第14章「予定外の予定」その14



一軍とそれを取り囲む二軍以外の奴らは何もすることがなく、居心地が悪くなったのか教室に戻っていった。


僕は平木と教室に戻り、他のクラスが今か今かと文化祭の準備を楽しんでいる様子を見て、急に罪悪感を感じ始めた。


しばらくボーっとしていると、十時になっていた。


教室には僕と平木しか存在せず、廊下からはたくさんの陽気な声が響いてきた。


「それじゃあ行こうか」


そう言って、僕は読んでいた本を閉じた平木と一緒に教室に出た。


「まずはどこに回る?まずはパンフレット貰おうか」


廊下には他校生もいて、改めて高校の文化祭の規模の大きさに驚いた。


喧騒も僕の気分を上げるBGMのように感じる。


平木は後ろでバツの悪そうな顔をして言った。


「ごめんなさい。実は一緒に回れなくなったの」


驚いた、いや驚いたことに気づいたのは少し遅かった。


「えっ」


何かがひどく裏切られたような僕が持っていた何かがボトっと落ちたようなでもそれを見せる格好悪さは嫌でも味わいたくなかったのだ。


「ああ、わかった」


重い口を震わせて僕は何となしに言ってみた。


気にしていることを悟られないがために。


「ごめんなさい」


また平木は僕の目を見ず謝って廊下を歩いていった。


今になって訳を聞かなかったことに後ずさりして悔んだ。


いや、それどころじゃなかった。


予定が崩れ落ちたのだ、これで今日の五時まで弁当を食べることしかやることが無くなった。


食事だって生存欲求をただ満たすものだし、予定の内には入らない。


歩いていく平木を止めたかった。


でもその直後に思い出した、あの言葉を。


「世界の秘密を知るために私と一緒に死んでくれる?」


僕はどこまで関われるのだろう?


僕はどこまで触れられるのだろう?


嫌になりそうだ。


期待と予定が大きく外れ、面食らった僕には人混みの中に埋もれていくその背中を眺めることさえ出来なかった。




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