第27話 俺は幼馴染の友達と話す
今どきの高校生というのは、入学式前になんかラインのグループとかできている。
去年はそれに驚かされ、ぼっちだった。
一度出来上がったグループには中々参加できない。もともと、別に積極的な性格でもないしな。
クラスにつくと、すでにグループはほぼ出来上がっていた。
ぼーっとクラスメートたちを眺めていると、
「なあ、泉山さん同じクラスだぜ!」
「ほんとマジでラッキーだよな! 初詣でお祈りしてよかったぁ!」
「ほんとだよな! 今年は修学旅行とかあるし、楽しみが増えたぜ、ほんと!」
「なんといっても、毎日あの天使の笑顔が見れる! これに限るよな!」
相変わらず人気なことで。
つーか、あんまり夏希の話題を出さないでほしい。無関係なのに、嫉妬してしまうから。
俺はあくびを噛み殺しながら、鞄から英語の単語帳を取り出す。受験で使う英単語! みたいなのが書かれたものだ。
イヤホンをさして、音楽を流しながら英単語を見ているのが最近の趣味だ。別に英語ペラペラではない。英単語は聞き取れるが、会話はできないそんな程度のレベル。
周りの生徒を完全拒絶しているスタイルなので、友達ができないのは俺にも問題があるのだろうけどな。
そんなことを考えていると、クラスが急に騒がしくなったので顔をあげる。
……夏希だ。
友人二人と話しながら教室へと彼女が入ってきた。
夏希が来た瞬間に、周囲の男子生徒たちの視線が一気にそちらへと向かった気がした。
夏希は一瞬気圧されたようだったが、いつもの微笑を浮かべて友達と話していた。
……相変わらずの人気っぷりだ。
そんな夏希を見ていると、一瞬目があった。
……やべぇ、また不機嫌にさせてしまう。
学校ではかかわりを持たないで、そう目で訴えかけられたような気がした。
俺はすぐに視線を手元の単語帳に落としたが、あまり頭に入ってこない。
そのまま夏希は俺の隣の席に荷物を置いた。
……というか、夏希の席俺の隣かよ。基本的に進級してすぐは苗字順なのだが、彼女は泉山で、俺は岸辺。……まあ、ならなくもないか。
確かにいつも席の距離は近かった気がするしな……。
「夏希―、二年に進級したしそろそろ彼氏作ったらー?」
何をふざけたこと言っているんだ、夏希の友人!
夏希にそんなことを言っているのは、ふわふわとしたギャルっぽい感じの子だ。
名前は藤上(ふじがみ)花(はな)だった……か?
見た目は少し小柄で、去年も一緒のクラスで色々と関わることが多かったので、名前くらいは知っていた。
「私はまだいいですよ。花さんはどうなんですか?」
「あたしはきちんと頑張ってるけど、なかなか運命の人に会えなくて―」
そんな冗談交じりに彼女たちは話していた。
俺はイヤホンをさしていたが、音量はとっくに下げている。
……夏希にあんまり彼氏のこととか勧めないでください。
夏希がその気になって彼氏とか作ったらショックで寝込む。
……ていうか、
「てか、よく見たら湊じゃん! 一緒のクラスだったんだね!」
と、花が突然声をかけてきた。
今年もやたらと人との距離が近い彼女に、俺は驚きながら頷いた。
「……ああ、そうだな」
「一年の時一緒のクラスだったしね。文化祭の時はいやー疲れたよねほんと」
……文化祭実行委員で同じであり、色々と仕事をした。それから、多少は仲良くなったという感じだ。
実行委員なんてなりたくなかったが、俺がじゃんけんで敗北してしまった。彼女もまた同じ理由だ。
「そうだな」
「てか、さっきまで忘れてたんじゃない?」
「そんなことはない」
「ほんと? なんか声かけられたとき驚いたような反応してなかった?」
「生まれつきこんな顔なんだよ。花だろ? 覚えてる覚えてる」
驚いたのは、夏希の友人だったことに対してだ。
「おっ、ちゃんと名前覚えてたんだ。嬉しいかもー」
「重たい荷物散々運ばされたしな」
「それは言わないでほしいな」
ふつふつとあの時の怒りが思い出された。
俺はうまーくサボって乗り切ってやろうと思っていたのに彼女がどんどん仕事を持ってきたのだ。
おかげで放課後残ることが多かった。
「また一緒のクラスだし、何かあったらよろしくー」
「面倒事はやめてくれよ」
「えー、それはその時の気分だよ」
そんな会話をしてから、単語帳に視線を戻そうとしたところで夏希と一瞬だけ目があった。
……めっちゃ不機嫌そうなんですけど。
あれか? 私の友人と勝手に話すなってことか?
……向こうが話しかけてきたんじゃないか。それはさすがに見逃してください、お願いしますから。
どうやったら俺は彼女と仲良くできるのだろうか……。今日もそのことを考えるしかなかった。
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