバイバルの面々も来てたんだっけ。普段ミズキの森林で活動しているんだから、あそこで羅刹と合流する為の手回しをするなら灰のサファリ同盟以上に適任だよね。

 さてと俺らとしてはサヤとハーレさんの進化の都合があるし、俺の独断で決める訳にもいかない。場合によっては羅刹に進化の為の死亡を頼む事も出来そうだけど、とりあえずその辺はみんなの意思確認をしておかないとね。


 ケイ    : ベスタが俺らも一緒に来て欲しいって言ってるけど、どうする?

 アルマース : 普通に行くので良いんじゃねぇか? 羅刹が傭兵として味方になるなら、むしろ俺らにとって都合がいいしな。

 ハーレ   : 味方として動いてくれるなら、進化の為に殺してもらう事が出来るのさー!

 サヤ    : うん、これは良いチャンスかな!

 ヨッシ   : ダメならダメで、改めて方法を考えたらいいしね。

 ケイ    : それじゃ一度ミズキの森林に集まるって事でいい?

 アルマース : あぁ、いいぜ。

 ヨッシ   : うん、問題ないよ。

 ハーレ   : 問題ないです!

 サヤ    : それで大丈夫かな!


 よし、これで俺ら全員の同意は得られた。進化に関して頼むのは、まぁ羅刹との話し合いというか情報交換というか、その辺が終わってからの話にはなりそうだけど。


「羅刹、俺らも行くからなー! 襲われないように手配はしてくれてるから、そのままミズキの森林まで向かってくれ」

「おう、それじゃ一度切るぞ」

「ほいよっと」


 そこまで話して羅刹とのフレンドコールは切れた。この話の続きはミズキの森林で集まった時に話せば……なんで俺達は共同体のチャットで話してるんだ? 俺がログアウトした時にアルがPTリーダーになってて、PT自体は解散になってないからPT会話でいけたはず? 気になったからには、聞いてみるまで!


 ケイ    : ふと思ったんだけど、なんでPT会話じゃなくて、共同体のチャット?

 サヤ    : えっと、ミヤ・マサの森林に人が続々と集まってきてて、会話が聞き取りにくいからかな。それに雷雨で単純にうるさいってのもあるよ。

 ヨッシ   : ケイさん達の方はそうでもないの?

 ハーレ   : 紅焔さんとソラさんがドカンとエクスプロードをぶっ放したのさー!

 アルマース : それで一度鎮めてから、さっきまでベスタが説明に回ってたからな。

 サヤ    : あはは、それなら確かに静かになるかな!

 ケイ    : ミヤ・マサの森林にはそういう人は来てないのか?

 ヨッシ   : 今のところはまだいないね。


 ふむふむ、PT会話にせずに共同体のチャットにした理由はそれなりにあったっぽい。それにしても競争クエストの再戦エリアになったミヤ・マサの森林は今は雷雨の真っ最中か。

 あそこは防衛とかなってたけど、どういう勝利条件になってるのかも気になるところ。まぁ第1回の競争クエストと同じなら、その前に現地に行って競争クエストに参戦登録をするのが先か。そもそも新エリアの占拠と、ミヤ・マサの森林の防衛、どっちに参加するかも考えないといけないね。


「ケイ、アルマース、ハーレ、俺は先に行っているぞ」

「ほいよっと!」


 ベスタはそれだけ言って、すぐに転移していった。ここでの整理は……灰のサファリ同盟が手慣れた感じでやってるから問題なさそうだ。

 むしろサヤとヨッシさんが今いるミヤ・マサの森林の方が大変そうだよな。というか、それをどうにかする為にも早めに羅刹との……この場合は交渉でいいのか? まぁ交渉という事にしておいて、それを済ませてベスタが自由に動けるようにするべきだな。


「とりあえずみんな、大急ぎでミズキの森林に集合で!」

「「「おー!」」」

「って、ケイ! ちょっと待て、順番待ちはどうする!?」

「あ、そういやそうだった!」

「私が手早くキャンセルしてくるのさー! みんなは先に行っててー!」

「ハーレさん、任せた!」

「任されました! 『自己強化』『略:ウィンドクリエイト』『操作属性付与』!」


 手早く風属性で移動速度を上げたハーレさんが、順番待ちのキャンセルをしに行ってくれた。おー、色んな種族の人がいる中を駆け抜けていって……キャンセルの順番待ちらしき列に並んでるよ。……移動速度を上げた意味が全くない気がする。


「……とにかく先に戻るか」

「……それもそうだな」


 まぁそこまで列は長くもないし、順番待ちと言っても流れてはいるからそこまで時間はかからないはず。先の戻っておいても、多分ハーレさんもすぐに合流出来るだろう。って事で、帰還の実を使って森林深部まで転移!


<『リヴィエール・河口域』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>


 多分競争クエストが始まった影響からか、エンの近くに人が集まってきてるみたいだし、サヤとヨッシさんをここで待つのも得策ではなさそうだ。すぐに新しい帰還の実を貰っておかないとね。

 それにしてもどのくらいの人が競争クエストに参加するんだろう? ソラさんみたいに対人戦はパスって人はそれなりにいるっぽいし、群集クエストの進行はそういう人達に任せて良い? うーん、あんまり戦場を同時に増やされても戦力が分散して大変だし、この辺はまだ何とも言えないところか。まぁいいや、とりあえず今はミズキの森林に転移だ!


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>


 やってきました、目的地のミズキの森林! アルは俺とほぼ同時に転移してきていて、サヤとヨッシさんも転移してきたみたいだね。俺らの中では後はハーレさんの到着を待てば良い。

 そして既にベスタと肉食獣さんがいて、その辺をあちこちで羅刹を攻撃しないように呼びかけているモンスターズ・サバイバルの人達がいる。うん、急な話だったのにご苦労様です!


「ケイ達も来た……いや、ハーレはどうした?」

「あー、PTでの順番待ちのキャンセルに行ってくれてる」

「あぁ、そうか。あそこで順番待ちをしていたなら、そういう事になるのか。それについては了解だが、ケイのところに羅刹の方から接触があるとは思ってなかったぞ」

「ベスタかレナさんに連絡するつもりだったみたいだけど、そこに接点があってさっき手が空いてそうな俺に連絡してきたってさ」

「なるほど、そういう理由か。まぁあの無秩序になりかけたとこを抑えてる最中では、その判断は助かったとこではあるな」

「だろうなー」


 ぶっちゃけ、ああいう乱暴な手段での抑え込みが出来る人ってそうはいないしね。下手な人がやれば反感を買うだけだし、あれはベスタだから出来た事だ。それにこれからの交渉次第ではあるけども、羅刹との接触は俺らにとっても利益がある可能性が大いにある。


「ふぅ、間に合ったのさー!」

「ハーレ、お疲れ様かな」

「お疲れ、ハーレ」

「しっかりキャンセルは終えてきました!」


 少し遅れてハーレさんも転移してきたし、これで俺らの方はいつでも問題はなくなった。後は少し西側へと移動してから羅刹がここまで来るのを待つだけだな。


 

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