第14章「予定外の予定」その9



プリントが回っていてもしばらく気づかず、前の女の子に睨まれた。


慌ててプリントを取って、机に置いた。


周りを見ても定期テストよりかは緊張度が無い。


ペンを回している奴やすでに寝ている奴、机の下で携帯を触っている奴。


以前の僕もそっち側にいた、でも今日は教室の緊張度と僕のそれは大人と小学生の綱引きのように釣り合わない。


「では始めてください」


裏返されたテスト用紙を勢いよくひっくり返した。


思わず床に落としそうになったが、上から押さえて何とか防いだ。


シャーペンと紙の摩擦音やグランドからの掛け声、集中のおかげでテストの静寂が心地よく感じた。



「それじゃあペンを置いて回収して~」


とりあえず昨日の猛勉強のおかげですべて確信を持って回答出来た。


後はこれが合っているかどうかだ。


張りつめていた緊張が解けたせいで筋肉が痛い。


テスト用紙を裏返すことも忘れて、前の席の女の子に渡してしまった。


怪訝そうな顔をして僕のテスト用紙を裏返して、自分のそれを重ねて前に渡してくれた。


おそらくこの女の子には嫌われたな。


横山先生は回収されたテストを採点し始めた。


普通なら回収だけですぐに授業を開始するのがセオリーだが、仕事を残しておくのが嫌いらしく絶対にその場で採点する。


そのせいか採点も早く、十分ほどで三十人の回答をチェックできる。


いつもならこの時間を外の景色を見て過ごすのだが、さすがに今日はそうしても落ち着かなかった。


「はい、採点が終わりました。さっそく返したいのですが、今日は私の大好きな中国史なので授業が終わった後に返却します」


なんて自分勝手な先生だ、教室はブーイングが飛んだがこの人は全く気にせず、

中国最初の伝説の王朝、夏について話し始めた。

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