第550話 成長体を探して


 ミズノコとは別の、フィールドボスの誕生の為に必要なもう1体の成長体を捜索中である。アルのクジラの背の上の木を中心にして前方をアル、左側をサヤ、右側をハーレさん、俺が後方という担当で平原を適当に探している。

 ヨッシさんはミズノコを氷の檻で捕獲中なのでそっちを最優先である。ま、今はサヤが少し離れているし、俺も後方のチェックはしてないんだけど。


 ちなみにアルの希望もあり、少し高めの3メートルちょっとくらいの空中を泳いでいる。もっと高度が欲しい時は水のカーペットや水流は欲しいけど、そうでなければもう充分な高さだね。


「ケイ、こっちはただのLv13の残滓のハリネズミかな! 物理型で刺突メイン!」

「こっちもLv14の残滓のサボテンです! 雷属性の魔法型ー!」

「あー、どっちも未成体の残滓か。……ケイ、残滓だから経験値は少ないがLv的にはそんなに離れていないし、倒すか?」

「だな。最悪の場合だとフィールドボスの誕生も出来ないし、倒せる分は倒しとくか。サヤはそれを連れてきて、ハーレさんは狙撃で引き寄せてくれ」

「分かったかな! 『自己強化』『爪刃乱舞』!」

「了解です! 『魔力集中』『狙撃』!」


 よし、サヤとハーレさんは即座に動き出してくれた。俺の獲物察知で見つけた2体の敵を担当方向の2人に確認は任せたけど、どっちも残滓だったのは残念だね。さてと、俺は俺で生成したままの水のカーペットに乗って、アルの下側へと回り込もう。Lvが下の残滓であれば脅威じゃないけど、一応見ておかないとね。


 ふむふむ、サヤとハーレさんが簡潔にまとめてくれた識別情報の通りだな。ハリネズミの方は竜に乗って俺らの方に戻ってきているサヤに、背中の針を伸ばす事で攻撃を仕掛けている。

 一方、雷属性のサボテンは表面に電気が走っているので、雷纏いを使用中ってとこか。あ、電気の球を撃ってきたけど、ハーレさんが迎撃したっぽい。さてと、2体同時とはいえ大して強くはないだろうからサクッと終わらせるか。


「ヨッシさんは……ミズノコを捕獲してるから無理か」

「ま、そうなるね」

「流石にこれは仕方ないか。よし、俺が砂の操作で嫌がらせをするから、アルはその間に捕縛は任せた。まだ距離があるからもう少し引きつけて、合図をしたら即座に発動してくれ」

「おう、任せとけ!」


 今はまだハリネズミもサボテンも、少し距離がある。サヤとハーレさんだけに任せても倒せるだろうけど、ここはサクッと仕留めた方が早いもんな。……よし、もう少し。


「サヤ、ハーレさん、素早く終わらせたいからアルが捕獲したら応用スキルでの連撃! それで仕留めきれなきゃ俺が追撃する!」

「分かったかな!」

「了解です!」


 よし、同時に巻き込んで嫌がらせ出来そうな距離に入ってきた。砂の操作で嫌がらせをしていくのは良いけど、出来るだけサヤとハーレさんの邪魔にならないように気をつけないとね。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 53/69(上限値使用:3): 魔力値 200/204

<行動値を19消費して『砂の操作Lv3』を発動します>  行動値 34/69(上限値使用:3)


 まずはハリネズミとサボテンに砂嵐をぶつけるような感じにして砂を叩きつけていく。ふむ、ダメージはそれほどでもないけど、嫌がらせとしては効果的みたいだな。この感じならヨッシさんの氷雪の操作でも似たような事が出来そうだ。


「アル、今だ!」

「おうよ! 『並列制御』『多根縛槍』『多根縛槍』!」


 そしてその砂の妨害の最中に、まだ発動の遅いアルの根を槍状にして襲いかかっていく。よし、どっちにも上手く当たって根が絡みついて拘束していった。ふむふむ、もう少しアルの攻撃速度が欲しいとこだけど、この連携は実用性ありっと。


「あ、ハリネズミの針に銀光! でも、邪魔はさせないかな! 『爪刃双閃舞』!」

「私もいっくよー! 『連速投擲』!」


 そこからサヤとハーレさんの連撃が次々と叩き込まれていく。……あ、サヤの銀光の強弱の変化が早めだから、Lv3で発動したね。凄まじい勢いでハリネズミの砂に当たって強くなっていた銀光を放つ針が斬り落とされて、本体も斬り刻まれていった。

