【物語の名前は誰も知らない】

慎ましやかな現金の端を栞まして、

くたびれた絵本に包んだ

のみこんだ嘘が希望に伝染る

陶磁の胸を膨らませて

 

ぶかぶかジャージの裾を虹で染めたら

なんと軽やかに弧を描いたサンダルと

塗り点てたブランコが泣いて下さり

夢見心地でイロハ坂をゆけば

信号はいつだって真っ赤なままで

バイタル線は並行していく

 

きょうというおひさまは

それで たのしくて よかったんです

 

藁でくんだお家を小さく寄り添えば

損なことすら忘れてしまう

紙袋いっぱいの苦悩の飴が

甘く芳しく辿るしるべとほおばり

街灯に瞬いて 微かに、いたんだ

 

【物語の名前は誰も知らない】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る