第18章「迫り来る選択」その15


「でも、僕だけですよ。こんなに悩んでるの。馬鹿みたいだ」


みんながみんな、早すぎる気がする。


僕だけが悩んで、取り残されて。


見栄とか世間体が僕の行きたい道を邪魔する。


「でもね、


あれだけ残酷非道ざんこくひどうをつくしたナチスでさえ、過去のものとして扱われる」


「許されるってことですか?」


僕のこの優柔不断な性格も。


先週、校則に違反して髪の毛を染めたクラスメイトも。


「いえ、やっぱり大丈夫です」


先生にお辞儀をして、僕は職員室を去った。


時間というものはおそろしい、戦争は語られるが平和は語られない。


部室に行くと、東海あずみだけがいた。


「平木と西山は?」


「平木さんが担任の秋山先生に入部届を提出するのを忘れていたらしく、西山さんがそれに付き添っているようなのです」


「ああ、なるほどね」


「さぁ、勉強しましょう。もう試験まで一週間もないのですよ」


彼女の開いているノートを見ると、文字と数式で埋め尽くされていた。


東海あずみは何で医者になりたいんだ?」


「昔は人を助けたいと思ったからなのですが、最近はよくわかりません。


他にも介護士や介護士、消防士に警察官、人を助ける仕事なんてたくさんあるのに、


どうして自分は医者を選んだのか、私にはわかりません。


もしかすると、私の親戚が医者で両親は看護師で、私が医者になることを望んでいるからそうしたのかもしれません」


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