第81話 地図作成のランキング報酬


 氷狼の討伐も終わったので、少し場所を移す。既に残滓になる氷狼を討伐しようと順番待ちをしている人達もいるから邪魔にならない位置にね。それにしても結構な人数集まってるな。5〜6PT分くらいはいるんじゃないか?


「いやー見応えあったな!」

「確かにな。でもあそこまで一方的だとは……。流石、最強のヒノノコを倒しただけの事はある」

「大体の攻撃パターンの変化後に即座に潰されてたけど、ああすれば楽に攻略出来るんだな」

「それもなんだけど、色々見覚えのないスキルが多々あった気も……」

「おい、情報出し渋ってないで教えろよー!」

「おいおい、コケの人達がどれだけ今まで情報公開してくれてると思ってんだよ!」

「おい、今のヘビのヤツ、名乗れよ。てめぇ、情報の検証に手間かかるの分かってて言ってんだろうな? てめぇ自身が情報共有板に情報流した事あんのか? ヘビって見たことねぇがな?」

「げっ、ベスタ!?」

「好意で情報公開してもらってんのを当たり前だとか思ってんじゃねぇよ!」

「おい、ベスタ落ち着けって!?」


 ちょっと沈静化させるのに時間がかかったのは仕方ないだろう。いや、今回は出し渋るも何も特訓開始して今までずっと情報共有板を見てすらいなかったから……。公開されて当たり前みたいな言い方をされるとイラッとしたし、ベスタが怒る気持ちもわかるんだけどな。特にヨッシさんの毒魔法とか戦闘中に取得したっぽいし。……俺も毒魔法は気になるけど。


 とりあえず、ヘビの人は周りの人から怒られて今は隅の方で凹んでいる。まぁ自業自得と言ったとこだろう。うん、個人的にリアルで苦手なヘビだけど、苦手生物フィルタでデフォルメされてるから何とか大丈夫だな。……リアルな風景にデフォルメされた状態の生物は、周りからは浮いて見えるけど苦手なもんは苦手だし仕方ない。


「あーもう、根本的にどのスキルだって種族的に取得不可でさえなけりゃ、時間かければ取得出来るようになってんだから、それを忘れんなよ!」

「まぁそうだよな。コケの人の情報のお陰で他の群集より魔法取得率は高いらしいし」

「え、それホントかよ!?」

「掲示板でそんな話題が出てたぞ」

「ついでに言えば青の群集は悲惨っぽいぜ?」


 集まってる人達がそれぞれ思い思いに喋っている。やっぱりこの状況ではヨッシさんに毒の操作とか毒魔法の事は聞けそうにないな。まぁすぐに聞かなきゃいけない訳じゃないし後でもいいか。


<群集クエスト《地図の作成・灰の群集》のエリアボスが撃破されました>

<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』にて『不動桜』が撃破されました>

<初回撃破により『不動桜』が残滓となり弱体化します>

<群集クエスト《地図の作成・灰の群集:『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』》がクリアされました>

<群集クエスト《地図の作成・灰の群集》のクリア率:1/5>


 お、桜の木の方も討伐終わったか! 不動桜って事は桜の木は不動種だったんだな。まだ多くのプレイヤー達は騒いでいる。ベスタもあっちに加わってるし、今はPT内で大人しくしておくか。

 1つのPTは順番待ちに勝ったのか、残滓になる氷狼の出現を待ち構えていたりもする。何はともあれ、このエリアでの群集クエストは完全クリアだ! 他のエリアはそこのエリアの人に任せよう。


「このエリアの地図作成の群集クエストはこれで終わりか」

「これはまた演出あるかなー?」

「ランキングはどうなったかな?」

「私達はボスを2体倒した訳だし、ケイさんは2位確定じゃない?」

「あ、ボス討伐のポイント次第だけどそうなるのか」


 あんまりランキングの事は考えてなかったけど、昨日確認した時には既に俺は2位だった。ベスタを抜くのは差があり過ぎたから無理だろうけど2位確定は行けたかもしれない。よし、とりあえず確認しとこう。なんか報酬もあるって言ってたしな。さてとランキング表示っと。



