第15話 一発芸スキルの検証


<熟練度が規定値に到達したため、スキル『群体化Lv1』が『群体化Lv2』になりました>

<群体数の最大値が600から800へと上昇しました>

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『群体内移動Lv1』が『群体内移動Lv2』になりました>

<『群体化Lv2』『群体内移動Lv2』により、『視覚延長Ⅰ』を取得しました>

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『群体化解除Lv1』が『群体化解除Lv2』になりました>

<群体化の有効距離が伸びました>


 新たに決まったアルとの共同作戦を実行に移し、まずは近場の歯抜けになっている場所への移動中に熟練度が貯まってスキルのLvが上がっていた。


「お、新スキルゲット!」

「ほう、このタイミングでか! 使えそうか?」

「ちょっと待って、細かく見てみる」


 アルがなんか自分のことのように声が弾んでいた。まぁ新スキルは気になるよな。気持ちはわかる。さてと今のスキルの一覧を開いて。どれ、どんな感じだろうか。


【スキル】


《固有スキル》

『群体化Lv2』『群体内移動Lv2』『群体化解除Lv2』


《通常スキル》

『水分吸収Lv1』『スリップLv1』『光合成Lv1』『微毒生成Lv1』


《特殊スキル》

『変異率上昇』『一発芸・滑り』『視覚延長Ⅰ』



 通知にあった通り、固有スキルの3つが纏めてレベルが上がったな。ほぼセットで使うようなもんだし、熟練度の貯まり方も似たような感じってことか。でもレベルが上がると行動値の消費も増えるとか……あ、これ使う時にLv選べるのか!? なるほど、一気に群体化したければLv2を使い、そうでもなければLv1を使えという事か。

 特殊スキルの『視覚延長Ⅰ』ってのはなんだ? ふむふむ、これ自体は行動値の消費はなくて他のスキルのサポート用スキルか。『群体化』と『群体内移動』と『群体化解除』の使用時にLvを上限に任意の倍率の変更が可能で、倍率は0.5毎にか。つまりは望遠鏡みたいなものと。

 よし、新スキルは行動値の消費は多くはなるけどこれは有用そうだ。


「結構使えそうな感じだ。簡単に言えば移動距離の拡張と望遠鏡ゲットって感じだ」

「ほう、そりゃいいな! ところでスキルといえば一発芸のやつは詳細見たか? あれの効果が地味に気になってるんだがよ」

「あ、確認するの忘れてた。ちょっと見てみる」


 すっかりと忘れていた。そういやそんなネタスキルも手に入れてたな。詳細表示っと。


『一発芸・滑り』

 一発芸を行うための連続スキル発動を行動値上限まで登録する事が出来、このスキルで登録した連続スキルを1つのスキルとして発動する。その際に使用するスキルの熟練度を得られない代わりに、消費行動値は1となる。

 ただし、このスキルで発動した連続スキルが他プレイヤーにウケてしまえば行動値は0となり、30分回復不可。



 ……あれ? これ、ネタスキルじゃなかったのか? 何この妙な効果。え? この効果マジか? でもこのデメリットはキツいだろ……。


「おーい、ケイ? 黙り込んでどうしたよ?」

「……すまん。ちょっと予想外過ぎる内容だったもんで……」

「予想外ってどんな風にだ!?」


 アルが思いっきり食いついてきた。見事な一本釣りだろう。よし、馬鹿なこと考えてないで頭を動かせ。思った通りの効果とも限らないから、1回試してみないと。


「アル、ちょっと時間くれ。効果を試してみる」

「そりゃ良いけど、そんなに凄いのかよ?」

「下手すればかなり凄いかもしれないな」

「へぇ? そんなにか。そりゃ気になるねぇ」

「とにかく、分かったら教えるからちょっと待っててくれ」

「おう」


 さて、実際にやってみようじゃないか。あんまりアルを待たせるのもなんだしな。


<『一発芸・滑り』に登録行動がまだありません。連続スキルの登録を開始しますか?>


 なるほど、まず行動を登録する訳か。はいっと。


<『一発芸・滑り』を登録モードで発動します。なお行動値の消費はありません>


 よし、登録が開始した。これで止めるまでのスキルの連続使用が登録されるのか。登録枠は1個で上書き可能か。上書き可能なら実験だし、定番となってる移動方法を登録してみよう。


<行動値を1消費して『群体化Lv1』を発動します>  行動値 10/11

<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します>  行動値 9/11

<行動値を1消費して『群体化解除Lv1』を発動します>  行動値 8/11


 よし、これで登録終了を選択すればいいのか。


<連続スキルの登録を終了します>

登録内容:『群体化Lv1』・『群体内移動Lv1』・『群体化解除Lv1』


 おぉ、登録出来た! よし、次は実際に使ってみよう! 


