先輩と金髪少女
「こんにちは。貴方が雅也君が言っていた子ね」
「わ、わわわ……」
僕が星野さんの友人として選らんだ人物……それは咲夜ではなく、先輩であり先程まで裏でずっとスタンバイして貰っていた。
先輩はこう見えて面倒見はいい。変態的な発言やセクハラの被害にあうのは僕だけで、それ以外の人物に先輩はとても常識人で、優しい。この点は咲夜にも共通しているが今回の件で咲夜ではダメな理由があるのだ。
それは彼女の嫉妬深さだ。咲夜は基本誰にでも優しいがその例外が先輩であり、先輩を目の敵にしているのはきっと彼女にとって恋敵であるからだろう。そして彼女の中で星野さんもその括りに入っているわけで、彼女が星野さんに対して冷たい対応をする可能性は非常に高い。仮に僕がお願いしたところで、その確率は代えられないだろう。
対して先輩は今回の件に関して自分から申し出ている分けで、僕の意見をおろそかにする可能性は限りなく低い。そうなると咲夜よりも先輩を紹介したほうが今回の場合は優れていると言える。
「私の名前は霧羽零よ。気軽に零と呼んでくれると嬉しいわ」
先輩の自己紹介は完璧だ。こんな人を誰だって変態とは思うまい。
「え、えと……私は星野紗矢といいます。せ、聖カタリーナ女学園の二年生です……」
星野さんには若干怯えの色は見えるがおおむね問題はなさそうだ。これならばうまく友人関係を気づいてくれるだろう。
「そんなに硬くならないで大丈夫よ。大事なのはリラックスすることよ。リラックス」
「は、はい……」
こういった姿の先輩を見ると僕と先輩が知り合った頃の事を思い出す。
先輩は入学当初僕が知り合った
学校の施設の場所や行事の内容、どの部活がおすすめで、勉強もよく見てもらっていた。そんな彼女だからこそ僕は惹かれ、それと同時に恐れ多くもあった。
そう言えば最近は先輩に勉強を見てもらっていない。近いうちにまた頼んでみようかな。先輩に教えて貰うのと貰わないのとでは成績が全く違うし。
「こ、ここ金剛さん‼ た、助けて‼」
星野さんはそう言うと僕の後ろに隠れてしまった。
「霧羽さん。貴方何かしたんですか?」
「い、いいえ。何も……ってそんなことより今私の苗字を……」
「ん? 嫌でしたか?」
「い、いえ‼ むしろ嬉しいわ‼ 何なら下の名前で……」
「あ、それは嫌です」
「シュン……」
僕が先輩をいつもと違って苗字で呼んだのは、星野さんに先輩は同級生と思わせるためだ。
今回先輩を紹介する上で一番のハードルは彼女の変態性ではなく、年上だという事。人間誰しも相手が年上だと警戒するものだし、ましてそれが初対面の相手なら猶更だ。それならばと僕は先輩の名前を苗字呼びにし、その事によって星野さんに先輩が同い年というイメージを刷り込ませることにしたのだ。
もしばれたとしても僕は唯の一言も先輩が
「それで霧羽さんは何をして星野さんに嫌われたんですか?」
「何もしてないわ。ただ何処に住んでいるのかとか何が好きなのかとかそんなありふれた質問しかしてないわ」
「この人の言ってること本当?」
「は、はい……で、でもひ、人との会話は怖くて……」
「ええと……それって僕は人じゃないと言いたいのかな?」
「い、いえ‼ そんなことはありません‼ 金剛さんは……その……
「特別……ね」
星野さんの様な美少女に特別と言われて悪い気はしない。でも嬉しくはなかった。だってそれは彼女が僕以外の人間には心を開く気はないと言っているも同然なわけで、それを堂々と宣言されても嬉しくはない。
「星野さん」
「な、なんですか……?」
「星野さんが霧羽さんの事を怖がっているのはわかる。でも霧羽さんは星野さんが思っているより断然いい人だよ。だから今日一日霧羽さんと遊んで、触れ合ってみて、今後付き合っていくかどうか決めて欲しいかな」
「こ、金剛さんがそこまで言うのなら……」
「うん。偉い。偉い」
「わわわ‼ こ、金剛さん……‼」
「ん? もしかして頭撫でられるの嫌だった?」
「い、いえ……」
星野さんの髪は咲夜とはまた違う感じで、不思議な気持ちだ。
「雅也君……あなたもしかして無意識でやっているの……?」
「いえ、意識的ですけど?」
人間誰しも親しい人間から頭を撫でられるのは嬉しいし、褒められると猶更だ。だからこそ僕はこうして星野さんの頭を撫でているわけで、それ以外の意味は特にない。
「雅也君……貴方も悪いわ……はぁ……木葉さんも可愛そうね……」
「んんん? それはどういう意味かな?」
「いわない。でも後で木葉さんのご機嫌はきちんととるのよ。じゃないと今度こそ刺されるわよ?」
「はぁ……」
先輩のいうことはいまいちピンとこないが頭のいい先輩のいう事だ。忠告はしっかりと聞いておこう。
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