第782話 ロブスターの強化へ


 とりあえずサヤの大型化した竜にみんなで乗ってエンのとこまで来たけど、あー、うん、ちょっと見ただけでこれは……。


「灰のサファリ同盟主催のトーナメント戦で、対戦の順番が近い人はエンの樹洞の中で待機をお願いします! まだ来てない人がいますので、自分の順番をご確認下さい!」

「そういやトーナメント表ってどこで見るんだ?」

「自分が参加登録をしてるやつならステータス画面から見れるぞ」

「お、そうなのか。あー、あった、あった……って、次俺じゃん!?」

「って、呼ばれてんのお前かい! はやく行ってこい!」

「あ、良かった、いた! まだ少し猶予があるけどそのままだと不戦敗になるので急いでー!」

「やっべ!? 不戦敗は流石に勘弁だぞ!」


 ラックさんを筆頭に灰のサファリ同盟の人が呼びかけているし、当たり前だけどトーナメント戦が初めての人ばっかだから、どういう手順で動けば良いのか混乱してる人も多いようである。

 これはかなり大変そうだけど、今の時点でお試しをやってみて正解って感じだね。


「こりゃラックさん達に声をかけるのは無理そうだな」

「邪魔になるのは嫌なのさー! という事で、手早く特訓に向かうのです!」

「あはは、まぁそれは確かにそうだよね」

「それじゃエンの葉っぱの方に行って、ミズキの森林まで転移かな?」

「だなー」


 そうして空中から混雑しているエンの地上部分は避けて移動していく。でもまぁ前よりも飛んでいる人も増えているから、空中でもそれなりに人はいるね。おー、大きく広げた岩の上に乗ってる大所帯もいるのか。


「おっ、『空白の称号』は情報ポイント1600だぞ!」

「報酬の一覧に出てきたか! って事は、1人辺りの参加情報ポイントを上限の200に設定した時で、8人参加のトーナメント戦が必要になるんだな」

「うーん、まぁ思ったよりは軽めだね?」

「3回戦まで行くから……総対戦数は7戦になって、3回勝てば手に入るか」

「八百長は無しにしても、検証勢で開催して取得していくのも可能な範囲か」

「昨日出てきた『烏合の衆の足掻き』とか『空白の称号』を使えって感じだもんな。……こりゃ今後に必要な事が増えるかもな」


 隣で大型なクマやシカ、小型のトカゲやトンボとかが混在してて正確な人数は分からないけど、どうやら『空白の称号』が何ポイントで手に入るかをチェックしていたっぽい。ふむふむ、トーナメント戦の開催とキャンセルを繰り返して情報の確認をしてたのか。

 この人達は検証勢か。うーん、やってる内容に興味はあるけど既に大人数だし、俺らは特訓をしておきたいからね。流石にこれから声をかけて混ざって検証っていうのはやめとこ。という事で、サクッとミズキの森林へと転移だな!


「おっし、とりあえず報告上げとくぜ」

「お願いねー! さて、『空白の称号』の最低限必要な情報ポイントは分かったし、『烏合の衆の足掻き』の再現の為に確保しとく?」

「そだな、やっとくか。多分『空白の称号』はいくら持ってても損じゃなさそうだしな」

「あ、『烏合の衆の足掻き』の追加の検証条件が上がってるよ! 『ビックリ情報箱』から!」

「お、マジか。って、あっ!? すぐそこに『グリーズ――」


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>


 あ、思いっきりシカの人が俺らを見てきて気付いたっぽいけど、その途中で転移になってしまった。……うん、まぁその……今のタイミングは悪気は無かったからね……?

 みんなもあのタイミングで俺らの方に気付くとは思ってなかったようで、普通に転移してきてるしさ。


「えっと、隣にいた人達は『烏合の衆の足掻き』の検証をしようとしてたのかな?」

「……そうっぽいな。まぁ今からはトーナメント戦をやるつもりみたいだったし……」

「……あはは、まぁ私達が混ざってもややこしくはなるもんね」

「そうなのさー! 多分、今からトーナメント戦に混ざっても時間的には中途半端になるだけなのです!」

「そりゃそうだなー」


 うん、元々検証の為に予定を合わせていたとかならともかく、今からだとサヤとヨッシさんにトーナメント戦は時間的に結構厳しいだろう。

 まぁ別に一緒にやろうと言われた訳ではないから、そこまで気にする必要もないんだけどね。言われても今はタイミングとして微妙なのも間違いないし……よし、あまり気にしない方向で意識を切り替えていこう! あの人達のあの感じは確実に手慣れていたし、大丈夫さ。