群集クエスト《地図の作成・灰の群集》

『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』貢献度ランキング


 踏破率 100%、特殊地形 1/1、ボス討伐 4/4


 総合貢献度ランキング


 1位 ベスタ   24P 

 2位 ケイ    13P 

 3位 カステラ  9P 

 4位 ライル   7P

 4位 ヨッシ   7P 



 踏破率ランキング


 1位 ベスタ   踏破率13%(13P)

 2位 ケイ    踏破率8%(8P)

 3位 カステラ  踏破率7%(7P)

 4位 甘口辛子  踏破率6%(6P)

 5位 ライル   踏破率5%(5P)



 ボス討伐貢献度ランキング


 1位 ベスタ    『沼ガメ』単独討伐 10P 『氷狼』PT討伐 1P

 2位 ケイ     『ヒノノコ』PT討伐 4P 『氷狼』PT討伐 1P

 2位 サヤ     『ヒノノコ』PT討伐 4P 『氷狼』PT討伐 1P

 2位 ヨッシ    『ヒノノコ』PT討伐 4P 『氷狼』PT討伐 1P

 2位 ハーレ    『ヒノノコ』PT討伐 4P 『氷狼』PT討伐 1P

 2位 アルマース  『ヒノノコ』PT討伐 4P 『氷狼』PT討伐 1P

 7位 ライル    『不動桜』PT討伐 2P

 7位 カステラ   『不動桜』PT討伐 2P

 7位 紅焔     『不動桜』PT討伐 2P


 お、やった。2位確定だ。ヨッシさんも同点で4位に上がってきてる!

 ……地味にベスタの踏破率が上がってるって事は、特殊地形を即座に埋めて回ったな!? いや、順位変動には影響なさそうだし別に良いか。ボス討伐ランキングはこれは討伐した人が全員表示かな。個別の詳細貢献度とかは特になしで倒したPTにいるかどうかが重要と。ヒノノコの討伐ポイント高めだな。そしてソロ討伐が最もポイントが高いと……。っていうかボス討伐は同点順位が多い……まぁ同じPTで2体倒せばそうなるか。


「ケイさん、2位おめでとう! ヨッシ、4位おめでとうー!」

「おう、ありがと!」

「ハーレ、ありがとね! まさかここで順位上がってるとは思わなかったよ」

「ヨッシさんは序盤に踏破数を少し稼いでたしな。それにしても流石にボスだけでは上位になれるようにはなってないな。両方やってこそか」

「そうみたいだね。そういえば報酬ってなんなんだろうね?」

「なんだろな? ちょっと楽しみ」


 一体何をくれるんだろうか? すっげぇ気になる。あ、グレイが現れてきた。って事はここでも演出有りか! よっしゃ、報酬寄越せー!


『たった今、情報が入った。5ヶ所に設定した安全地帯のうち、1ヶ所のマップの作成が完了したとの事だ。他の4ヶ所はまだ時間がかかりそうだが、ひとまずご苦労さまと言っておこう』


 この言い方だとエリア毎にランキングが分かれてるし、別々の判定になってるんだな。まぁ『仲間の呼び声』を使わなければまだ他のエリアには行けないんだから当然か。


『予想外の黒の暴走種の出現もあり、苦労をかけただろう。まずは強敵となった数名の同胞を解放した者への褒美を与えよう。リストを送るので好きなモノを選ぶと良い』


 お、まずはボス戦の報酬か。選択式とはいいね、何があるかな? 報酬リストが目の前に表示されたので確認していこう。ほうほう、各種進化ポイントの詰め合わせ、回復用果物の詰め合わせ、採集物の詰め合わせなど。うん、基本的にゲーム内で普通に手に入る物だな。よし、ここはポイントの詰め合わせにしておこう。


<群集クエスト報酬により、増強進化ポイント20、融合進化ポイント20、生存進化ポイント20獲得しました>


 各ポイントが20ポイントは有り難いね。さて、同順位のみんなは何を選んだのだろうか?