<行動値を1消費して『一発芸・滑り』を発動します>  行動値 7/11


 お、群体化の赤い選択画面が出た。こういう指定のところは手動なんだな。ふむふむ、群体化ちゃんとされたね。お、次は群体内移動の場所指定か。よし、指定もこれでよし。おう!? ちゃんと移動したぜ! それで最後は群体化解除の選択か。よし、ちゃんと解除された。


<『一発芸・滑り』の発動が終了しました>


「よっしゃ、これは使える!」

「おいおい、随分とテンション高いな? マジでどんな効果なんだよ?」


 行動値3使うところが、行動値1で済んだ! なんだ、このスキル!? ありえねぇ!? 


「おーい? ケイさんよー?」

「はっ!? 悪い悪い。思わず喜び過ぎてた」

「んで、結局どんなスキルなんだよ?」

「んー簡単に説明するとだな、複数のスキルを連続して使っても行動値1で済むスキルって感じか? デメリットもあるけどな」

「はぁ!? なんだその反則的なスキル!?」

「ただし、その連続スキルが他人にウケたら行動値0になった上に30分回復不可」

「……なんじゃそのよくわからん判定からのキツいデメリットは……」

「多分派手な乱舞みたいな事したら行動不能に陥るな!」

「使えそうなのか、使えなさそうなのかどっちかわからんぜ……」


 アルはどう判断していいのか困っている様子。そりゃこれは判断に困るよな。

 しかし『一発芸・滑り』はコケである俺にとってはこれ以上ないほどの移動スキルとして使える! コケだから目立たないし、バレにくいし、移動してるだけではウケようが無いわけで。


「俺には使えそうだ。移動の燃費の悪さが改善しそう」

「あーそうか、コケの移動だけならウケようがないもんな。普通なら効果自体は凄いけど使いどころに困りそうだがなぁ。コケのケイにはもってこいのスキルって訳かー」

「ただそれでも俺にもデメリットあるんだよな……。これが悩みどころだ」

「どんなデメリットよ?」

「これでやると熟練度貯まらないんだとさ」

「そうきやがったか……。でも行動値を抑えまくれる訳だしよ、流石に仕方ないんじゃねぇか?」

「まぁな。これで熟練度も貰えたら壊れスキルにも程がある」

「そりゃそうだ」


 アルも納得のようだ。こんな行動値をほぼ無視するスキルで通常使用と全く同じだとバランス崩壊のクソスキルである。熟練度は惜しいけど、移動速度を優先したい場合はこっちが間違いなく良いだろう。要は使い分けろってことなんだろうな。とりあえず後でLvの上がった群体関係のスキルで登録し直そう。


「で、検証はもういいんかね?」

「おう。ちょっとだけ『一発芸・滑り』の登録内容を弄ってから移動に戻るわ」

「了解。まだ誰も足を踏み入れてないとこか、今はログインしてる人のいない場所ばっかだから、一応一般生物には気を付けろよー」

「あ、そういう事になるんだな。よし、今は攻撃スキル足りてないし逃げに徹しよう」

「攻撃スキルねぇの?」

「相手を滑らせる『スリップ』ならあるぞ」

「地味に嫌なスキルだな、おい。でも決定打にはならねぇか。よし、情報共有版で攻撃スキルの取得方法でも聞いてみるわ」

「お、そういうのもありか。それじゃ頼むわ!」

「だけどこっちもある程度は情報出す必要はあるぞ? 出したらマズい情報ってあるか?」


 んーコケの情報は特に伏せる意味もないか? どうせこの先は他のプレイヤーと交流する事もあるだろうし、同所属の相手になら問題はない? 他の群集相手には伏せときたいけどな。あ、でも一発芸だけは知られたくないか……。流石に滑った一発芸ってのはちょっと恥ずかしい。


「あー、『一発芸・滑り』だけは伏せといてもらえるか? なんか不名誉なスキル名だから知られたくない……」

「わはは! 確かにな! わかった、それだけは伏せとくな。ってそういや結局お互いの情報交換ろくに出来てねぇな」

「あ、そういやそうか。情報交換しようとして群集クエストが始まってそのままになってたっけ?」

「まぁ移動中にでも改めて情報交換といこうか」

「そだな、そうしよう」


 俺とアルの2人で情報交換をしながら、再び移動を開始する。

 もちろんその前に『一発芸・滑り』の再登録は済ませた。行動値の最大まで登録したかったけど、ちょっと足らなかったのでLv1とLv2を組み合わせたけどな。行動値9分が行動値1になったのだから充分だ!


『一発芸・滑り』

登録内容:『群体化Lv2』・『群体内移動Lv2』・『群体化解除Lv2』・『群体化Lv1』・『群体内移動Lv1』・『群体化解除Lv1』


 

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