第338話自分だけの時間

 わたしは寄り道をする。


 なんだか家に帰るのがもったいなくて。


 学校が終わるとゆっくり席を立った。


 いつもは通らない道を歩こう。


 今日はなんだかそんな気分。


 部活で賑やかなグラウンドを通り過ぎ。


 澄んだ冬の空をのんびりと見上げる。


 いつもは右に曲がる校門を左に曲がり。


 駅の改札をスルーして線路沿いをゆっくりと歩く。


 バス停で寝ているネコを横目に。


 落ち葉が彩る街灯の下で踵を鳴らす。


 高い空が徐々に茜色に染まり。


 街は星屑のような明かりを灯した。


「うぅ……寒い」


 だんだん空気も冷えてきた。


 そんなとき、あなたがバイトする喫茶店が目につく。


 せっかくだから、少しお話がしたいかも。


 カップから立ち昇る香りを吸い込んで、わたしはもう少し、寄り道をする。

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