「みんな、何にした?」

「ここはポイントの詰め合わせ一択かな」

「確かにね。各20ポイントは大きいね」

「私もポイントにしたよー! 後で何かスキル取ろうかな!」

「俺もポイントにしたぜ。他のも興味がない訳じゃないが、ここはやっぱりポイントが欲しいからな」


 みんな考える事は同じらしい。どこでどんなスキルが必要になるか分からないからな。多くある方が助かるのは間違いない。……採集物の詰め合わせとかどんな中身なのかも気になったりはしたんだけど、やっぱりポイントが魅力的だった。果物の詰め合わせはいらん。俺は使えんし、アルもいるし。


「ほう? 2位だとポイントは20なのか」

「って事は1位は違うのか?」

「おう、30ポイントだったぞ。これで風魔法でも取ってみるか」


 どこか嬉しそうなベスタである。ポイントで取るかどうか悩んでたみたいだし、それだけポイントが貰えたら多少使っても大丈夫だもんな。7位のPTの方はどういう報酬かは気になるけど、近くにいないから分からない。


『行き渡ったようだな。では次に地図の作成の貢献度が高い者、上位5名に報酬を与えよう』


 7位のPTの人達も選び終わったようで次に進んでいく。また目の前に報酬リストが現れた。さてこっちはどんな内容かな? って、こっちはスキルか! 『視覚延長Ⅰ』とか『行動値増加Ⅰ』とかがあるね。既に取得済は流石に選べないし、何が良いだろうか? 

 他はいくつかの操作系スキルに『自己強化』や『魔力集中』もあるけど、この二つは暗転してて選べないと……。ラインナップ自体は結構いいんだけどその分悩む。どうしようか……。あ、『暗視』ってのもあるけど、これってもしかすると『夜目』の上位スキル? これを取っておくか? そしたらまだ行ってる人のほぼいない『常闇の洞窟』に単独でなら突入も出来るかも。よし、これにしよう。


「ふっ、ありがたい。ポイントを使わずに『風の操作』と『風魔法』が手に入ったぞ」

「ベスタはちょうどさっき『風魔法』を取るかとか言ったばかりだしな」

「ケイは何に選んだ?」

「『暗視』を選んだ。さっきの洞窟の中って『夜目』でも暗かったからさ」

「……何だかんだであの洞窟に行く気満々じゃねぇか」

「まぁコケの見つかりにくさが通用して、洞窟内部に充分なコケが生えてたらだけどな。あそこ暗すぎて位置指定が出来なかったんだよ」

「……なるほどな。コケには視界が良い事は必須って事か」

「そういう事だ」


 他にも操作系とか取りたいのもあったんだけど、あそこで黒の暴走種の初回発見報酬でポイントを稼ぐのもありかという目論見もある。まぁうまく行くかはやってみないと分からないけど。

 うん、みんなから微妙に羨む声も聞こえてくるけど、こればっかりはどうしようもないから!?


 流石に今回は悩んだ人が多いのか、待ち時間が長かった。まぁ、この報酬内容は悩むよな。


『最後に総合的に活躍した者に褒美を与えよう。先の戦闘の情報を元に生成したモノだ。まだ数に限りがあるので上位5名に1つずつ選んで貰うことになる。いずれは皆の者にも入手可能にはするが、他の者は今はまだ待ってくれ』


 あ、今度は順番に選ぶのか。その言い方だとそのうち手に入るようにはなるけど、先行して報酬としてくれるって事みたいだな。どんな物だろう?


「なるほど、こう来たか。ならば俺は『進化の輝石・火』を貰おうか」

「『進化の輝石』?」


 なんか聞き覚えのある名前だけど何か違う気がするぞ? 5個あるうちの物を1位から順番で選べという事か。1位のベスタは選び終わったみたいだし、2位の俺の番だな。ベスタから回ってきた報酬リストを見ていこう。


『進化の輝石・水』

『進化の輝石・土』

『進化の輝石・氷』

『進化の輝石・樹』


 なるほど、『進化の軌跡』じゃなくて『進化の輝石』って事か。詳細も見れるみたいだし、ちょいと1つ詳細を見てみよう。


【進化の輝石・水】

 『進化の軌跡・水の欠片』を分析し、改良を加え生成した物。

 1時間限定で特殊進化の『纏属進化』を行う事が出来る。付与される属性は水。何度でも使用可能だが使用は1日1回まで。


 一応他のも確認して見たけど属性が違うだけだった。『進化の軌跡』と違う点は、使い捨てではなくなって、効果時間も伸びて、成長体という制限もなくなったという訳か。これ、良いね。そのうちこれも色んな属性が手に入るようになるって事なんだろうな。俺も地味に火が欲しかったかも! ……そこはランキングだから仕方ないか。

 とにかく後の人も待ってるから選んでしまおう。とりあえず水は却下。土も属性持ってるから微妙。氷か樹か……。コケで樹属性ってどうなるんだろう? 長い根とか生えて来たりするのか? ちょっと予想がつかないけど、だからこそ選んでみよう!


