Rev.2.5(x=1.2)
係員が槍を持って出て行った後、俺達はしばし呆然とした後、どちらが言い出すでも無く、休憩室に向かい椅子に腰かけた。思えばこの一時間半、ほぼほぼ走りっぱなしだった。疲れがどっと出たような気がした。
「これで良かったのかしら。」
「…良かったんじゃないか。大体、俺達が頑張る理由もなかったしな。」
口にして改めて思う。そう、俺達は普通の人間、しかも学生だ。俺達のようなただの人間が、大人を差し置いて頑張る必要なんて無いのだ。
「私は…見たかったけどね。伝承が本当なところ。それに隕石の正体も知りたかった。」
「正体ねぇ。知っても仕方ないだろ。隕石は隕石、それでいいじゃないか。」
「オカルト好きとしてはやっぱりね、不思議なものには惹かれるのよ。」
「そういうもんかねぇ。」
適当に相槌を打って、俺は立ち上がって窓の外を見た。窓の外には零天丘が見える。ただ距離のせいか、先程の係員の姿は見えない。
「しかしまぁ、疲れた、わね。」
声子は欠伸をしながら言った。溜まっていた疲れを休めろと体が言っているようだ。俺も眠くなってきた。
「そうだ、なぁ。」
見渡すと近くにソファがあったので、それぞれ別のそれで仮眠を取る事にした。起きていたら全部解決していれば万事安泰なんだが、そんな事を考えているうちに、眠気の方が優って、俺の意識は微睡みへと落ちていった。
グギャァァァァァァァァァァ!!という何かの叫びが耳に轟き、その眠りは途切れた。
「な、何だ!?」
俺が飛び起きると同時に声子も飛び起きた。
「外からよ!?」
二人で急いで窓の外を眺めた。
外は真っ赤に染まっていた。血だ。血が街に撒き散らされていた。無残な姿の人々が道路に散乱している。そこから吹き出したものだろう。そして火が、至る所で燃え盛っていた。何が起きたのかは全くわからない。だが一つだけ分かる事があった。
名も知らぬ係員は失敗したのだ。
「で、でも、な…なんだってこんな事に…?」
本来であれば隕石が降ってくるだけのはずだ。直撃すれば地球が砕けて視界が真っ白になってはい終わり、みたいな感じではないのか。なんだってこんな惨状が広がっているんだ。俺には全く理解が出来なかった。
「み、見て!!外!!奥!!」
声子が指差す先を見た。それはこの資料館から約百メートル先。そこで何かが蠢いていた。巨大な何かであった。それにはヒレがあった。背中のようだ。どこかで見た気がした。
そしてそれが振り返った。瞬間、それが何か理解出来た。だがそれを口にする前に、その何かがこちらに飛びかかってきた。文字通りに。地を蹴り、建物をなぎ倒しながら、こちらに飛んできたのだ。巨大な牙と、そこから滴る、人血を撒き散らしながら。
俺はそれが自分達を飲み込まんとした瞬間、咄嗟に一言、それの名前を読んだ。
「…鮫…?」
そこで俺の意識は途切れた。
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