情景38【記憶のうるおい。星を指す】
年の離れた兄が、私と手をつないだまま、頭上にどこまでも伸びて広がる夜空に人差し指をさしている。輝く星の群れの一点に向けられていた。
「見てごらん」
兄が、視線を深い夜の空の奥へと促してくれる。
あの頃の私はまだ背が小さくて、兄の腰に届くくらいだった。その兄も、頻繁にかがんでは、視線の高さを私に合わせて話しかけてくれたのをよく覚えている。
それから、
「どの星も輝く中で、あれはいちだんとまばゆいね」と言う。
そう言われて、私は必死に兄の指す先にある星を探していた。冷えて冴えた夜風が、手をつなぐ私たちの間をそよぎ、すり抜けていく。
兄の指先に、星が乗っていた。
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