第75話 護衛騎士達の旅路
数台の荷馬車と騎士王などの要人らが乗車するキャリッジ二台を囲む配置で、アッシュグレイの騎体ベガルタに加えて武装が特徴的な
歩足を最も遅い荷馬車に合わせて移動する
(…… やりづらい事、この上ない)
目的地の中核都市レイダスまで同行する一個小隊の混成騎兵隊の内、直属の配下は半数程度に留まるため、どうにも余計な気を遣ってしまうようだ。
麾下の近衛兵らを預け、自身はフィーネ嬢と片方のキャリッジに乗車しているサリエルと対照的に、彼の背中には中間管理職の哀愁が
そんな騎兵長を狙撃型騎体の疑似眼球に
『確か
『うん、今回は大丈夫だと思うけど……』
物事に絶対など有り得ないので、二人の少女は要人警護の指揮を執るサリエルから、万一に備えて騎体同士の戦闘も視野に入れておけと言及されている。
『場外乱闘なんて
『そうだね、折角のお祭りだから』
短い言葉を交わして微笑んだ琴乃達に向け、話の区切りを頃合いと見たのか、任務中は原則的に共有接続されている念話装置を経由して前衛のベガルタより通信が届く。
『この際だから確認しておきたいんだけど……』
『どしたの、ロイドさん』
『君は対人戦の経験が無いんだろう? 遺憾なく
『つまり “当てになるか、否か” という事です』
さらりと返答に
黒髪を後ろで
『ん、騎体の
『分かった、頼りにさせて貰うよ』
穏やかな声で語り掛けつつも彼女の戦力的な評価を一段階下げ、ロイドは念話装置を一時停止させた上で軽く溜息した。
その
(
(ッ、これは…… また兄様が良からぬ想いを!?)
さきほど得た余裕は何処にやら、可愛らしい唸り声を零したブラコン魔導士は
『コトノ、例えお前の射撃が急所を外しても、動きが鈍った敵兵を俺達が仕留めたら間接的に命を奪っているのと同義だ。中途半端な綺麗事は好きじゃない』
『はいはい、自分の主義を人に押し付けたら駄目よ、ディノ君。否定はしないけど考え方は十人十色、彼女の迷いに私達も可能な範囲で付き合ってあげましょう』
“あくまで
それらの言葉に琴乃は内心で複雑な感情を抱きつつも、
騎士王を務める
『でも、早々に踏ん切りは付けないと……』
『焦らずにね、コトノ』
『うん、ありがと』
すかさず
丁度、北側の国境近隣にある落葉性広葉樹の原生林に差し掛かっていた事もあり、色付いた紅葉が辺り一面を鮮やかに染めている。
「…… 綺麗な光景だな」
「ふふっ、第三代騎士王のシュウゲン様も
迷い込んだ
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