【第12話】ただいまと質問
クランハウスに帰った智也。食堂に向かうとおなじみのエレナたち4人とニコスが揃っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました」
「ねー、ヒュー君」
「はい、なんでしょうか?」
「私たちにも、砕けた話し方でいいのよ?」
「それは……」
「ダメなの?」
上目遣いで聞いてくるエレナそれは反則だ、上目遣いだけでもやばいのに胸がもうヤバい。
「分かったよ、これでいいか?」
「うん、冒険者はそこまで口調を気にする人がいないから、敬語だとムズムズするのよ、なんか貴族様みたいでしょ?」
「なるほど」
「それで、今日の試合の話なんだけど」
「ああ、約束したからな、ニコスも興味あるのか?」
「まあな、お前が実験をしてたのは知ってるから、それの成果が出たのかと思ってな」
「分かった、じゃあまずは」
智也は特訓の話を大雑把に行った。
「なるほどね、気を包み込むか、考えたことなかったわ」
「そもそも、俺たちの中に気を使える奴いるか?」
「いないな」
エレナ、ゼルバ、ボッカスが順に感想を述べる。
「ヒューすごい、尊敬する」
魔法使いであるセイレンは特に目を輝かせて話を聞いていた
「いや、俺には生活魔法しか無かったからな。みんなと同じように属性魔法を持ってたら、この考えも出なかったと思う」
「いや、自分が持つモノの組み合わせから、新たな考えを生み出せるのは素晴らしいことだ」
ニコスが頷きながら立ち上がる。
「悪い、これから用事がある。ここで失礼させてもらうよ、じゃあなヒュー。これからも面白い話、期待してるぞ」
「またな、ニコス」
ニコスが去り話の続きに戻る。
「それで具体的に、あの顔面殴られて吹き飛ばされた時は何をしたの?」
「ああ、あれか。顔を気で覆うと同時に、その周りを魔素抜きの空気で包んで、さらに魔法でコーティングした」
「攻撃と同じ原理なのね」
「そうだ」
「最後の、指先を相手に向けたら倒れたのは?」
「あれは、気の玉を極限まで小さくして指先から打っただけだ」
「なるほど」
智也の話に頷く4人。
「何で音の魔法に、気を乗せたの?」
セイレンが真剣な面持ちで聞く。
「音は1秒で340m進むからな、その速さなら避けるの無理かなって」
「なるほど」
その後も細かい質問は続いたが、試合の話が一通り終わると、解散になった。部屋に戻った智也だが、さっきの話を踏まえて今日の事を振り返る。
実際、強い奴と対戦してみて分かったが、改善点は沢山あるな。これからもっと精進しないと。
今回は勝ったが【分からん殺し】という面が大きかったので、より一層の精進を心に決めた智也。
それと、バルスのやつ、どう考えても手を抜いてやがったな。少しだけ悔しいが、いつか必ず本気のバルスを抜かしてやると、心に誓った。
街中のとある路地裏。
「こちらコードE、応答せよ」
「こちら本部、状況はどうだ?」
「今のところ、目立った動きはなし、ただ」
「ただ、なんだ?」
「一人、変わった奴がいる」
「ほう、どんな奴だ?」
「独自の魔法を生み出し、使っている」
「なに? それは珍しいな、だが珍しいわけで、全く居ないわけじゃない」
「いや、その魔法が生活魔法なんだ」
「ほう、それは変わっているが、特に気にしなくて良い。それよりも任務の遂行をしろ」
「了解した」
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