どっちかなんて選べない

ネルシア

どっちかなんて選べない

「「私達と付き合って?」」


放課後の帰り道、公園に呼び出された私。

突然、学園でも有名な高校生なのに幼さが残る可愛い双子に告白された。

対して私は見た目も性格も普通だし、胸も大きくない。

背が高いくらいしか取り柄がない。

なのになんという幸せだろうか!!!!



「私で良ければ!!!!!」


「「やった!!」」


双子はぴょんぴょん跳ねながらキャッキャと嬉しそうにしている。


可愛い。

それを見ているだけで尊くて守りたくなる。

双子が駆け寄ってきて姉が左耳、妹が右耳に囁く。


「「これから私達恋人だね♪♪」」


そう言い終わるとほっぺにちゅーしてくる。


なんだこの可愛い生き物は。

いいのか私がこんな子達の恋人で。


「でも2人と一緒に付き合うってどうするの?」


双子と付き合うなんてほぼすべての人が体験しないだろう。

それはいらない心配だったみたいで、提案してくる。


「今日は私とデート」


と姉が言う。


「次の日は私とデート。」


続いて妹が言う。


「「それでどっちがいいか決めるのは?流石に2人も選べないでしょ?」」


まるで台本が用意されてるかのように息がピッタリな姉妹。


「分かった、また後でね。また明日ね。」


「「うん、バイバイ!!」」


天真爛漫。

純粋。

これほど似合う言葉が無いくらいの笑顔で手を繋ぎながら空いてる手を振って帰路につく2人。


しばらく幸せに耽っていたが、この後デートだから帰らなきゃ!!

と意気込む。


「服どうしようか……。」


悩む。

勝負服と言えるものがあまりない。

そもそも普段あまりお洒落をしない上にそのような機会もない。


「これしかないかぁ……やり過ぎかなぁ……。」


少し派手目だが、これくらい気合入れれば充分だろう。

snsで待ち合わせ場所はショッピングモールのとあるアクセサリーショップの前。

ウキウキしながら行くと一際目立つ少女がそこにいた。

お人形さんか????

黒めのドレスのようなゴスロリ衣装ではあるが、幼さ故に映える。

細い首に細いチョーカー。

完璧としか言えない。


「あ、やっと来たぁ」


優雅にゆっくりと近付いてくる。


「可愛い……。」


「あ、ありがと……。」


思っていた言葉が漏れる。

姉が照れてもじもじする。


「ね、ねぇ、このお店行きたかったの。早くはいろ?」


恥ずかしさを紛らわすように話題を変える姉。


「分かった。」


手を繋ぎ、自分が先導するようにお店に入る。

手ちっさ!!!!!

指ほっそ!!!!