「ま、俺らは俺らでやる事をやろうぜ」

「了解です! 特訓開始なのさー!」

「とりあえずミズキのすぐ側だと他の人が来たら邪魔になるから、移動しないかな?」

「それもそうだね。普段より人は少なそうだから、少し移動するくらいで済みそう」

「それじゃ移動して、良い場所を見つけたら特訓開始って事で!」

「「「おー!」」」


 そうして大型化しているサヤの竜にみんなで乗って、特訓に良さそうな場所の捜索開始となった。さーて、土魔法はLv7になったから今日はロブスターのスキルを……って、そういや進化先が出て確認してないままじゃん!?


「あ、そういえばケイって土魔法はLv7になったって言ってたよね? 進化には何か変化はあったのかな?」

「……サヤ、今のは俺の声出てた?」

「え、そうじゃないけど……もしかしてちょうど考えてたとこなのかな?」

「あー、今回は単なる偶然か」

「そういう反応って事は、ケイさん、新しい進化先が出たのー!?」

「確かケイさんは水魔法Lv7が条件の進化先は出てたよね?」

「まだ確認出来てないけど、新しい進化先は出てるぞ」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「まぁね」

「それなら、今のうちに確認してたらどうかな?」

「あー、そだな。そうさせてもらうよ」

「わくわく!」


 ミズキのすぐ近くで空いてる場所があるかと思ってたけど、今ミズキの森林に来ている人達が考えている事は俺達と同じようで、地味に空いてないっぽいもんな。移動を担当してくれているサヤの厚意に甘えさせてもらって、今の内に新たな進化先をチェックしておこうっと。


 えーと、光ってる進化項目を開いてっと……。変異進化の『自在操作ゴケ』は前から出てたからスルーで、転生進化の方は……あー、新たに出たのは2つっぽいね。どれどれ、どんな内容になってるかな?



『土激魔ゴケ』

 進化階位:成熟体

 進化条件:未成体Lv30、『生成量増加Ⅰ・土』を取得、『土魔法Lv7』を取得、増強進化ポイント80、融合進化ポイント100、生存進化ポイント120


 土に非常に強い親和性を持ち、なおかつ魔法適正が相当に高いコケ。土との親和性が高い為、通常のコケよりも水分量の少ない砂地や乾燥した土にも適正がある。

 なお、この進化の場合は支配進化中であれば解除となる。



『泥激強魔ゴケ』

 進化階位:成熟体

 進化条件:未成体Lv30、『生成量増加Ⅰ・水』と『生成量増加Ⅰ・土』の2つを取得、『水魔法Lv7』と『土魔法Lv7』を取得、増強進化ポイント160、融合進化ポイント210、生存進化ポイント230


 水と土に極めてに強い親和性を持ち、なおかつ魔法適正が非常に高いコケ。非常に高い水と土に適正があり、通常のコケよりも水中や砂地に適正がある。

 なお、この進化の場合は支配進化中であれば解除となる。

 


 ふむふむ、この新たに出てきた『土激魔ゴケ』は前に出ていた『水激魔ゴケ』の土バージョンだな。土属性に特化する事でコケが苦手な乾燥している砂地とかへの適正が上がってるのか。まぁ悪くはないけど、もう1つのを見る限り却下。

 肝心なのはもう1つの新たなコケの進化先である『泥激強魔ゴケ』だな。上げにくい水魔法と土魔法Lv7が必須となってるだけあって、これは良い感じの進化先だね。支配進化の際にはベースとなる進化も選べるって話だから、もうコケの魔法型の進化先についてはこれで確定で良いだろう。


「ケイさん、どうー!?」

「コケの水属性と土属性の両方の強化版の進化先が出たぞ。とりあえずコケの魔法型の進化は確定で良いと思う」

「おー!? ケイさん、やったねー!」

「それじゃケイはしばらくはロブスターの方の強化がメインになるのかな?」

「まぁ、そうなるな」


 同調のままの進化する条件は操作特化の進化先が出ていれば良いという話ではある。……まぁ現時点ではそれは推測だけど、それでまだ同調のままの進化先が出ていないから、未達成の条件は他の所にありそうなんだよね。

 Lv以外の条件を達成すれば進化先は出てくるんだから、同調という特徴を考えれば足りていないのはロブスターの進化先の可能性が高い。……現状ではロブスターの進化先は何も出てないしね!


