第217話 火によって得たもの
光の操作は少し実験してみたけど、あれはレンズが要らないだけで光を収束させ、この辺を火事にした現象と同じ事が出来ただけだった。Lvが上がればレーザーみたいに出来そうだけど。
ちなみに燃えた時に火を操作して何とかしようとしてみたけど、火の操作じゃ範囲が追いつかず、炎の操作だとまだ制御が甘過ぎて延焼させる可能性のほうが高いというか、実際に延焼しかけた!
光の操作も炎の操作も燃える物の少ない場所じゃないと応用スキルという事もあって周囲への影響が凄まじい。まぁ隣の荒野に行けば良いんだけど、急ぐ訳でもないのでそれらは後回し。
目の前には面白い光景が広がっているんだから、これを放り出してスキルの実験をするのも勿体無いしね! 今はみんなで火を囲んでいる。俺達のPTが主に魚介類を、荒野エリアの人達は肉を出し合って調理実験を行っていた。
「魚だ! 肉だ! バーベキューだー!」
「だからって何でこうなった!?」
ただし、見た目はかなり混沌な事になっている。まず火の中心にいるのがサボテンの人こと、シンさんだ。そしてその全身の棘のあらゆる所に魚や肉が刺さっている。
「なんでってシンが『俺の棘に刺したら焼きやすいんじゃないか?』って言ったからじゃん」
「そうそう。『ダメージないから、俺ごと燃やしたら早いんじゃないか?』って言ったのもシンだろ?」
「言ったけど! 確かに言ったけど、ホントに実行すんのかよ!?」
「「「「「「「そりゃ勿論!」」」」」」」
「異口同音過ぎるわ!?」
「口は禍の元だ。シン、自分の発言に責任を持とうな?」
「あーもう! やるなら好きにやれ!」
「「「「「「「おー!」」」」」」」
「やる気というより、殺る気を感じるのは気のせいか!?」
という一幕があり、今はそれぞれ取得した火の操作で肉や魚を焼き始めて結構経った頃である。なんというか、荒野エリアの人達は独特な一体感があって楽しそうだ。
「おーい、追加の枯れ木と草を持ってきたぞ」
「何これ、何事ー!?」
「お、シン焼いてんの? 俺も混ぜて」
「参加希望者は食材になりそうなアイテムか、薪代わりになりそうな物を持ってこい!」
「えー、参加資格いるのかよ」
「単純に人数が増えて足りないんだよ!」
「わー!? 聞いてた以上にカオスな事になってる!?」
「ちょっと無理してでも荒野を突っ切って来た価値はあったな」
「……なんか凄い事になってきたな?」
「魚や肉が刺さったサボテンに、それを焼く宙に浮く火だもんね。凄い光景かな?」
「どう見てもこれは珍光景だよね!? 是非ともスクショを撮っておかないと!」
「まぁ俺らが持ってきた要件とはいえ、これは想像つかなかったな」
普通に焚き火をして、まぁヨッシさんが調理をする位はあるかなとは思っていたけどここまで大規模に膨れ上がるとは思ってなかったな。騒ぎを聞きつけてどんどん人も増えてきてるし、他のエリアのプレイヤーまでやってきているみたいだし。
「あ、この肉は焼き過ぎになるから火を遠ざけて! この魚は離し過ぎ! シンさん、この棘の向きを変えられる? これはまだ早い!」
そしてヨッシさんが火加減の指導をやっていた。ウニの棘を1本だけ伸ばして、指揮棒代わりにして火加減の様子を見ていっている。大体ヨッシさんの指示通りにしていれば、焼いた魚や肉は固定値回復から割合回復へと変化した回復アイテムへと変わっていた。まぁ元々料理が得意な人も普通に結構いるようなので、そういう人は普通に自力で上手く焼いている。
気が付けばいつの間にか焼かれるサボテンの人も何人か増えてるし、焚き火の場所もどんどん増えていってる。まぁ広いし、平坦だし、燃やすものさえあれば場所の問題はなさそうだね。……問題があるとすれば……。
「また敵が来たぞー!」
「よし、行くぞアル!」
「おうよ!」
この大人数での不思議なバーベキューに誘き寄せられるのか、単純に焼ける前の生肉や生魚のアイテム効果なのかは分からないけれど、群れをなして襲いかかってくる黒の暴走種や残滓が問題だろう。……元々が草食動物なのに肉に反応するのは黒の暴走種だからだろうか。
ウマとか草食なら群れで多くても10体くらいではあるけど、それでも1PTで6人という事を考えれば多い敵である。ライオンとかヒョウになれば2〜3体ずつ。ゾウやキリンなら1体ずつ。……定期的に倒さなければどうなるかはちょっと考えたくない。
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 42/43(上限値使用:2): 魔力値 83/86
<行動値を19消費して『水流の操作Lv3』を発動します> 行動値 23/43(上限値使用:2)