 ふむ、今回はサヤが潰しにいってくれたけど、砂の操作も応用連撃スキルとは相性が良くないか。まぁどこに当てても連撃にカウント出来るもんなー。


「おー!? サヤの威力がとんでもないのさー!?」

「サヤの方には追撃は要らなさそうだな。って事で、サボテンを仕留める!」

「ケイさん、お願いします!」


 決してハーレさんの威力が低い訳ではないし、既に半分以上のHPは削っている。この場合、サヤの攻撃の威力が高過ぎるというべきか。……さてと、俺は俺で少し試したい事もあるからやってみるか。


「あ、ケイ、ちょっと待ったかな!」

「……へ? あ、ハリネズミ倒したのにまだ連撃が残ってんの!?」

「そういうこと、かな!」


 ハリネズミのHPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていく中、竜に乗ったままのサヤが最大限まで眩くなった銀光を放つ爪でサボテンを切り裂いていた。

 あ、でも流石に少しHPが残ったか。砂の操作では削り切るには威力が微妙なので、こっちで行くか。


<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します>  行動値 34/69 → 34/68(上限値使用:4)

<行動値4と魔力値12消費して『土魔法Lv4:アースボム』を発動します> 行動値 30/68(上限値使用:): 魔力値 188/204


 魔法砲撃の効果をかけたアースボムを右のハサミから撃ち出してサボテンにトドメだ! ……よし、これでサボテンも撃破完了! うん、しっかりとポリゴンになって砕け散っていったね。


<ケイがLv16に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイ2ndがLv16に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>


 ありゃ? この戦闘でLvが上がっちゃったぞ。……まぁ俺に関してはそれでも特には問題ないんだけど、ヨッシさんとハーレさんのLvはどうなった?


「今ので俺はLv16になったんだけど、ヨッシさんとハーレさんはどうだ?」

「うーん、まだもうちょっとかかるね。残滓だけだと今のと同じくらいのがもう7〜8体くらいは必要そう?」

「私もそんな感じです!」

「あー、そんなとこなのか」


 なるほど、俺の方がちょっと経験値が多かったりもしたんだね。あー、もしかしたら昨日の羅刹とイブキとの勝負の経験値が割と多かったのかも。……そういやPTを組んでても戦闘してない時の経験値ってどうなるんだ?


「アル、PT組んでて一部の人が非戦闘時の時の経験値ってどうなるか知ってる?」

「ん? それなら経験値自体はもらえるが、かなり量が減るぞ。Lvが離れれば離れるほど、減っていくって話だ」

「あ、やっぱりそういう仕様か」

「ケイとヨッシさんとハーレさんの経験値の差を気にしてんだろ? 多分昨日の羅刹とイブキと勝負の影響だと思うぜ」

「ですよねー」


 まぁ経験値が減少してでももらえるという事自体はありがたい仕様だな。Lvが離れれば減るとは言っても、幼生体と未成体ではLv1を上げるのに必要な経験値量もかなり違うからね。うん、紅焔さんが羽を得る為にコウモリのパワーレベリングをしてたようだし、仕様上はそういう事も可能という事だ。


「よし、経験値のズレも判明したし、フィールドボスを最優先にはするけど見つけたヤツは全部仕留めていくぞー! それでLv16まで行ったら、今日はフィールドボスは諦めるって事で!」

「ま、その場合は仕方ねぇな」

「そればっかりは運次第かな?」

「Lv20の成長体が無事に見つかれば良いけどね」

「意地でも見つけるのさー! という事で、ケイさん、獲物察知をお願いします!」

「ほいよっと」


 こういう時には便利なんだよな、獲物察知。擬態中とかだと見つけられないけども、敵の位置が分かるスキルというのは便利なもんだよね。さー、それじゃ次の獲物を探していこうじゃないか!


<行動値を3消費して『獲物察知Lv3』を発動します>  行動値 27/69(上限値使用:3)

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『獲物察知Lv3』が『獲物察知Lv4』になりました>


 お、獲物察知のLvが4になったか。今日は色んなスキルのLvが上がりまくってるからいい感じだな。明日もハーレさんはアルバイトだから、明日もスキルを鍛える事にはなるけどね。ふむ、明日は全くの手付かずになってるスキルを強化していこうかな。うん、そうしよう。


 それはそうとして、表示されている矢印はっと。うーん、青い矢印が現時点から西に少し離れた所に10本くらいあるけど、これはスルーでいいや。黒い矢印は……何本かあるけど、方向がバラバラな上にどれも遠いな。


