第60話 仲良きことは美しきかな
「何やら楽しそうですね♪」
「“仲良き事は美しきかな”だなッ」
義娘のフィーネと一緒に幾つもの革袋を
「ゼノス、他人の娘だと思って気軽に言うな…… イザナ様の立場もあるだろう」
「そこは折り合いが付いていますから、大丈夫です」
何やらすまし顔で団長殿の義娘が口を挟んだ通り、以前にイザナと街へ繰り出した際、確か幼馴染の親友なら側室に迎えても良いという話をされた事があった。
路地裏のカフェ”
「……フィーネ嬢の話は本当なのか、レヴィ?」
「あぅ~、また後で話すよぅ」
他の面々がいる前で仔細の確認をしようとした父親に戸惑い、困り顔のレヴィアが助けを求めるように見つめてきたが、余り良い判断とは言えない。
(その反応は寧ろ誤解を誘発するだろうに……)
「ひとつ貰えるか」
「おぅ、陛下達の分だ」
多少の重さを感じる革袋の中身を確認すると保存が利く固めのパン、干し肉に缶詰めなど三日程度の
これを騎体操縦席の下にある空間へ放り込み、取り急ぎ援軍に駆け付けるため随伴兵を伴わずに
「一応、確認しておくが……ゼノスは公国の首都まで行ったことがあるのか?」
「あぁ、公務で何度か出掛けた事がある。水先案内は任せてくれて良いぞ、今回はライゼスの野郎が居残りだからな」
鍛え上げられた分厚い胸板を張った騎士団長の言うように騎体適性が無い副団長は居残り組であり、魔術師長と一緒に留守を護る手筈となっていた。
流石に騎馬を引き連れた移動速度では時間が掛かり過ぎてしまい、下手をすると全てが終わった頃に目的地へ辿り着き、遅きに失した援軍として無様を晒すことだろう。
因みに騎体の巡行速度なら、丸一日もあれば騎士国王都エイジアから公国首都ヴェルンまでの凡そ180kmを踏破できるが…… 届いた書状から判断して、迎撃都市ラディオルを突破する可能性が濃厚な敵勢も強行軍は可能なので、この場で皆の意見を聞いてみる。
「ふむ、中型種以下の異形を置き去りにして大型種のみで首都強襲か…… だが、旧フランシア王国北部と南部経由の侵攻を押し留めている城塞や、周辺の町が狙われる可能性もあるぞ?」
「ん~、
「どうしてか聞いても良いかな、フィーネさん?」
疑問符を浮かべた琴乃の問い掛けに頷いた彼女の言葉によれば、どちらかの城塞に挟撃を仕掛けた場合、一度退いた公国軍が反転してきて自軍も挟撃され兼ねないとの事だ。
さらに同盟国からの援軍が予想される状況下だと、首都を陥落させた方が以後の波及効果は大きい点も付け加えられた。
実は俺も同様に考えた上で電撃的な首都ヴェルンへの強襲を想定しており、彼女の見識に異論を唱えるつもりは無いため、黙して話の続きに耳を傾けていく。
「本題の陛下が危惧された件ですけど、首都までの途上に魔術師兵を隠蔽しておけそうな原野などが多々あります。幾ら強靭な大型種でも、数人掛かりの共鳴魔法を不意討で叩き込まれたら無傷とはいきません」
「つまり、大型種の異形達を敵地で独立的に運用するのは危険が伴う訳だな」
「斥候兵が必要…… 騎体運用と変らないのね」
呟いた琴乃に向けて微笑を浮かべたフィーネは大型種のみによる強襲で仮に勝利しても、リゼルの
「まぁ、所詮は机上の空論だがなッ、戦況など絶えず変化するものだ!」
「もうッ、そんな身も蓋も無い事を…… だから脳筋と言われるのです」
「素晴らしい褒め言葉で無いかッ、磨き上げた肉体美を見せてやろう!!」
「義父様、いきなり脱ごうとしないでくださいッ」
仲良く
「王様ッ、左剛腕部の動作状態を確認したいのです」
「二人とも宜しくお願いするのです!」
「あぁ、分かった」
「ん、了解だよ」
快く承諾したレヴィアを伴い、ジャックス班長の操作で降り始めた高所作業車の荷台に乗るエルフ娘達の下まで、さっきゼノス団長から受け取った革袋を片手に向かう。
一度出撃すれば彼女達のような整備班員を含む輜重隊とは事後的にしか合流できない
他の専属騎士や魔導士達も同様に騎体付きの整備員たちと意見を交わし、各自で出撃前の準備を進めていき…… 日が暮れ始める少し前には新造の国産騎を含む合計十体の
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