サイコパス

サイコパスは夫の葬儀に訪れた人に一目ぼれをして、その夜に息子を殺した。

なぜって息子の葬儀で再びその人に会えるかもしれないから。


サイコパスはカレーを食べた後でんぐり返しをした。

みんなは「カレーを食べて元気になったんだね」と言ったが、違うんだ。運動をしてお腹がすいたらまたカレーが食べれると思ったんだ。


サイコパスはいつも夜更かししてしまう。明日が来るのが怖いから。


サイコパスはツヨシを産んだ。未婚の母だけど幸せだった。

「一人で子育てって大変だよね」

「私は一人じゃないよ、ツヨシがいるから」

サイコパスがそういうとみんなはサイコパスがまた強がりを言ってると思った。でもサイコパスは強がりなんて言ってない。ツヨシが大きくなったら、ツヨシと結婚するつもりだった。


サイコパスは映画を撮った。それは文句だけ言って家事をしない男を風刺した作品で、画面いっぱいに巨大な粘土の男が出てくる。巨大な男は神棚に向かって祈りを捧げている。神様は下半身が男で上半身が女。カメラはサイコパスの口の奥に入ってスカートの下から出てくる。


サイコパスは新聞紙を折っていろんなものを発明した。帽子、人力車、マイクロフォン、鏡。一番実用的なのはあぶらとり紙だった。


サイコパスは死にたい死にたいと泣きながら繰り返すツヨシの背中を優しくなでてやっている。大丈夫、大丈夫。


サイコパスの枕はいつもよだれでガビガビだ、涙で濡れたところを舐めてきれいにしているから。


サイコパスが一目ぼれをした人は、ツヨシにそっくりだった。

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