第15章「世界に関わる者」その8


「まずは聞きこみなのです」


あれから僕らは一年六組の教室で話し合っていた。


「六組の人で知り合いがいるのか?」


「占いをやる際に六組の委員長と話をしたので、その人に聞いてみます」


彼女は小走りで体育館に戻ることを告げて走り去った。


急に他クラスの教室に一人になったので少し緊張し始めたので辺りを見渡した。


机は二つの席を除き、全て下げられていて、その二つの席にはいかにもな水晶玉が置かれている。


どうやら本気で占いをするつもりだったらしい。


しかし東海の言う友だちはどこへ行ったんだ?


こんな状態じゃ客が来たとしても対処できないぞ、というか教室の前に看板も無かったし、どうなっている?


無理矢理巻き込まれたこの状況に戸惑いを感じつつ、これから起こりうることを予想しようとしても何も思いつかなかった。


今ごろ平木は何をしているのかな?


ふと平木の存在が脳裡によぎった瞬間、


バァン!と教室の扉が突拍子もなく開いて、


椅子の前脚を浮かせて座っていた僕は、


びっくりして椅子ごと後ろに倒れそうになったが、何とか体勢を立ち直した。


危ない、危ない。


「どうだった?」


帰ってきた東海は帽子を脱ぎ、僕はこの時初めて彼女の顔を間近で見た。


髪型は前髪がぱっつんの黒髪ショートボブといった感じで、中学生に間違えてしまうほど小柄で童顔な子だった。


一般的には可愛い部類の女の子だろうけど、喋り方や行動からして俗に言う「電波系」なのかもしれないな。


「どうやら盗まれたようなのです」


彼女は座ることなく、僕の目の前で説明を続けた。


「劇で使用する予定だった枕が始まる数分前に無くなって、そこに犯人の置き手紙にあったようなのです」


東海の持っていたメモ帳サイズの白紙の紙にはveiledとだけ書かれていた。


「veiled、隠された者ってことか?」


「これだけでは形容詞の意味でしかないので、そうは言い切れません」


「君の友だちが盗まれたカードの種類はわかる?」


「確か『悪魔』だったと思います」


「それだけ?」


「はい。そうなのです」

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