頭が吹っ飛ぶような可愛らしさのオンパレードで思考なんて消し飛んでしまった。


「どれが似合うかなぁ……。」


物色する姉を傍らに、貴女なら何でも似合うと思います、とグッと拳を握る。

その中でも私をあの娘につけて!!と叫んでいるような緑色の小さな球がついたネックレスを見つける。

これだと直感する。


「これなら絶対似合うよ。」


「どれどれ〜?」


私が手に取ったネックレスをよく見ようと顔を近づける。


「わぁすごい綺麗!!!!ネックレス探しの天才かな?」


にひっと笑う。

いったい私の心臓をいくつ壊せばこの子は気が済むんですかね。


「ほら試着させてあげるからあっち向いて」


んといって反対を向く。

ネックレスをつける時肌に触れる。

すべすべモチモチ。

あまーい匂いも鼻をくすぐる。

好きだわぁぁァァ。

語彙力の消失。


「やっぱり似合うなぁ……。」


我ながら流石と思えるほどに黒い衣装に緑色の球が合う。

この子のために存在していたのでは無かろうか。


「私これにする!!ありがと!!」


またまた可愛い笑顔を向けてくる。

顔が緩みそうになるのを抑える。

お会計の時、お金は私が払った。

初デート記念ということで奢ったのだ。


「あ、もうこんな時間!!帰らなきゃ……。」


そう言われて時計を見ると確かに今から帰ると遅い時間になりそうだ。

新しいネックレスは買ったと同時に着けており、キラキラと緑の光が反射している。

手を握って帰り道を歩いていると突然人のいない方向に引っ張られる。

周りをキョロキョロと人がいないことを確認すると背伸びして手を壁につける。

いわゆる壁ドン。


「お返しになるかわからないけど……。」


そう言うと唇を奪われる。

成されるがまま。


「……私のファーストキスの味はどう?」


真っ赤に顔を染めながらも聞いてくる。


「……美味しかった……もう一回……していい?」


コクコクと頷く。

今度は上から覆いかぶさるように顔を手で上に向かせキスをする。

さっきよりも激しく。


「ん……はぁ……はっ……。」


舌まで絡みつかせる。

お互いの唾液を交換して飲み込む。

満足感。

多幸感。


充分に堪能し、唇を放す。


「えっち……。」


そう呟かれたが、手はしっかりと握られている。


「かえろっか……。」


「うん……。」


そうして姉とのデートは終わりを迎えた。



迎えた翌日、今度は妹とデートかぁと家でまたも何を着ていくか悩みながらデレデレする。

やっとのことで洋服を決め、待ち合わせである服屋に向かう。


姉とは対象的にジーンズのショートパンツに白タイツ、タンクトップの上に黒のワイシャツというなんともワイルドな格好で佇んでいた。

ギャップ萌え。

普段のお淑やかな制服からは想像もつかない服装のセンス。


「あー、やっと来た!!」


走るように向かってくる。

そのままボフッと胸に飛び込み、ニカッと顔を向けてくる。


「お待たせ。」


「はやくいこ!!服選んでほしいの!!」


親を急かす子供みたいに手振り身振りでアピールする。


「色々あるねぇ」


2人であれやこれや探し回る。


「ボーイッシュな服装が好きなの?」


「可愛いというか女の子らしいのはお姉ちゃんに任せて、私は男の子っぽくしようかなって思っるの!!」


確かに似合うもんなぁ……。

納得して、いくつか服を見繕う。


「試着しよっか。私待ってるから着替えてね。」


「はーい。」


しばらくして渡した服をじゃーんと披露してくれる。

細めの黒のズボンに片側がオフショルダーになってる赤い上着。

下に見えるのは緑のパステルカラー。

うん、可愛い。

間違いない。


「これ買おっか。」


「私も気に入った!!!!」


満足して再び元の服に戻る。

姉の時と同様に初めのデートということで奢った。

ありがとう!!!!となんどもなんども抱きつきながらお礼をしてくる。


姉と違って活発なんだなぁ……。

そこがまた可愛らしいのだけれど。


「そうそう、私あと1つ乗り物乗りたいんだよね……。」


買い物が案外早く終わり、この街のシンボルとも言える巨大な観覧車に連れて来られる。

遊園地の中にあるわけではなく、観覧車だけで運営されている。


「これ乗ろ?」


荷物はロッカーコインに預け、向かいになるように座り、乗り込む。

一番高い所まで行くまではきれいだねぇとか他愛もない話をしていたが、いきなり膝の上に顔を合わせる向きで乗ってきた。


「どうしたの……?」


無言で両手で顔を乱暴に唇に押し付けられる。


「んぁ……はぁ……ん……。」


嫌らしい音を立てる。

口の中を舐めまわされる。

よだれを送り込まれる。

荒々しい。

でも嬉しい。

妹が口を放す。


「大好き。」


そう言うとまた口をめちゃくちゃにされる。

ふぅと落ち着いたように向かいの席に戻る。

落ち着いた姿を見るとまるで大人の男性のような凛々しい顔がそこにあった。

私はその姿に見惚れ、観覧車が下りきるまで口を開けなかった。


荷物を取り出し、帰る。

お互い黙ったままだったが、手はしっかりと握りしめられていた。


「今日はありがと。」


「あ、うん。」


軽い挨拶だったが手を放す時、名残惜しそうに互いの指を絡め合う。

こうして2人とのデートを終える。


「どっちか選ぶなんて無理だよ……。」


そう呟く。



翌日の放課後、告白された公園に呼び出され、回答を求められる。


「「どっちにする?」」


そんなの決まってるじゃないか。


「2人ともじゃ……だめ……?」


2人が目を丸くする。

双子が見合わせるとふふっと笑い合い、私に向き直る。


「「欲張り屋さん。」」


ほっぺに両側からキスされる。

我慢できなくなり、まず姉に激しいキスを御見舞する。


「あーお姉ちゃんずるい!!!!私にもしてよ!!!」


無理やり姉とのキスを中断され、妹が無理やりキスをしてくる。


一通り終えたあと笑い合う。

私を真ん中に、双子と手を繋ぐ。

両手に花。


「これから改めてよろしくね。」


「「もちろん!!」」


元気よく返事が返る。

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