第794話 いつもとは違う戦い方
これから本格的にLv上げを開始する前に、さっきベスタから聞いた色々な内容をみんなに伝えておいた。
それにしてもレナさんやオオカミ組とかは管理側に回ってると思ってたけど、出場側になってたとはねー。灰のサファリ同盟は開催の共同体だから仕様上で無理だけど、それ以外の人で希望者は出るって感じなのかもな。
「レナさんがトーナメント戦に参加してるのー!?」
「……あはは、割と本気でレナさんは優勝候補じゃないかな?」
「場合によってはレナさんと弥生さんのタッグもあり得るんだね」
「あー、そうなる可能性はあるな。……だけど、意外と隠れた実力者がいたりするから、その辺はひっくり返る可能性も否定は出来んぞ」
「そこはアルに同意だなー。もし十六夜さんが参戦してきたりしたら、どう転ぶか分からんし……」
「まぁそれもあるんだが、ケイ、他の初期エリアにも実力者はいるからな」
「あー、そういやそうか」
確かにそこはアルの言う通りだね。森林深部を拠点としている人でも面識がない人の方が遥かに多いし、日常的に立ち入る事のない他の初期エリアまで含めるとどれだけいるかは未知数だもんな。
プレイヤー名は知らないけど情報共有板でよく見かける種族の人とか、強い可能性は十分過ぎる程にある。それに風雷コンビみたいなのもいるしね。……風雷コンビは今回のトーナメント戦に参加してたりするんだろうか?
「あー、まぁトーナメント戦については今はいいや。とりあえず今はLv上げをやっていこう!」
「ケイさん、質問です!」
「ん? どうした、ハーレさん?」
「経験値増加のアイテムは使いますか!?」
「あー、あれか……」
ふむ、確かにLv上げをメインに考えるのであればあれらを使っていくのもありだよな。……追加の入手方法がどうなるかは不明だけど、使いどころとしては悪くはないけど今何個あったっけ?
えーと、今俺が持ってる個数は水草が1個、黒い欠片が1個か。……うーん、みんなも持ってる個数は大差ないはずだし、数としては心許ないな。
「使いたいとこだけど、数が少ないのが難点だな……」
「……確かにな。後々、俺らの中でLv差が出た時の差を埋める時に使いたいとこだ」
「あぅ……。言われてみればそうなのです……」
「今回は使わずに温存って事で良いんじゃないかな?」
「うん、私もサヤに賛成。もし使うなら『烏合の衆の足掻き』の条件が完全に判明した時に使うので良いんじゃない?」
お、言われてみれば確かにそうだね。テスト期間の間にその辺の正確な条件は判明してそうだし、条件次第では空白の称号を使って、再び『烏合の衆の足掻き』を取りつつ大量の経験値を狙うというのもありだな。
「俺はヨッシさんの案に賛成だけど、みんなはどう?」
「俺はそれで良いぜ」
「賛成なのさー!」
「私はもそれで良いかな?」
「私は言うまでもないね」
「よし、それじゃそういう方向性で! とりあえず今日は経験値増加のアイテムの使用はなしでいくぞ!」
みんなも頷いているから、今回のアイテム利用に関してはこれでいい。もっと気軽に沢山手に入るのであれば今日のLv上げでも使いたいけど、個数の問題でそれは断念だね。次の土日にでも光る方の進化記憶の結晶から手に入ったりしないもんかな……。うん、それを探すのもありだな。
あ、そういや岩山エリア……今は命名クエストが終わって『封熱の霊峰』だっけ? あそこに十六夜さんが見つけた光る方の進化記憶の結晶があるのは確定だったよ。……でもまぁボーナスタイムじゃなければ手に入っても俺らの中の1人しか手に入らないからなー。そこは完全に運次第か。
「とりあえず海面での戦闘がどんなもんか試してみるか。アル、移動をよろしく!」
「おうよ。あー、今回は鍛えたいスキルを中心に使っていくけど、厳しいと思ったら普段の戦法に切り替えてくぞ」
「了解なのさー!」
「不慣れな戦法で負けるのは流石に情けないもんね」
「……あはは、確かにそれは嫌かな」
「そりゃ確かに嫌だよなー」
アルは海水魔法と海水の操作、サヤとヨッシさんは電気の操作と電気魔法、俺はロブスターの連撃を鍛えて連鎖増強Ⅰの取得狙い、ハーレさんは風の操作と風魔法か。見事に全員が普段とは違う戦法だよなー。
俺が今日メインで使うのは普段はあまりしていない完全な近接攻撃だけど、オールラウンダーを目指しているんだからこの辺はしっかり鍛えないとね。飛行鎧で接近しつつ、ロブスターの跳ねる移動も駆使しながら連撃を叩き込んでいくか。
そうして海面へと近付いていく。さてと、アルに固定したままになってた飛行鎧の岩を形成し直し……いや、ここまで形状が違えば発動し直した方が楽だな。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 73/73 → 73/79
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 73/79 → 73/73(上限値使用:6)
よし、これで俺だけで飛べるように再発動は出来た! 近接で戦う訳だから極力被弾をしないように……あー、それ用の構成にしておくか。
<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します> 行動値 69/73(上限値使用:6)
<行動値を1消費して『グリースLv1』を発動します> 行動値 68/73(上限値使用:6)
とりあえずロブスターのハサミ部分にコケを増殖させて覆っておいて、その上から滑らせる為のグリースも発動っと。自分が攻撃する時はコケがない部分で叩くからこれで問題なし。あ、近接で物理攻撃なら魔力集中も使っとかないとな。
<行動値上限を3使用と魔力値6消費して『魔力集中Lv3』を発動します> 行動値 68/73 → 68/70(上限値使用:9): 魔力値 212/218 :効果時間 14分
これで準備完了っと。もうすぐ海面に辿り着くし、どこからでもかかってこいや、カモメの群れ!
