創作

 近頃、創作意欲が一時期に比べて、めっきり減ったような気がする。何故かは分からない。世間もピリピリしているからかもしれない。私も、自分のことで忙しいのでノートに向き合うことも減った。エッセイを書きたいと思っていても、「まあ、後でいいか」と思ってしまうのだ。創作をする前に立ち止まってしまう。詩を書いている時、酸素を求める魚のように、焦りながらも浮かんだ言葉をノートに書いていた。ノートに走らせるペンと頭の中の言葉がかみ合わなくて、興奮しつつも、急いで書かなくては、早くこの言葉を形にしなくては、という気持ちも喪失している気がする。時たま詩を書いても、何故かこの興奮と気持ちは蘇らない。至って冷静に詩を書いてしまっている。SNSの見過ぎで疲れているのかもしれない。カクヨムにログインする回数も減った。

 何だろう、この熱が醒めたような空虚さは。自分は生き辛さをすべて、創作にぶつけていたのではないのか?それなのに、どうして書く気力までも失ってしまったのか。悲しかった、空しかった。別に才能があるなんて思ってもいない。才能があったら、あったらでまた苦労するだろう。才能が枯渇するかもしれないという気持ちに、ずっと支配されながら生きていくのだから。私に才能はなくても、それでも情熱と、気持ちだけは欲しかった。それが無くなりつつあるのだから、もしかしたら才能には気持ちの面も含まれるのかもしれない。もしくは、この世界に自分が適応してしまったのかもしれない。働いて、家庭をもって、それが幸せ。そういう話が私にとって、幼い頃、穴だらけに思えたのだ。だけど、皆はその穴だらけの幸せが穴だらけに見えていなくて、私だけが穴だらけの幸せを認知していた気がする。ずっと、世界に対して生き辛さを感じていた。だから、詩を書いた。それなのに、今はとても虚しい。その気持ちが何故なのかは、分からないまま。書かなければいけないのかもしれない。こんな時は、そんな風にも思う。

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ビスケット・エッセイ 翠幽月 @long-sleep

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