目眩

ゆらゆら揺れる視界。まるで水に浮いているような、そんな気がしてくる。なんでだろう?

 ここは水の中だろうか。ぐるぐる回る世界。重い、とても重い。そう感じたのは私の体だった。

 風呂の中。

 そうだ私は風呂に入っていた。

 やべぇ、沈んじゃった。

 慌ててそこから立とうとしてまた滑ってしずんだ。

 痛い。コケた拍子にしたたかに後頭部をぶっつけた。

 あぁ、なんだろうな。

 こういう時って、何をやっても裏目に出る気がする。

 今度はすべらぬように、ゆっくり起き上がった。

 鼻の奥が痛い。

 水を吸ったのか、やれやれだな。

 

 最近、痩せてきた。

 なにかダイエットのようなものをした覚えもなく、ただ体重だけが減りつづけている。

 痩せたかったのだから、それは喜べはいいのだろう。

 まるで自分の体が半分くらいになったように、軽い。

 だから風呂で溺れたのか。

 そうだな、ちょっと前までは私は勝手に浮いていた。

 脂肪で。

 脂肪は浮くのだ。

 アブラだから無論、水に浮く。だから太っている人の方が溺れにくいのではないのだろうか。

 

 さっきまで何かをしていた。その感覚のようなものだけが残っていた。

 そうだった。

 私は死のうとしていた。

 安定剤を何錠飲んだのか、全く覚えていない。またオーバードーズやっちゃったな。

 主治医の先生にバレたら薬をだしてもらえなくなるのにな。なぜかそれがやめられない。

 体がふわふわする。動かない、動けない。

 でも、この程度なら何の問題もないよ。

 

 生きていることすら否定したくなる時がある。それが昨日より前だったら主治医の先生に相談出来たのにな。なんと間の悪いこと。視界がふらふらする。気持ち悪い。

 

 今はただなにも出来ずにベッドの中でまあるくなって、そうやって嵐が過ぎ去るのを待つだけです。

 オーバードーズはクセになるから、やってはいけない。そうわたしに言い聞かせている、私がいる。

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それでも生きて 神崎真紅©️ @blackspot163

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