呼び出しと金髪少女
「こんにちは。星野さん」
「こ、こんにちは」
あれから一日たった授業後。僕は星野さんと前回会話をした公園で待ち合わせをしていた。
「あの、あの、今日はお誘いありがとうございます。あ、それとこれなんですけど……」
星野さんは僕の上着を恐る恐るカバンから取り出す。その時彼女の肩は震えていた。
「あ、上着ね。ありがとう」
「い、いえ……むしろ前回はすみませんでした。勝手に帰ってしまって……」
「ううん。気にしないで。誰だって失敗はあるからさ」
「うう……すみません……」
「まあいいや。今日星野さんを呼び出したのは星野さんに
「紹介したい人……ですか?」
「うん。そう。紹介したい人。僕は星野さんにはその人と友達になって欲しいと思っているんだ」
「ダ、ダメです‼ 私と関わると……」
「不幸になるって?」
「……はい」
「星野さん。それなら僕はどう?」
「え、えと……どういう事でしょうか?」
「僕は不幸そうに見えるってこと」
「いえ、それはまだ知り合ってから少ししかたっていませんし……」
思ったより星野さんの中でこのことは強く根付いているらしく、どうやら知り合って二日程度では照明できないらしい。
「……そっか」
「はい。だから……」
「止めないよ」
「え、でもでも……」
「星野さんの事情なんか知ったことじゃなし、その人だって星野さんと仲良くしたいと思ってる。例え星野さんと関わって自身が不幸になったとしてもその人は絶対に君のせいにはしないよ。あの人はそう言う人だ」
「金剛さんは……その人の事を信用なさっているのですか?」
「ん? まあね。他の人よりは圧倒的に信用できるし、きっと星野さんの事も受け入れてくれるよ」
「……そうでしょうか?」
「そうだよ。大丈夫だって。星野さんは性格もいいし、何より可愛いんだから」
「か、かわ……」
「うん。可愛いよ。僕の見てきた女性の中では2、3番目には」
「1番ではないんですね……」
「ああ、まあ、1番は別枠だから……」
僕の中で1番の美人など咲夜の事以外ありえない。それは偏に愛情補正という物があるからであって、補正抜きで見れば星野さんも咲夜にも負けてはいないだろう。まあそれでも僕は咲夜を躊躇いなく選ぶのだが。
「もしかして星野さんって僕から1番可愛いとか言われてみたかった?」
「いえ、そんなことは……」
「そう。ならよかった」
嘘だ。星野さんは本当は僕からの評価にかなりこだわっている。それは何故なのか具体的な理由まではわからない。でも僕が考えるに彼女は僕から捨てられることを極度に恐れている。僕という理解者がいなくなれば彼女はまた一人ボッチだ。それは彼女にとって耐え難い苦痛であり、二度と味わいたくない物なのだろう。だからこその僕への電話の数だ。
あれは自己の存在を電話によって執拗にアピールすることによって、僕の事をなんとしてでもつなぎとめようとしているのに他ならない。そこまで彼女は孤独という物を恐れ、僕に依存している。
それに根気よく付き合っていける人間ならばいいが、生憎僕にそれはできそうにない。僕にだって生活はあるし、何より彼女をいつまでも面倒見続けると今度は咲夜が爆発する可能性がある。
咲夜と星野さんとではその優先順位が違う。仮にどちらかしか助けることができないと言われれば僕は躊躇いなく、咲夜を選ぶ。それは咲夜が僕にとってとても大切な存在だからで、愛するべき人だからで、
それにこの件に関する対応策は至ってシンプルで、星野さんの依存する対象を増やしてしまえばいいだけなのだ。
星野さんが僕に依存しているのは結局の所、孤独が怖いからであって、それを埋めてくれる人ならば誰でもいいのだ。それならば解決策は至ってシンプルで、彼女の友達を増やしてあげればいいだけ。
「さてそろそろご紹介といこうか」
「え、あ、ちょ、ま、まだ心の準備が……」
「そんなこと知りませ~ん」
彼女の気持ちが決まるまで待っていてはそれこそ日が暮れてしまう。だからここは強引にいく必要がある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます