COTTON


 高女乙女寮前バス停に、電気バスがやって来ました。

 概ねヴィーンゴールヴでは、公共交通機関はバスとなっています。


 地下鉄や都市近郊の電車の代わりに、バス・ラピッド・トランジット、BRTと呼ばれる、電気式のバス高速輸送システムが完備しています。

 三連結バスですね、各地の町や村をつなぐ幹線路線は、ガイドウェイバスになっています。

 街中は二連結バスですね。


 三人はこの電気バスに乗って、セントラル・バス・ターミナルで乗り換えて、逢魔街バス停へ。


 タナトス・シティ逢魔街にやって来た三人、やはりそこは女の子、はしゃいで……

 でもお小遣いがね……


「うーん、高いわね……仕方ない……こちらはあきらめましょう……店員さん!これを何とか負けて!少し予算が足りないの!負けてくれない!」

「いえ、それは……」


「そこを何とか……いま出せるのはこれだけ!この金額なら、赤にはならないでしょう!」

「そうはいっても、お客様の御呈示の金額は二割引きでしょう、バーゲンではないのですよ」

「……」


「では、こういたしませんか、もう一着お買いいただければ、二割引きにいたしますが、いかがでしょう」

 店員さんの提示に、琴音さんは鈴姫へお願い目線を……


「鈴ちゃん……」

「分かりました、私も同じものをくださいな、でもサイズは違ってもいいですよね?」

「それはもう、構いません」


「それからなにか、サービスしてくれない?販促品でいいのだけど」

「そうですね……こちらをお一つなら……」

 と店員さんが、クリームの地色に、かなりカラフルな英文字が画かれている、ジャンボ・トートバックを差し出しました。

 マチが広げられる優れものです。

 英文字はCOTTON、コットンという店名のようです。


 琴音さんがすかさず、「もう一つ!」といいますが、やんわりと断られました。

「琴ちゃん、このバッグ、貰っていい?」

 と、鈴姫が云いますと、肩をすくめた琴音さんでした。


 二人はお買い物に満足しました。

「この服、欲しかったの!鈴ちゃんとお揃いね、なんかいけない関係に間違えられそうね、私は構わないけどね」

 琴音さん、すこし危ない雰囲気が漂いますね。


「私たち、メイド任官課程なのよ……恋愛はいけないわ……」

「分かっているわよ、もう鈴姫は……冗談を真面目にとるのだから」

 いや、眼は冗談でなかったような……


「ところで篠笛ちゃんは?」

「えっ!さっきまでお店の中をチョロチョロしていたのだけど、どこへ行ったのかしら」


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