第15章「世界に関わる者」その9



『悪魔』のタロットカードに、枕か。


学校内を探して、この二つを持っている生徒を探すか、いやわざわざ犯行声明を残す奴だ、身につけているような間抜けではないか。


メモをいろんな角度から見たが、veiled以外には何も書かれていないし、他の読み方もできそうにない。


「こういったメモを残すってことは犯人は怪盗ごっこでもしてるつもりなのかなぁ」


だとしたら、盗んだものには何か共通点があってそれを見つけることができたら、犯人にたどり着けるのかもしれない。


「他のクラスでも聞き込みした方がいいかもですね」


持っていたメモの切れ端を横取りして、教室から出ようと僕を促してきた。


捜査は足で稼げ、か…。


正直、乗り気にはなれないな。


謎解きくらいならできるが、見知らぬ他人にこんなわけのわからない事件について聞き回るのはこの先の高校生活に支障をきたす可能性がある。


でもこの東海という少女はこんな変な衣装をして、友だちと二人でわざわざ他クラスの教室を借りて占いをしたり、


友だちの所持品が盗まれたからって舞台裏に忍び込んだり、僕とは熱意も行動力もまるで違う。


何でこんなことに真剣になれるんだ?


大人は教科書や黒板から学ぶことと規律を守ることを求めてくる。


僕は不本意ながらもそれに従ってきた、だからこそ「普通」でいられた。


でもそれだけじゃダメなんだ、って最近になって気づいた。


彼女につられて歩くなか、褒められることや認められることだけが素晴らしいものではないように思えてきた。




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