第14章「予定外の予定」その10
平木と同じ、唯我独尊という言葉がぴったりな女性だと思った。
でも自然と憎めない人でもある。
横山先生の話はとても面白いからだ。
教科書にはまった形でもなければ、意味不明で難解な言葉を使っているわけでもない。
殷の紂王の暴政、周の文王と太公望のエピソード、人がなぜこうしたのか感情を交えて話すそのやり方はうざくも心躍る時がある。
でもそれは学校の点数には関係なくて、ただの雑学博士になってしまうんじゃないかと怖くなる。
どれだけたくさんの知識とか学識があっても、それらが他人の測れる尺度上に存在しないと、その人がいかに凄いかなんて測れない。
縄文時代以前の歴史をどれだけ知っていても、高校の日本史では扱われることなんてほとんどないし、史学者にでもならない限り役に立たないだろう。
横山先生はこういう教養だけじゃなくて学校で学ぶ知識もちゃんと持っているから教師になれたんだろう。
教養は面白いけど役に立たない、学校で学ぶ知識は面白くないけど今後の人生のキャリアアップには欠かせない。
僕はどっちを取る?いや、両方学ぶ事が一番無難なのかしれない。
横山先生が黒板に何か書き始めようとした時、チャイムが教室に鳴り響いた。
「それじゃあテスト返却するから」
ようやくテストが帰ってくる。
廊下側の席の列の人から返されていった、つまり僕が最後ということか。
西山と平木だけが満点だったが、いつものことなので誰も驚かない。
前席の女の子が立ち上がったため、僕も立ち上がり教卓に向かった。
「羽塚くん、今回の小テスト満点だったわよ」
渡される前に結果を告げられ、嬉しいと同時に少しショックだった。
出来ることなら自分で知りたかったなぁ。
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