第6話梟の一声 その6
何てことない、ただただ真っ直ぐ、目標の人物、佐久間に歩みを進めるだけのその行為に。
小屋の中に集まった忍達は、より一層の警戒を向けた。
「……くく、心地いいねぇ。肌に刺さってくる」
鬼山は佐久間の前に立つと、小さくそう言った。
「あんた……、佐久間とか言ったか?安心しろぉ……。俺は今は暴れたりしねぇよ。あんたは俺の予想以上に楽しそうな場所を用意してくれたからなぁ……。ははっ。毒くらいいくらでも飲んでやるよ」
鬼山は佐久間から毒の錠剤を強引に奪い取ると、ざらりと10粒以上大口を開けて流し込んだ。
「はっ……そこで見てるお前ら、確か銅駝と合獣だったか?早く飲め、俺ぁあんまり我慢出来ない質でね」
鬼山の獣の様な目が、じろりと銅駝と合獣を見つめる。
「ちっ……、寄越せ」
「それでは……、私も。勝ち目が無さそうですのでね。従いますよ」
こうして、全ての忍が体内に毒を流し込んだ。
「それでは……、始めましょうか。一匹の「梟」を決める戦いを……」
「始っ……!!」
「はっはぁ!!!」
佐久間が言い切る前に。
動いたのはやはり、鬼山煉獄。
前に突き出した両腕には、籠手の様な物が装備されており、そしてそれには先に直径1センチ程の小さな穴の空いた筒が付けられており、その小さな穴は、小屋にいる忍全員無差別に狙いを定めていた。
「んん……これは、不味そうだね」
真っ先に危機を察知し、退避行動を始めたのは蜘蛛井だった。
忍装束の下から彼が取り出したのは、三丁の火縄銃である。
蜘蛛井の両の手の五指にはそれぞれ小さな火打ち石がまるで爪の様に付けられており、勢い良く弾く事によって、火花を散らす。
ジッ……!と、火花は確実に着火し、数秒後。
蜘蛛井は右手に2丁、そして左手に1丁ずつ器用に銃を構えると、同時にその引き金を引いた。
もはやそれは、神業と言うしか他ならない物であろう。
発射された弾丸は寸分狂わず、全て鬼山に向かっている。
「ちっ!」
鬼山は小さく舌打ちすると、即座に体をひるがし、3つの銃弾をかわした。
この間に、既に小屋からの退避に成功した者がいた。
1人は鉄島写楽、彼女は持ち前の忍術「山崩し」で小屋の厚い壁に穴を開け外に。
そして元々小屋の出口に近い場所にいた合獣、そして鬼山の行動を見て即座に走り出した丑三は小屋の出口から堂々と外に出ていった。
そして今、小屋の中に残ったのは、鬼山、羅世蘭、座頭、黄泉原、蜘蛛井、銅駝、死流山、そして佐久間である。
そして……第2波。
次に攻撃を仕掛けたのは――。
他ならぬ銅駝宇随であった。
先の鬼山、そして蜘蛛井の一連のやり取りは、おそらく小手調べと言った所の物であろう。
しかし、銅駝宇随は違う。
確固たる殺意と、勝算を持って、彼は跳んだ。
その先にいるのは、未だ微動だにしない、日本最強とも噂される忍、死流山王土。
これが、本格的な「梟」を決める戦いの第一戦となった。
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