3月の15分

機乃遙

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 きっとみんなが僕に聞くだろう。

 きっとみんなが僕に話すよう言うだろう。

 そうしたら、僕はたしかに話すつもりだけど。でも、ひとつだけ自信がある。僕は、ぜったいにみんなが思っているようなことを言わないって。

 みんなはマヤのこと、惨たらしく死んだのだと言った。どこか遠くに消えてしまったのだと。でも、僕はそれを信じなかったし。それに、実際彼女は消えてなんていなかった。

 だから、みんなはあの人のことを――ナナのことを誘拐犯だとか、人殺しだとかって侮蔑のことを並べ立てるだろうけど。でも、僕はそんなの信じない。

 僕は、あの人を忘れない。

 あの人との、最後の十五分を忘れない。

 だから、僕は語るべきなんだと思う。


 これは、進学を控えた冬の日に起きた、僕にとっての小さな冒険。胸の奥に秘めておくべき、小さな物語だ。

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