「よし、自己強化は切れたがまた魔力集中が使えるな。『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『頭突き・土』!」
まぁ数がいるとはいえ、所詮はボスではないただの一般の敵。しかもオリジナルは全然いなくて残滓ばかりである。……残滓の活動が活発化しているような気もする。
とりあえず敵が来た時は俺の水流の操作でアルを加速させての突撃をする。魔力集中ありのクジラの頭突きにそう簡単に耐えられる筈もなく、あっさりと蹴散らしていた。
<ケイがLv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:キズナ』に譲渡されます>
<ケイ2ndがLv15に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント1、融合進化ポイント1、生存進化ポイント1獲得しました>
よし、またLvが上がった。ここに来た時がLv12だったから結構な速度でのLvの上がり方だね。進化ポイントも今得たのも含めて各種3ずつ入手。残滓ばかりとはいえ、数を倒せば充分な経験値である。ちゃんと倒しきれるだけの殲滅力さえあればこうやって誘き寄せるのはLv上げに最適みたいだね。倒せなかったら悲惨だろうけど。
そんな風にLv上げもしていた事や、みんなで火の番を交代しながらやったので、サヤのクマとタツノオトシゴ、アルの木とクジラ、ハーレさんのクラゲ、そして俺のコケとロブスターでは称号『見張りビギナー』と『奇襲防御Ⅰ』は取得済みとなっている。水流の操作もLv3になったしね。
俺以外は『見張りビギナー』で『火の操作』と『火魔法』も取得した。ヨッシさんは『調理ビギナー』で先に『調理上昇Ⅰ』と『火の操作』と『火魔法』も取得していたし、全員取れたかな。……というか、俺がLv15ならそろそろハーレさんとヨッシさんはLv上限で進化なんじゃないか?
「やったー! クラゲもLv20突破ー!」
「あ、私もウニはLv20になったね」
「ヨッシ、ハーレ、おめでとう!」
「やっぱりか。2人とも進化候補はどんな感じ?」
「確認するからちょっと待ってねー!」
「私も」
そしてハーレさんとヨッシさんはそれぞれの進化先を確認していく。さてどんな進化先が出ているのだろう? ハーレさんが今は『風クラゲ』で、ヨッシさんが『伸縮ウニ』だったはず。
「私は変異進化で『風帽クラゲ』いうのが出てるね! ぎりぎりポイントは足りるし、これにする!」
「そのクラゲって帽子みたいなのかな?」
「どうだろ!? でも、見た目はそれっぽい感じに期待!」
とりあえずハーレさんは『風帽クラゲ』で決定のようだね。さて、ヨッシさんの方はどうだろうか?
「ヨッシはどうー!?」
「うーん、未成体の上限で合成進化させるつもりだから、他に選択肢も出てないしポイントに余裕ある訳でもないから単純な強化になるけどこれでいっか。『硬伸縮ウニ』にするよ」
「ヨッシがそう決めたなら、それでいいんじゃないかな?」
「うん、まぁね。でも転生進化だから何処かで死んで来ないといけないね」
「常闇の洞窟の未成体で良いんじゃないか? 海水のとこなら時間もかからないだろ」
「そだね。ちょっと行ってくる。あ、ここにリスポーン位置設定していくね」
「ヨッシ、いってらっしゃーい!」
そしてヨッシさんは一度、群集拠点種のとこまで戻っていった。まぁここにリスポーン位置設定をしていったので進化が終われば戻ってくるだろう。……っていうか、ウニのリスポーン位置設定って棘を突き刺していくんだ。まぁウニの住処と言われてもピンとこないし、俺の群体分離と似たような感じなのかもしれないね。
「それじゃ、クラゲのハーレ! これより進化します!」
「お、進化か!」
「ここでやるって事は変異進化か!?」
「草原のど真ん中でバーベキューしながら、クラゲの進化を見る事になるとは思わなかったぞ!」
荒野エリアの人や他のエリアの人達の注目を受けながらハーレさんの進化が始まった。ハーレさんの周囲を光の膜が覆っていき、卵状になっていく。そしてしばらく待った後に光の膜が砕け散り、進化を終えたハーレさんの姿が現れた。
おー、さっきまでの傘があってその下から触手が何本も生えている一般的なイメージのクラゲとは少し違ってなんというか傘の部分が球の下部を3〜4割くらい切り取ったような形状をしている。そしてその傘の中から触手が何本か生えている感じだな。
これは確かに帽子と言われれば帽子かもしれない。大きさ的には30センチくらいかな?
