第107話 相手を説き伏せるのは誠意が肝要
なお、有線式バーストナックルを試射する度、騎体との感覚共有で左拳に
微妙に気まずい雰囲気から逃れようと、俺は早々に足場代わりの胸部装甲版へ踏み出し、備え付けのワイヤーペダルを使用して地上に降りた。
「その、なんだ… 桃缶あるぞ、今は持ってないが……」
「うん、露骨だけど好物だから貰うね、でもッ!」
きっと
「ニーナ様、なんて
「うぐぅ、それを言われると困るけど、こっちの世界には無い発想の兵装だし、
多少なりとも
三白眼のジト目で唸る相棒を受け取りはしたが、俺も地味に痛かったのは同感なので苦言を
「このままでは気軽に使えない、せめてもう少し騎体の左拳を補強して欲しい」
「えぇ、黒鉄の含有量を増やすよう錬金術師達に指示するわ」
「ん~、でも重くなるのです」
「飛翔速度の低下が気になります、威力にしても
すっかりニーナと和解した双子エルフが長い笹穂耳をぴこぴこさせ、最適なバランスを優先すべきと主張してきた事に一抹の不安など覚えつつ、森側から
乗り手の大半は野戦任官させた準騎士と準魔導士らの
「派手に損壊させたら、ジャックス班長が切れるんだろうな」
「うぅ、他人事じゃないのが悲しいよ」
某移民系アメリカ人の教導技師を脳裏に思い浮かべてから、少し機嫌を持ち直してくれたレヴィアと取り行われ始めた模擬戦に傾注し、操縦者らの技量に焦点を当てて数分ほど観察していると微かな違和感を覚えた。
「思ったより、動きが良いのは騎体がクラウソラスの発展型だからか?」
「ん、王都の訓練騎に近いのかもだけど……」
「あぁ、下手に動かせる分だけ、猪突になっているな」
「やっぱり、クロードもそう感じる?」
何処かの
事後に叙任される野戦
(空回りして逆効果なあたり、投降してきたリグシアの騎士達を順当に取り込めたら、
頑張っている者達には悪いが、今も信号拳銃片手に一定間隔で散開している斥候小隊の報告が
それらの諸事情を踏まえて進軍の再開と
元老院所属のアルダベルトと名乗った
「“どこまでニーナ・ヴァレルに付き合う” か……」
「盲目的に同調するのは国益にならんよ、若き王」
軍人上がりの知恵者といった風情の御仁が遠慮なく茶菓子へ手を伸ばし、砕けた態度で
相手の利益を正しく提示した上で誘導するのが交渉に
「少なくない利益供与が女狐から貴国にあったのは理解できる。ただな、適正な対価を見誤り、過剰な支払いをすると国民への
「忠告は有難く受け取るが、帝国の不安定化も同様に望ましくない。無益な内輪揉めなど止めて、“滅びの
やや溜息混じりに返せば、
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