第102話 整備兵のお仕事は時間との戦いです
「まぁ、壊れた物を直したり、補修したりするのが
「敵方のハイゼル
唐突な整備班長の問いに答えつつも、僅かに思案した俺は盟友の意見も聞いておくべきだと判断して、言い負かされて四つん
満足げな彼女は軽い足取りで
「どうしたの、クロード殿」
「今後の予定を詰めておきたい」
「そうね、ジャックス技官、騎士国側の修理作業に必要な日数は?」
「破損の激しい騎体を
「今更、損失を嫌って
「皆、真っ黒だね。私、もう一生、
「性格的にも不向きだからな」
よく言えば自由奔放で裏表がなく、悪く言えば直情的なレヴィアの触り心地良い赤毛をポフりながら、宰相も兼ねる父親の
あの時は “付き合いも
明け方、魔術師サリエルと近衛隊が酒場に転がっていた俺を回収する運びとなり、酔いが醒めてから延々とイザナを心配させた件について叱られたのは記憶に新しい。
「…… 人を呼んでおいて、遠い目をされてもね」
「ん、それに漫然と撫でられても嬉しくない」
どうやら添えた状態の手を無意識に動かしていたようで、髪型を乱されたレヴィアが
何とも言えない空気を咳払いで強引に誤魔化せば、意を汲み取ってくれた御令嬢が微苦笑して、
「さっきの話だけど不測の事態に備えて、万全を期しておくに越した事はないし、私としては
「分かった、
「良い判断だな、お陰で満足のいく仕事ができる」
色好い言葉を受け取り、事あるごとに “整備不良の騎体で戦場に送り出して、死なれでもしたら寝覚めが悪い” と
「先ずは
「うわ、酷い言われよう。何とか言ってくださいよ、陛下!」
「俺達も整備班の仕事を増やしているからな、擁護は無理だ」
大袈裟に
「相変わらず、個性的な人材を集めているわね」
「うぅ、否定できない」
耳に痛いニーナの一言で
その発生源には換装用の “左上腕部” と “左前腕部” を両腕に
『持ってきましたよ、御嬢!』
「ありがとう、ベルフェゴールの
『了解です。騎士国の方々、少し場所を融通して頂きたい』
『危ないですから、十分に離れてくださいね』
両肩と脚部に埋め込まれた外部拡声器より、ゼファルスの騎士と魔導士の声が響き、王専用騎に取り付いていた整備兵達が
「かなり繊細な動作をさらりとやってのけるな」
「うん、魔導炉の出力調整とか、割と難しそうかも」
「ふふっ、うちの騎体乗りは他兵科との設営作業にも慣れているから、このくらいは朝飯前よ♪」
またしても女狐殿は誇らしげに豊穣な胸を張るが、リゼルだと命懸けで最前線に立つ勇敢な者達を神聖視する傾向が強いため、戦闘以外で
もし専用のスコップなど作製して重機代わりにしたら、騎体適性が無いことを気にしているライゼスを筆頭にして、同様の理由で準騎士に選ばれなかった志願兵や国民の反感を買うことは避けられまい。
(近隣から戦乱の火種が消えるか、遠のくかしなければな……)
現状では宗一郎爺さんに残してきたクラウソラスを
様々な場面を想定した騎体の有効活用は一朝一夕といかないため、思索を切り上げて有線式バーストナックルとやらに群がり、瞳をきらきら輝かせている双子のエルフ姉妹を視野に収めた。
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