「準備万端じゃねぇか、ケイ」
「まぁ普段とは違う事をやる訳だし、その辺はしっかり準備しないとな」
「確かにそれはそうかな」
「……そういえば、サヤ? 竜の小型化はいいの?」
「あ、忘れてたかな!? ヨッシ、ありがと。『上限発動指示:登録1』!」
「いえいえ、どういたしまして」
「あー、サヤでもそういうド忘れはあるんだな」
「……ケイに言われるのはなんとなく釈然としないかな……?」
「その扱いは流石に酷くない!?」
「あはは、今のは冗談かな!」
「いまいち冗談に聞こえなかったんだけど!?」
って、アルもヨッシさんもハーレさんも笑ってるし!? くっ、何気なく思った事を言ってみただけなのに……まぁ俺の方がド忘れ多い気がするから仕方ないか。
いや、仕方なくないよ!? みんなしてド忘れしてる事とか結構あるような気もする……。
「さて、お喋りはこれくらいにして……海面に出るぞ!」
「……ほいよ!」
まぁ基本的にいつもの軽口でしかないんだし、これくらいでみんなも俺も本気で怒ったりはしないよな。
さーて、そっちに気を取られ過ぎて適正Lvでの雑魚戦で苦戦するのは嫌だし、意識を切り替えて行きますか。
「少し距離はあるけど、カモメの群れはいるな。とりあえず後衛はサヤとヨッシさんに任せた」
「任されたかな! 『略:魔法砲撃』!」
「了解! 私はいつもの気もするけどね」
「ヨッシは使う魔法の属性が違うだけでいつも通りなのさー! ケイさん、私はー!?」
「ハーレさんはおれものロブスターの上に乗ってこい。近接で魔法や投擲ってのもたまには良いだろ」
「おー、それも良いねー! 了解なのさー!」
「ほう、確かにそういうのもありか。で、俺は全体的な補佐というか遊撃ってとこか」
「まぁそうなるな。んじゃ行くぞ!」
「「「「おー!」」」」
そうしてみんなの役割を大雑把に決め終わり、ハーレさんは俺のロブスターの背中の上に乗ってきた。
海面に出れば……俺らに向かって方向転換をしたカモメの群れが少し離れた場所にいるね。とりあえずLv上げの初戦はこのカモメの群れになりそうだ。
うーん、いつでも戦闘が開始出来る状態にはなったけど、思ったよりも群れの数が多いな。それにこのエリアに来たばかりの時に見た露骨に進化したカモメの個体は見当たらない。
海の新緑でやったように俺の獲物察知で判別してからでもいいけど……よし、俺とハーレさんでただ突っ込むだけじゃ飛行鎧を解除されてしまいそうだし、手っ取り早くこの手でいくか。
「ハーレさん、敵の識別を任せてもいいか?」
「それは問題ないのさー! でも結構数がいるけど、ケイさんだけで突っ込んで大丈夫ー!?」
「そこは考えてるって。アル、カモメの群れを海流の操作で押し流せるか?」
「雑魚は初手で一掃って訳か。おう、任せとけ」
「それでサヤとヨッシさんは電気魔法をその海流にぶっ放すって感じでよろしく」
「……あはは、海水の特徴を有効活用だね?」
「でも、効率は良さそうかな!」
「ま、そういう事で、作戦開始!」
「おうよ! 『海流の操作』!」
アルが周囲に大量にある海水を支配下に置き、空を飛ぶカモメの群れへと海流を作り出して呑み込んでいく。よし、群れは一般生物で構成されているからこれだけでもかなり違うは……ず?