「話の腰を折って悪いんだけど、ここはどうかな?」

「あ、空いてるとこがあったか。まぁ俺の進化先のチェックも終わったし、ここでやっていきますか」

「特訓、開始なのさー!」

「「おー!」」


 さて、特訓にちょうどいい場所も見つけたし、俺はロブスターの進化先を出すという事で良いだろう。えーと、物理型の進化ならサヤとハーレさんに出ている進化先が参考になるよね。一応内容自体は大雑把には覚えてるけど、ちゃんと確認しておくか。


「サヤ、ハーレさん、確か連撃とチャージのバランスがいい進化先があったよな?」

「『多彩投擲リス』の事ー!?」

「私の場合は『多彩硬爪グマ』かな」

「そう、それ! 確かチャージ系応用スキルと連撃系応用スキルが2つ、それと凝縮破壊Ⅰと連鎖増強Ⅰの所持が条件だったよな?」

「えーと……うん、そうなのです!」

「……ハーレさん、今の思いっきり確認したよな?」

「あぅ、バレた!? 私はこれより上位があったらそれを狙いたいのさー!」

「あー、そういやそう言ってたっけ」


 まぁ選ぶつもりがあまり無い進化先であれば条件を忘れてても仕方ないか。それにいつでも確認出来る情報ではあるしね。あ、そういえばリスの方はともかく、クラゲの方はどうなってるんだろ?


「そういやハーレさん……だけじゃなくてサヤもか。クラゲと竜の進化先はどうなってる?」

「……あはは、まだ全然出てないかな」

「私もなのさー! だから私は先にクラゲを風属性の魔法型を目指すのです!」

「そこは私もハーレと同じで、雷属性の魔法型の竜が目標かな? あ、でもケイのを聞いてる感じだと魔法型は単独属性ならLv7が必須なのかな……?」

「ふっふっふ、そこは推測ではあるけど情報は確認済みなのです! 魔法型としては一番格下にはなるけど、Lv30になった時に持ってる属性に合わせたのが出るんじゃないかって推測です!」

「あ、そうなのかな?」

「……ちょっとそれは推測としては厳しくない?」

「でも単独属性で昇華と魔法Lv7が最低条件なのは厳しすぎなのです!」

「あー、そりゃ確かになー」


 元々Lvが上限に達した場合に標準で進化先が出てくるようにはなってるんだから、既に魔法型になっていればその強化先としての進化先が出てくる可能性は十分ある。というか、出てこないとメインでない方の育成は滅茶苦茶になるか。

 

「でもまぁ、まだLv30までは結構あるしな。Lv6の魔法を2つ狙ってみるか、Lv7の魔法を狙ってみるのもありかもよ?」

「……確かにそれはそうかな」

「はっ!? そういえばみんなで付与魔法を取っていくという話もしてたし、それを考えたらLv7を目指すのもありなのです!」

「別に狙って狙えない訳じゃないしね。ケイさんだって、昇華が2つに凝縮破壊Ⅰは持ってたよね?」

「まぁなー。この後から連鎖増強Ⅰを狙うつもりだしね」


 単独属性を狙ってLv7にするよりは、複数属性にしてLv6の魔法を2つにするという手はあるよね。俺も未成体Lv30までに連鎖増強Ⅰの取得が無理だとは思わないから、更にその上位を狙おうとしなければ何とか行けるはず。


「……それなら私は電気魔法Lv6を優先してから、ダメ元で火魔法も狙ってみようかな?」

「うん、サヤはそれでいいと思うよ」

「おー、サヤの竜は火も吹くのさー!」

「まぁサヤのメインはクマの方だから、無理そうなら無茶はするなよー」

「うん、それは分かってるかな。それでも鍛えられるだけでも鍛えておきたいしね」

「ま、やるからには目標は設定してやりたいもんか」


 サヤ自身がやる気になっているんだから、これ以上余計な事を言うのは野暮だな。ま、火と電気の魔法を使い分けて、近接のクマの補助にするのも戦略としてはありだしね。属性の相性としても相関関係にはない組み合わせだから、お互いに邪魔するって事もない。


 さて、それじゃ俺はロブスターの進化先を出す為に連鎖増強Ⅰを狙って、サヤとヨッシさんは電気魔法、ハーレさんは風魔法の特訓だな。

 うーん、ハーレさんのクラゲの魔法型の進化先を出すのが微妙なとこ……? まぁランクが落ちる感はあるけど、Lv30になれば最低限のは出そうではあるし大丈夫か。

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