昼食と幼馴染

「雅也君。一緒にご飯食べよう?」

「いいぞ。というかいちいちそんな事聞かなくてもいいのに」


 僕と咲夜は僕が先輩と別れてからは、いつも一緒に取っている。その前は咲夜は自身の友達を一緒に食べていて、僕も敦とその他の友人たちと一緒に食事をとっていた。


「えへへ。それもそうだね。それじゃあ失礼して……」


 咲夜は可愛らしくはにかみながら僕と自身の机をくっつける。


「まさやく~ん。俺もまぜ~て~」

「別にいいけど、お前はどうしてそうムカつく言い方しかできないんだ……」

「ウザいと定評のある俺っちだからな。そこは、諦めろ」


 ウザいと定評って……はぁ……こいつに彼女ができる日が来るのか……友人として本当に心配だ……


「僕はお前の将来のことが心配だよ……」

「うるせぇ‼ お前にだけは言われたくない‼」

「雅也君の眼なんだかお母さんみたいだよ?」

「俺が母親なら父親は誰だ?」

「そ、それは、わた……」

「父親は私といったところかしらね」

「げっ……朱音……」

「ちょっと‼ その反応は流石に酷いんじゃない敦‼︎」


 赤坂朱音あかさかあかね。燃えるような赤色の髪と瞳の持ち主で、その性格は見た目通りとても気が強く、力もまた強い。


彼女は僕たちのクラスメイトであり、咲夜の親友でもあり、中学頃から付き合いのある友人の一人だ。敦とは従姉同士の様で、敦は昔からよくそんな彼女にいじめられたらしく、彼女の事をとびきり嫌っている。まあそれにしては仲よさそうにみえるけどな。


「別にひどかねぇよ。お前が小学生時代の俺にした所業を考えればな‼」

「何を‼」

「まあまあ二人とも落ち着けって……」

は黙ってなさい‼」

「そうだ‼ そうだ‼ 屑は黙っていろ‼」

「誰が屑だ‼ ぶっ飛ばすぞこの野郎‼」

「雅也君」


 咲夜が厳しい目でこちらを見る。どうやら僕のぶっ飛ばすという発言が、お気に召さなかったらしい。というか僕が屑というのは、否定してくれないのか……そっか……あれ? 頬に何か何か垂れているや……あはは……


「ごめん……」

「相変わらず咲夜は雅也の扱い上手いわね」

「ああ。本当これでいてなんで付き合っていないんだから本当に世の中わからないよな」

「そ、そう……かな?」

「そうだよ。全く雅也も雅也よね。こんなかわいい子に好意を向けられていて付き合わないんだから。もしかしてあんたってホモなの?」

「ホモじゃねぇよ‼ ホモだったら先輩と付き合っていないだろう‼」

「あ、それもそうか……」

「そうよ。雅也君はホモなんかじゃないわ。ただ私にゾッコンなだけよ」


 僕は咄嗟に後ろを振り返るとそこには、手にお弁当を持った先輩がニコニコ笑顔で立っていた。


「いつの間にきたんですか? それと先輩にゾッコンとか嘘つくの止めてください」

「ついさっきよ。それよりも雅也君。今朝は、ゴメンね? 隣にいるのせいで、いちゃつけなくて」


 おい。華麗スルーしてんじゃない。


「もしかしなくてもそのメス豚って私の事ですよね?」

「あら? 私は一言もあなたの事をメス豚だなんて言ってないのだけれど……もしかして木葉さんって自意識過剰?」

「貴方って私の事挑発せずにはいられないんですか?」

「ええ。私、あなたの事死ぬほど嫌だもの」

「奇遇ですね。私もあなたの事嫌いですよ。それこそと思うほどには」


 美人同士の喧嘩は、やっぱり迫力あるな~これが自分の関係することじゃなければ面白いのになぁ~あはは〜はぁ……


「ちょっと雅也‼ あんたあの二人何とかしなさいよ‼」

「そう言われても……ねぇ?」


 僕の非力な力じゃあの二人の喧嘩を止められるわけがない。男して女子に力負けするのはどうかと思うが、あの二人はあんななりして力はめちゃくちゃ強い。特に先輩なんでゴリラ並みの力はありそうだ。


「二人ともあんたの女でしょう‼ 男なら何とかしなさいよ‼」

「ちょっと待て‼ いつ二人が僕の女になった‼」

「ああ、もう‼ 今はそんな事どうでもいいでしょう‼ ともかくさっさと二人の喧嘩の仲裁してきなさいよ‼」


 朱音は僕の足を思い切りふんずける。


「ぎゃぁぁぁ‼ あ、足が……‼」

「「雅也君!?」」


 うう、痛い……でも二人の注意は引けた。言うなら今しかない……


「ふ、ふたりともけ、喧嘩はや、止めようね?」

「うん。分かった」

「雅也君がそういうのなら……」


 よ、よかった言うこと聞いてくれたぁ……うう……まだジンジンするよぉ……おのれ朱音……‼ この恨みいつかはらしてやるからなぁ……それから敦。お前さっきから何知らんぷりして、飯食っているんだ……‼


「あ~つ~し~……‼」

「ん? 終わったか?」

「お前少しは、僕の事助けろよ‼ 薄情者‼」

「ええ~だって俺が入ったところで、どうにもならないのわかるし~それに何より男って生き物はな。女には、勝てないんだよ……」


 敦のその言い方は、どこか哀愁が漂っていて、彼の経験を物語っていた。


「その……ゴメン……」

「分かってくれたならいいさ……」

「とりあえず飯食うか……」

「うん……」


 何だろう。この出来事で敦との仲が深まった気がする……悲しい意味で……

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