「あれ、一般生物でも意外としぶとい……?」
「ケイさん、群れの特性は一般生物を少し強化させるのと、一般生物を強化させる為のスキルもあったはずだよ」
「あー、だからか!」
ふむふむ、そういう特徴があるのを忘れてた。なるほど、確かにただの一般生物であれば雑魚でしかないから専用の強化スキルがあって、そのおかげでアルの海流の操作だけでは死なない訳か。
まだまだ直接触れてない、知らないスキルとかもあるんだな。とりあえず今回はヨッシさんが知っててくれて良かったよ。まぁやる事は変わらないけどね。
「ハーレさん、行くぞ! サヤとヨッシさんはアルの海流の中にエレクトロボム!」
「分かったかな! 『略:エレクトロボム』!」
「あ、サヤ!?」
「サヤ、ちょっと待て!?」
「え、何で止めるのかな? ……あっ」
あー、今のは完全に俺の指示出しをミスった……。アルの海流に呑み込まれた一般生物のカモメは大半がポリゴンになって砕け散っていってる。
ここは上手くいったけど、海流が海へと繋がった状態だったから……一般生物の魚が浮かんできて、ポリゴンとなって砕け散っていった。
「……悪い、みんな。今のは完全に俺の判断ミス……」
「だよなー!?」
「はっ!? アルさん、下から何か攻撃なのさー!」
「ちっ、やっぱりか! ケイ、こっちは俺らで片付けとくから、カモメは任せるぞ! 『略:旋回』!」
「……さっきのは私のミスでもあるから、ここでそれは取り返すかな! 『略:ウィンドボム』!」
アルの咄嗟の判断で海流の操作を解除して、急旋回で海中からの攻撃を回避した。ふむ、襲いかかって来たのはサメだな。
下からアルに噛み付こうとしたけど躱されて、サヤがクマの腕に巻き付かせている小型化した竜の口から魔法砲撃で放たれたウィンドボムで吹き飛ばされているね。
「……よし、ハーレさん、俺らはカモメを仕留めに行くぞ」
「了解なのさー!」
手順を間違った攻撃を指示してしまって余計な敵を増やしてしまったけど、それでも群れのカモメの大半は始末出来た。……まだ生きているのもいるけど、黒いカーソルの敵の位置がすぐに分かるくらいには減っている!
<行動値を4消費して『連殴打Lv4』を発動します> 行動値 66/70(上限値使用:9)
それでも生き残って突撃してくるカモメを、飛行鎧で飛びながら真正面から殴り飛ばしていく。
ふー、魔力集中ありだし、ほぼ死にかけの一般生物のカモメなら強化されていても連撃の1撃ずつで仕留めれる範囲だな。逆に言えば、未成体での攻撃でも仕留めるには最低限これくらいは必要になるのか。……1体ずつは強くはなくても数が鬱陶しいな。
「群れのボスは多分あれなのさー! 『識別』!」
それでもなんとか群れの数も減ってきて、ハーレさんが識別をしてくれている。まぁ通常の雑魚敵だからそんなに変な特徴は無いとは思うけど、油断は禁物だな。……ついさっき思いっきり失敗したばっかだしね!
<行動値を4消費して『連殴打Lv4』を発動します> 行動値 62/70(上限値使用:9)
その間に突撃してくるカモメを殴り飛ばして……って、羽が飛んできた!? ここは……飛んできた羽はグリースで滑らせて回避っと。ふー、コケの増殖とグリースで滑らせる用意をしといて良かったよ。
「識別情報です! 『群斬刺カモメ』で未成体Lv23の瘴気強化種! 属性はなしで、特性は斬撃、刺突、群れなのさー!」
「物理型っぽいな。とりあえずハーレさん、ウィンドボムをぶち込んどいてくれ」
「了解です! 『魔法弾』『並列制御』『共生指示:登録1』『投擲』!」
まぁさっきの羽を飛ばしてくる攻撃で何となく想像は出来ていたけど……そういやさっきの羽は斬撃と刺突のどっちだ? 羽の根本の方が先になって飛んできてたから、刺突系のスキルのような気がする。
とりあえずハーレさんが魔法弾にして魔法を投げ込んでくれたし、俺が回避を受け持ちつつヨッシさんの魔法を主体で仕留めていくのが――
「ちっ、他の敵まで集まってきたか! サヤ、ヨッシさん、ちょっと無茶するぞ」
「うん、分かったかな!」
「了解!」
「『略:自己強化』『並列制御』『海流の操作』『根の操作』! 合図をしたら2人とも電気魔法を頼む!」
「わっ!? でもこれなら1体ずつ確実にいけるかな」
「まずは数を減らさないとね」
「サヤ、ヨッシさん、今だ!」
「分かったかな! 『略:エレクトロボム』!」
「了解! 『エレクトロボム』!」
ちょっとアル達の様子が気になったから見てみれば、アルが空中に再び海流を作り出していた。その海流に乗った上でサメを木の根で絡みつき、今度は海流が海から離れたの確認してからサヤとヨッシさんが電気魔法を叩き込んでいる。
流石にそれだけでは死んでないみたいだけど、結構な大ダメージは与えている……って、海の方に魚影がいくつかあるし!? やば、さっきのミスで思った以上に敵を集めてたっぽい?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます