第328話天使のネコ

 わたしの背中に羽が生えていた。


 天使みたいな真っ白な羽だ。


 しかも、自分の意思で動かして、空を飛ぶことができる。


 不思議なこともあるもんだな。


 とりあえずどうしよう。


 せっかくだから、飛んでみようか。


 羽を動かすと、身体が浮いた。


 窓から飛び出して、のんびりと休日の街の風景を楽しむ。


 商店街で買い物をする人。


 河川敷でランニングする人。


 学校で部活に励む人。


 いろんな人の生活が見える。


 そんなとき、電柱の上で下りることが出来なくなったネコを見つける。


 拾い上げて地上まで下りると、友達のあなたが「ありがとう!」といって走ってきた。


 この子はどうやら飼いネコらしい。


 と、わたしの羽に気がついて、あなたは目を丸くする。


「これほんもの?」と言いながら羽を触っていると、根本から取れて、それがネコにくっついた。


 ネコは無意識に羽を動かして、どこかに飛んでいく。


 わたしたちは必死で追いかけて捕まえたけど、その日、空飛ぶネコがニュースになっていた。


 未だにネコの背中に羽は生えたままだけど、コスプレということにして、あなたはごまかしている。

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