「ケイ、どうかな?」

「んー、西の方に青の群集の集団がいる」

「それはスルーだな。流石に今は交流してる時間はないぞ」

「分かってるって。それで、黒いのは方向がバラバラ。さっきみたいに手分けして呼び寄せるのは微妙かも?」

「……なるほどな。いっそ、樹液分泌で敵を集めるか?」

「それもありといえばありだけど、最終手段だなー。とりあえずどこかに絞って、成長体を探そう」

「私はケイに賛成かな」

「そだね。アルさんのその案も悪くはないけど、折角ならアルさんの『風属性強化Ⅰ』も狙っておきたいもんね」

「そうともさー!」

「……あんがとよ。ま、そういう事なら可能な限り頑張って探すか!」

「「「「おー!」」」」


 とりあえずそんな感じで成長体を探しつつ、見つけた敵を倒していく事になった。とはいっても、どの黒い矢印を目指していくべきか……。既に捕獲済みのヨッシさん以外のみんなでバラバラに探すというのもありだけど、俺の獲物察知は現状では必須である。みんなでまとまって動いた方がいいか? ……よし、決めた!


「俺の獲物察知で見つけた方向を教えるから、1人ずつ順番に選んでいこう。もう誰かの勘任せって事で」

「おー! それはいいねー!」

「そういう事ならサヤが1番目にやってみるのが良いんじゃない?」

「そうだな。サヤは何だかんだで観察力や勘も鋭いからな」

「え、え? 私がまず選ぶのかな!? そんなに期待出来るような勘とかないよ?」


 いやいや、ご謙遜をしなくていいのですよ。なんだかんだでライさんの事はよく見つけるし、海では擬態していたタツノオトシゴに違和感を覚えて見破ってたしね。俺らの中ではそういう観察力が鋭いのはサヤとハーレさんだもんな。

 ダメ元でもいいから、そこに頼ってみようじゃないか! 何となくだけど、意外とあっさりと見つけてくれそうな気もしてるんだよな。


「サヤ、ダメ元でもいいから、選んでみてくれるか?」

「……ダメ元で良いなら、分かったかな」

「よし、それじゃ決まり! 駄目だったら、そこで見つけた敵を倒した後にハーレさんの番な?」

「次は私なんだー!?」

「という事で、見つけた方向を伝えていくぞー!」

「うん、分かったかな」

「あれー!? 私はスルーなのー!?」

「あはは、ハーレも頑張ってね」

「ヨッシが他人事だー!?」


 2番目にハーレさんを指定したけども、とりあえず今はサヤの勘に任せるのが先だ。ま、駄目なら駄目で、アルの提案した最終手段を使えば良いだけだしね。集め過ぎて大変になるかもしれないというリスクはあるけど、手段自体はあるから問題なし。


 それからさっき獲物察知を発動した時の矢印の方向と距離をサヤに伝えていく。黒い矢印は7本あったけど、サヤは果たしてどれを選ぶかな?


「……えっと、それじゃあっちの林の方かな」

「ほいよっと。アル、林の方に移動を頼む」

「おう、任せとけ」


 サヤが選んだのは少し離れた所にある小規模な林であった。よし、とりあえず目的地はあそこに決定だね。少なくとも成長体はいなくても未成体の何かはいるのは確定済み。


「成長体はいるかなー!?」

「それは行ってみないとね」

「適当に決めただけだから、それほど期待はしないでかな……」

「ま、ダメ元だし、いなくても責めたりなんかしないって。気楽に行こう、気楽に」

「……それもそうかな?」

「これもお宝探し感覚でいいのさー!」


 流石にこんな内容で責めるなんて事は欠片もする気はないしね。ハーレさんの言うようにお宝探し感覚で気楽にやれば良いだけである。

 ひとまずアルもその林に向けて移動を開始している。さー、どんな敵がいるかなー? 出来ればサヤの勘が当たって欲しいとこではあるけどね。


 


【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調強魔ゴケ

 所属:灰の群集



 レベル 15 → 16

 進化階位:未成体・同調強魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化


 群体数 450/6150 → 450/6300

 魔力値 188/204 → 188/206

 行動値 27/72 → 27/73


 攻撃 74 → 75

 防御 111 → 114

 俊敏 83 → 85

 知識 164 → 169

 器用 179 → 185

 魔力 235 → 243




 名前:ケイ2nd

 種族:同調打撃ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 15 → 16

 進化階位:未成体・同調打撃種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、堅牢、同調


 HP 7050/7050 → 7050/7250

 魔力値 95/95 → 95/96

 行動値 62/62 → 62/63


 攻撃 232 → 240

 防御 216 → 223

 俊敏 178 → 184

 知識 69 → 70

 器用 78 → 80

 魔力 41 → 42

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