「それじゃ俺は『進化の輝石・樹』にするよ」

「また面白いものを選んできたな、ケイ」

「ベスタが火を取らなかったら火にしたんだけどな」

「そりゃ順番なんだから諦めろ」

「まぁそれは仕方ないか。そのうち手に入るようになるみたいだし、その時に手に入れようっと」


 さて、この報酬はヨッシさんも貰える筈だけど、どれになるんだろう?


「ねぇ、ケイさん。土と氷が残ってるんだけど、どう思う?」

「PTの属性被りを考えるなら氷だけど、ハーレさんは土属性メインって訳でもないし、ヨッシさんの好きに選んでくれて良いぞ」


『あぁ、そうか。順位が重なっているから、当事者同士で相談するといい』


 ん? あ、そういやヨッシさんとライルって人は同じポイント数で4位だったな。ライルって人の方から相談したいとかそういう話があったのかもしれない。


「え? あ、ライルさんですか? え、土が欲しいんですか? あ、はい。私は悩んでるんで、どうしても欲しいというのなら構いませんけど。えぇ、はい。良いですよ」


 ライルって人の声は聞こえないのではっきりとはしないけど、どうもあっちは土のが欲しかったらしい。聞いていた感では譲ったみたいだし、ヨッシさんは残った氷かな。まぁ氷狼戦で使い捨てのは取得しているだろうけど、永続的に使えるものの方が良いよな。


「なんかライルさんって、小鳥らしくて防御を高める手段が欲しかったんだって。それで氷より土が欲しかったって」

「あー氷よりは土のほうが確かに防御は上がりそうだよな」


 なんとなくイメージ的にではあるが。硬い土の鎧を纏った小鳥に纏属進化できる可能性もありそうだし、それが狙いかな? まぁ実際のところ、纏属進化はまだ使ったことないから何とも言えないけども。


『さて、これで報酬の受け渡しは終わりだ。安全地帯の先に何があるかはまだ分からない。だが各々にもやりたい事はあるだろう。そこでこれから先は収集した情報の自動同期は行わない事とする。ただし、収集した情報の任意提供は受けるし、それ相応の報酬も用意しよう。そして、望むのであれば提供された情報の開示も行おう。これからも任せたぞ、同胞たちよ』


<群集クエスト《地図の作成・灰の群集:『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』》が完了しました>

<『完成した地図・灰の群集2』を手に入れました>

<マップ機能『収集データの任意提供』が開放されました>

<『収集データの任意提供』により、『群集拠点種』にて一部アイテムとの交換が可能になりました>

<マップデータ及び黒の暴走種の発見情報は共有されなくなります。それにより黒の暴走種の初回発見報酬及び初回討伐報酬の取得条件はプレイヤー毎の同一種族への判定に変わります。ただし、一度討伐された残滓となったものは共有化されます>


 これは、マップの自動同期機能が無くなる代わりにマップデータでアイテムを交換してもらえるって事か!? 何と交換してもらえるのかまだ分からないけど、もしかして『進化の輝石』もこの交換対象だったりする……? タイミング的にあり得るな。

 ……それにしても黒の暴走種の発見、討伐報酬の変更についてはちょっと分かりにくいな。プレイヤー毎に判定ということは、既に誰かが見つけていても自分が未発見だったなら発見報酬が発生するって事で良いのかな? そして発見済みと同じ種類なら発見した事にはならないと……?


 あ、なるほど。これ、先発プレイヤーによる発見と討伐のポイント独占の防止策か。残滓だらけにはなりそうだけど、こういう調整があるなら黒の暴走種の補充とかもあったりするのかも。


 ともかくこれで1つ目の群集クエストは俺たちに出来る範囲は完了だ! 色々と手に入ったし、色々騒動もあったけど楽しめたぜ! さて、次は新しいエリアへの出発を考えないとな。どこへ向かうかも相談して決めていかないと。初期エリアでのクエストを終えて、次は別エリアへの新たな冒険だ! 楽しみだね!

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