第7章「移りゆく時期」その1


六月も中旬に入った。


雨続きだった日が終わり、最近は快晴が続いている。


それでも心はすっきりしないままだ。


心残りがあると言った方がいいのかもしれない。



体育祭まで残り二週間足らずだ。


これはどの種目にも出場しない僕にとってはどうでもいいニュースなのだが、



明日は西山と体育祭の打ち上げの買い出しに行くことになっている。


これが現在の僕の悩みの種となり根を生やし花を咲かしている。


西山は僕と買い出しに行くことをクラスの連中に言ったのではないか?


そして僕をクラスのはみ出し者にしたいのではないか?


あるいは本当はすべて嘘で、僕の反応を見て楽しみたいのではないか?



心配事が数えきれないほど湧き出て頭の中をかけめぐっている。


悲観的すぎると思われるかもしれないが、そう思うのも無理はないんだ。


なぜなら僕は西山とはまだ知り合い程度しかなく、


五月までは一言二言しか話さなかった仲だったのにもかかわらず


六月に入ってからはLINEで会話するまでの関係になった。


十五年間の人生の中で一軍の女の子に連絡先を聞かれたこともなければ、


母親と妹と祖母を除いたすべての女子にさえ聞かれたこともない。


それほど僕の連絡先には需要がない。


これにはきっと何か裏がある。


見えない何かが僕をおとしめようとしている。

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