第20話 これは半刻の説教コースですね By エレイア
『確か、ジョン・ナッシュのゲーム理論だな』
『ゲーム? 何だか楽しそう♪』
などとレヴィアが嬉しそうな声を耳元で響かせたので、個々人が合理的な利益追求を行えば大抵の場合において
『……………… 全然ッ、面白しろく無いんだけど!』
『そうか、相応に興味深いものだと思うが……』
『うぅ~、インテリ気取っちゃって、もうッ』
『と、言われてもなぁ』
ロイド達などは小難しい話でも拒絶反応が出なかったので、つい大学時代を思い出して
今にして
(目的地に着いたら甘い物でも
出掛け前、ゼファルス領の中核都市ウィンザードは女狐殿の嗜好もあって、素晴らしい洋菓子が沢山あると団長殿の義娘フィーネから聞いている。
仮に保存が利くなら、彼女やイザナにも買って帰りたいが…… この世界は保存技術が余り発達しておらず、
留守番組には悪いものの、それらは俺達だけで楽しませて貰う事になる。
(ふむ、リーゼをエサで釣って…… いや、ディノとの関係改善を急げば、返って裏目に出るか)
それから
なお、ここの城壁の高さも普及し始めたに過ぎない巨大騎士に未対応なので、活気づく町の中央市場や川を引き込んで作った噴水などが疑似眼球に映った。
『きっと、巨大騎士で攻め入ったら大半の城壁なんて一瞬で崩れるんだろうな……』
『良いところに目を付けるね…… でもさ、ここで言う事じゃない』
ふと零した言葉に対してロイドの騎体から秘匿回線の念話が入り、衛兵隊に不信感の籠った視線を向けられていた現状に気付く。
冷静に考えれば対異形種用の巨大騎士ではあるが、人族同士の争いに用いられた場合、既存の防衛手段がほぼ
恐らく、騎体を用いた侵略に対抗できるのは騎体しか無く、故に最新鋭騎を開発できるゼファルス領とニーナ・ヴァレルは皇統派貴族らの脅威足りえるのだ。
その事実に今更ながら思い至った俺の視界の端では、衛兵達と街に入る手続きをしていたライゼスが先の発言に顏を引き
『これは半刻の説教コースですね、クロード様』
『勘弁してくれ……』
くすくすと笑って冷やかしてきたエレイアの予想が外れるに越した事は無いが、一気に雰囲気が悪くなった相手方を見る限り、十中八九で的中してしまうのだろう。
「ふぅ……」
新鮮な空気を肺に取り込んで一息ついてから、不意に浮かび上がった疑問を解消するため、後部座席で“ん~”と身体を伸ばしていた赤毛の少女に尋ねる。
「此処に駐騎させておけという事だが…… セキュリティは大丈夫なのか?」
「ほぇ、“せきゅりちぃ”?」
意味が分からないと言った感じで可愛く小首を傾げられ、もう一度改めて言い直す。
「まぁ、勝手に盗まれたりしないかって事だ」
「それなら大丈夫だよぅ、私がいないと四番騎の心臓は動かないから」
レヴィアの口振りで騎体専属の魔導士が起動の鍵となる事を察したところで、近くに
「心臓部の魔導核に記録された魔力波動と魔導士のそれが一致しなければ、通常手段では騎体が動かないのです、技師たちが手間暇かければ別ですけど」
「上手く出来ているものだな」
「だからこそニーナ・ヴァレルは
下方から聞こえた声に反応して、騎体の傍まで来ていたライゼス副団長の姿を
もう慣れてきた動作で引き出したワイヤーを右掌で掴み、一定の速度でしか伸びないそれに自重を預けて降りていく。
その頭上を飛び越えて、魔法由来の旋風を
周囲では既に一部の兵達が壁外での野営に備えており、
当たり前の事だが、武装した小隊規模の此方を全て壁内に受け入れるのは難しいため、街中に入れるのは一部の者達だけだ。
「クロード王、
万一に備えて騎体を動かせるロイドやディノ達は残す必要があり、領主の館まで同行するのは御付の魔導士であるレヴィア、お目付け役のライゼスと数名の兵士達となる。
その話が終わった時点で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます