第4章「異常の中の普通」その2


「…」


ペンを走らせる音。


「…」


グランドから聞こえてくる、そろわない掛け声。


「…」


誰かの鼻をすする音。



今、この状況をみなさんはお分かりだろうか?


もしいたとしたら、あなたは推理小説の探偵になれるだろう。


今は授業中だ。


えっ、期待はずれって?


仕方がないだろう。僕だって驚いている。


こうして文字に起こして書き示すまではあまり知らなかった。


自分の人生がこれほどつまらないとは。


しかし、これが普通なんだ。



悩み部屋の存在を知ってより一週間、僕の日常で変わったことと言えば、


平木が毎日出席していることと家の鍵を無くしたことくらいだ。


まぁこんなものなんだ、僕の人生なんて。


あんなことがあったというのに、僕はまた授業を受けている。



しかし今日の授業はいつものものとは程遠い。


なぜって?肝心の人物がいないからだ。


授業を進めていくうえで無くてはならない存在。


そう、教師がいないのだ。



金曜日の二限は現代社会の山寺先生が担当なのだが、


どうやら電車の影響で遅刻しているらしく、自習になったのだ。


それを聞いた瞬間、教室に歓声が響いた。


初めはクラスメイト同様、僕も心の中でコサックダンスを踊るほど歓喜していた。


しかし問題はその自習の課題だった。

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