「『伸縮浮遊種』になったよ! 属性は『風』、特性は『浮遊』『伸縮』『陸地適応』の3つだー!」
「へぇ、クラゲってそんな形のもいるんだな」
「あれ? なんか柔らかいヘルメットっぽい感じだねー」
「あ、確かにそんな感じ。でもニット帽の方が近い気もする」
「あー言われて見ればそうも見えるな」
「リアルにいるクラゲのオワンクラゲってのに似てるかな」
「へー、そんなのいるのか」
荒野の人達が色々言ってるけど、確かにヘルメットやニット帽っぽいと言われればそうも見えるな。名前的にも帽子をイメージした感じなんだろうね。っていうか、似た感じのがリアルにもいるんだな。
そうして少し騒いでいると、ヨッシさんのリスポーン位置と棘から、本体が生えてきた。……うん、ゲーム的な不思議演出。まぁ今更といえば今更だけど。
「よし、進化完了っと」
「お、ヨッシさんお帰り」
「ヨッシ、おかえりー!」
「ただいま。あ、ハーレも進化は終わったんだね」
見た目は大して変わったように見えないけども、ヨッシさんも進化して戻ってきた。ヨッシさんの棘は自由に伸縮するので大きさの変化が分かりにくいけど、少し硬質になったような気がしないでもない……?
「あはは、ケイさん。そんなに見ても見た目は大して変わらないと思うよ」
「あ、やっぱり?」
「『硬化伸縮種』になったけど、属性は『なし』、特性も『堅牢』『伸縮』で変化はないからね」
「えー!? 変化なしなの!?」
「ウニは私的にはおまけだしね。意外と面白かったりはするけどさ。……問題は共生進化が出来るかどうかかな」
「……確かにハチとウニの共生進化は想像出来ないな」
「駄目なら駄目で個別に育てて、合成進化させるけどね」
元々ヨッシさんはランダムにしてウニになった訳だしね。相性については考えていなかったという事だ。まぁそれが悪い訳でもないけど、どうなるのかは気になる所である。
「それじゃ、ヨッシ! 共生進化をしに行こうー!」
「……そうだね。考えるより試してみる方が早いね。それなら、一度荒野エリアに戻ってからハチを荒野エリアまで持ってくれば良いかな」
「私はリスを持ってくればいいんだよね!」
「なら俺達も少しだけ荒野エリアに戻るか」
「それが良いかな? みんなで待ってるよ」
「おっし、それじゃ荒野エリアに戻りますか」
ヨッシさんとハーレさんが共生進化を行う為に、一度同じエリアに移す必要があるからね。群集拠点種まで帰還の実で戻ってもいいんだろうけど、その後にここまで戻ってくるのも面倒だ。
すぐ近くの切り替え場所まで戻って土ガメの所でウニとクラゲをログアウトさせれば、共生進化後にはどちらの場所からスタートするかは選べるので、それならすぐに戻って来れる。
という事で、土ガメの所まで戻って共生進化を終えてくるのを待とうじゃないか。……荒野エリアの人達は着いてくるかと思ったけど、色々とみんな手が離せない状態のようで着いてくる人はほんの少しだった。まぁそれでも少しは着いてくる人もいたけどもね。
【ステータス】
名前:ケイ2nd
種族:殴りロブスター
所属:灰の群集
レベル 12 → 15
進化階位:成長体・殴打種
属性:なし
特性:打撃、堅牢
HP 3050/3050 → 3050/3500
魔力値 21/21 → 21/24
行動値 32/32 → 32/35
攻撃 57 → 69
防御 55 → 67
俊敏 42 → 51
知識 26 → 32
器用 26 → 32
魔力 14 → 17
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