フレンズ


 ラダはこの旅行に従ったときから、心底ルシファー命になりました。

 ルシファーの厳しさなどを、目のあたりにして、その中に示されるさり気ない優しさ、思いやり……

 おかげで鈴姫と親友になれたし、ルシファーから、ある料理も教えてもらったし……


 惑星アールヴヘイムンで、ルシファーがラダや鈴姫などに食事を作って、ふるまったことがあります。


 ヴァンパイアの主食は血、料理などとはあまり縁がない……

 しかしラダの為に、ルシファーが考えてくれた料理が、ラダにとっては大変おいしかったのです。


 料理の名はブラッド・カレー……


 そのレシピとは、辛口に出来上がったカレーに、新鮮血液を入れて、生肉の上にかけただけな物。

 これがヴァンパイアのラダには、感激するほど美味しかったのです。


 このレシピで、ラダは旅行から帰った後、寄宿舎で作ってみました、やはり美味しい……

 皆が匂いにつられやって来て、ラダはふるまったのです。


 これが評判を呼び、ダチア高等女学院の金曜日のお昼には、生徒たちがこのブラッド・カレーを食べることになったのです。


 十月初旬のある日曜日……

 珍しく鈴姫が、ダチアの寄宿舎にラダを訪ねて来ました。

「ラダ、相談があるのだけれど……」

「私に?そりゃあいいけど……何なの?」


「琴音さんって覚えている?」

「貴女のお友達でしょう、一度紹介してもらったけど……たしかメイド任官課程の方だったわね……」


「その琴音さんが、卒業したら結婚される予定……」

「えっ!任官拒否するの?たしか綺麗な方と覚えているけど……私には信じられない……でも……おめでたい事なのよね……」


「確かにおめでたい事なのだけど……こんなこと、貴女にお願いするのは、どうかと思うのだけど……」

 鈴姫は珍しく言葉を濁します。


「いいなさいよ、秘密なら私は守れるわよ」

「琴音の相手のご家族の事を、知っていれば教えてほしいの……」

「相手はヴァンパイア族……総族長の息子……」

「えっ、ゲオルグさん!」


 ゲオルグ・ドン……

 ラダより二つほど年上の男、妹はカミーラ・ドン……


「まずいわよ……お母様のベルタ・ドン様は話の分かる方だけど……お父さまのヴラド・ドン様は……ごめんなさいね……モンスター族を嫌ってられて……」


「やはり……この間、琴音さんが泣いていて……ゲオルグさんから、やはり結婚できないと、いわれたらしいの……」

「……多分、ゲオルグさんの本音ではないと思うわ……ゲオルグさんは誠実な方なのだけど……お父さまに頭が上がらなくて……」


「ねぇ、いまから総族長のお屋敷に行かない、貴女は籠目(かごめ)高女の一号生徒、私のところへ遊びに来たついでに、総族長のご機嫌伺いにやって来た」

「私が貴女の案内役、うまくすればベルタ・ドン様に会えるかも……あとは出たとこ勝負……」


「ラダ……立場が悪くならない……」

「多少はね……でも私はもうすぐ卒業だし……なんとかなると思うの……それに立場なら、貴女も相当悪くなるわよ」

「ヴァラヴォルフ族の二人の執政も、あまりヴァンパイアは好きではないのでしょう?」

 鈴姫は頷くばかりでした……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る