第319話意外にも、ただお喋りしただけだった

 僕は学校の倉庫に閉じ込められた。


 先生から頼まれたものを探している最中に、外で誰かが扉を閉めてしまった。


 うっかりしていた。


 ここは人の出入りが少ないから、助けを呼んでも誰も来ない。


 ドンドン、ガンガン。


 扉を叩いても、鍵は開かない。


 錆びた鉄の匂いと、冷たく重い扉。


 辺りは静まり返り、声を上げても、それは室内に反響するだけ。


 携帯は教室に置いてきたし、僕はどうなってしまうのか?


 ドンドン、ガンガン。


 そんなとき、外から扉を叩く音がする。


 壁越しに声をかけてみると、「わたしだよ。大丈夫?」と君の声が返ってきた。


 先生に頼まれて僕の様子を見に来たらしい。


 マスターキーで錠を開けると、外の光が射し込んできた。


「よかった、助かったよ……」


 しかし安堵する僕をよそに、君は後ろ手で扉を閉めて鍵をかける。


 僕が問いかけると、君は人差し指で僕の口を塞いだ。


「探し物をしてることにして、もう少しここにいよ?」


 いたずらな笑みを浮かべる君と、再び閉じ込められた僕。


 ドンドン、ガンガン。


 開けてはいけない扉を開けそうな、そんな気がした。

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