第54話 稀人の弓騎士と魔導士の令嬢
緩く握り込んだ柔らかい手を離せば、一部始終を
「クロード王、騎士団の人員が一人増えると考えても?」
「慣れない事も多いだろうから、面倒を見てやってくれ」
「承知した…… 特別扱いはせんがな」
武人らしく質実剛健な言葉を残した壮年の騎士が振り向き、聞き耳を立てていたリーゼに早々の指示を出す。
「コトノの騎体適正を判断したい、魔導士役は任せる」
「了解しましたけど…… ちゃんと説明してあげてくださいね、陛下」
腰まで届く
<ん、人型ロボットに乗れるかを調べてもらえば良いんだね>
<結果次第で待遇が大きく変わるからな、朗報を期待している>
<そんな言われ方したら、なんか緊張しちゃうじゃないのさ>
おどけた感じで軽口を叩いてから、琴乃は言い含めておいた通り、適性検査で魔導士役を務めるリーゼの傍に付き従った。
因みに騎体は魔導核へ登録された魔導士と
普段はディノがリーゼと搭乗している事もあり、
「検査が終わるまで、二人の付き添いを頼む」
「…… 騎体を壊されたら、目も当てられないからな」
偶には素直に頷けないのかと思いつつも退室していく三人を見送り、残ったライゼスに琴乃が使う兵舎の個室を用意してくれと言付けたのだが…… 神経質で規律に
本来なら、個室の割り当ては準騎士以上の者達を対象とするため、例外扱いは他の兵卒達に示しが付かないとの事だ。
「…… と言っても、彼女の場合は意思疎通の問題があるからな」
「単なる
「こんな事で強権を
「ふははっ、心構えは一人前だなッ、我らが王は!」
若干、呆れた末の言葉に珍しく呵々大笑したライゼスから譲歩を引き出し、一月の期間限定で琴乃の個室使用を認めさせたものの…… 適性検査の結果、彼女が高い騎体同調率を示して準騎士となった事により、俺の努力は徒労に終わった。
後日、
そんな事をしている内にゼファルス領まで派遣していた新任騎士ら数名も帰還し、自身と相棒の魔導士が駆る修理上がりのクラウソラス二番騎と五番騎を受領してきた。
これで改造騎体を含む第一世代の六騎に加え、第二世代の騎体ベルフェゴールやベガルタ、完成が迫ってきた先行試作型の国産騎も含めると王都の
(国内の中核都市でも精々、二~三騎しか配備されてないのに充実したものだ)
騎兵隊と歩兵隊の一部が
(その分だけ、責任も付き
再認識したら胃が痛くなってきたので、精神的安定を得るためにも独断専行は避けようと自戒していたら、並んで歩いていた御付きの魔導士が
「なんか難しい顔してるけど、悩みなら聞くよ?」
「ありがとう、本当に困ったらレヴィアに相談させてもらう」
「ん、ディノと違って素直でよろしい♪」
幼馴染みを軽く
焼けた鉄の匂いと打突音が風に乗って流れてくる宗一郎爺さんの鍛冶場に入れば、先客のルナヴァディス兄妹が壁際に佇んでいた。
「やぁ、クロードも刀の
「否定はしないが、仕上がりの報告を受けてな」
非公式な場である事から率直な態度で片手を振ってきたロイドに応じつつ、脇目もふらず槌を振るう刀鍛冶に傾注したところで騎士軍装の袖がそっと引っ張られる。
視線を転じると何処か疲れた表情のエレイアが佇んでいた。
「うぅ…… 朝の鍛錬が終わってから、ずっと
「傍にいる事を強制されている訳でも無いだろう、自由にしたらどうだ?」
「うぐぅ、私が居ない間にコトノが来たらどうするんですかッ」
「ロイドさん、大和撫子が好みだからね~」
他人事だからと気楽に流したレヴィアを眺めて、妻に迎えるなら
ここ数日、琴乃に共通語を教えていた時の印象だと快活な女子高生という感じだったので、彼の守備範囲からは少し外れている気もするが…… 危機感を覚えた妹君は警戒しているらしい。
少し不機嫌なエレイアの理由を察しているのか、微笑ましいものを見るような目を彼女へ向けたロイドに溜息して、我関せずな様子で作業中の宗一郎爺さんに視線を転じた。
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